15『森~帰り道~』
今日は町に帰る日だ。
と言っても、テントを片付けるしか準備はないが。
なので、まず武器を作ろう。作るのはシロツキの武器だ。
シロツキの大きさから、使うならナイフやダガー系統の短剣。あとは杵。こっちは俺のイメージだ。月の兎と言えば、餅をつく兎の姿だしな。
早速作ろう。少しでもステータスを上げるためにも、MPは多めに300程使う。形は、とりあえずナイフで。
シロツキ用と言うことで、小さく作ったが、これじゃ食器だな。名前も決めて、完成だ。
【Mステーキナイフ】
『魔攻:19 属性:無 耐久値:35/35
短剣補正 器用:7
魔力で作られたナイフ、無属性により色は透明』
名前は見た目から。普通と違うのは透明で目に見えない事。シロツキは最初から魔力が見えるみたいだから関係ないだろう。魔物や魔法を使えるノルンやプレイヤーなら見える奴も居るだろうが、この辺りの獣達には見えない筈、隠し武器としては優秀だろう。
シロツキは、グレイスと一緒にテントの中でくつろぎモードだ。
「シロツキ」
「キュ? 」
シロツキは呼ばれると、トコトコ2本の足で歩いてくる。進化してから歩く時は2本足だ、走る時は普通のラビット同様に走る。武器を使えるようになった影響だろうか?
「シロツキの武器を作ってみたんだ。使ってみてもらえるか? 」
「キュ! 」
シロツキは当たり前の様にナイフを受け取る。やはり、シロツキには魔力が見えているんだな。シロツキはナイフを右前足で器用に持つと、何度か素振りをした後、ナイフを掲げるように持ち、
「キューー! 」
と鳴く。勝利の雄叫びだろうか? シロツキはナイフを背中に装備したいみたいだが、鞘も紐も無いので装備出来ないようだ。
「キュ~」
残念そうに鳴き、ナイフを返してくる。こちらとしても、せっかく作ったんだから、使ってもらいたい。
「MPが回復したら、鞘と紐を作ってみるよ」
「キュー! 」
シロツキは、両前足を上げて喜んだ。相当気に入ったんだな。
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【鞘】
『耐久値28/28
魔力で作られた鞘』
【紐】
『耐久値28/28
魔力で作られた紐』
出来た鞘と紐をシロツキに装備する。紐を右肩からかけ、左脇を通して、鞘と紐を魔力で接着、鞘の場所は左腰だ。シロツキの前足の動作範囲だと、背中は取り出しにくいと考えたからだ。
シロツキは先程から抜いて、振り回して、収納するを繰り返し、使い心地を確かめている。
「どうだ、問題はあるか? 町に戻ったらしっかりしたのを買おうな」
「キュ~♪ 」
さて、シロツキも満足した様だし、そろそろ出発しよう。
ちなみに、グレイスは卵を守るように丸くなっている。母性本能かな? もしかしてメスなのか? 魔物に性別はあるのか? 識別でも♂♀は分からない。まぁ、いまのところ知らなくても問題ないし、大丈夫だろう。
テントを片付けて、装備を変更。マジックソードを装備し、ベルトの装飾のプレートを、胸当ての内側に変更。そして、卵を吊るために作った網をベルトに装備。左腰の後ろに釣り下がった状態だ。
【網】
『耐久値28/28
魔力で作られた網』
さらに、JPを使用し【片手剣】のジョブスキルを取得した。これで補正分もステータスに反映される。地味だが確実に強くなれるからな。
ここまでで1時間程かかった。グレイウルフ達にポーションを使い切ったので、自然回復に頼るしかない。時間がかかるのは仕方ない、帰ったら補充しないと。
「さぁ、町に帰るぞ! 索敵を頼む! 」
「ウォン! 」「キュ! 」
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現在地は森を通り抜ける為の道、馬車が一台通れる位の道幅。その道を北に向かって歩いていた。そして今、俺達は、
「ギャッ! ギャッ!」
「これで5回目だぞ! なんでゴブリンばっかりいるんだ!」
鞭を振るいながら、そんな事を口走る。
森の中だと、5時間探して10体遭遇出来たら多い方だったゴブリン。それが1時間程で20を越えた、今のステータスならrank:E位楽勝だ。だが、数が多い。今回は7体、更にソルジャーも2体混じってる。それでも、
「グレイウルフ達に比べたら、全然ましだ! 」
「グゥオォォォォ! 」
「キュッ! キューー! 」
グレイスは分身を呼び、シロツキは魔装して角を伸ばし、グレイスと共に突撃する。分身達は俺の前で、ダークボールの構えだ。グレイスの分身は、ウルフの時と同じ消費MPで、3体同時に呼び出せるようになった。ステータスの数値は、グレイスの一割程。それでも、牽制とかく乱はお手のものだ。
5分程で戦闘は終わった。
俺が受け持ったのは、ゴブリン2体、ソルジャー1体の計3体。1体は足を狙い転ばせて追い打ち、2体目は頭を横から叩き飛ばし、ソルジャーは鞭を剣に巻き付け引っ張り、魔力操作で飛ばしたマジックソードで首を切った。魔力での遠隔操作は楽でいいな。
グレイスはゴブリン3体、魔装で伸びた爪と牙で体を切り裂き、首を噛みきっていた。
シロツキは、残ったソルジャーと剣と魔装した角で睨みあっていたが、分身のダークボールで体勢が崩れた瞬間に、ソルジャーの足下に走り、そこから上に飛びあがり、顎から脳天を角で貫いた。そこで魔装を解除し、ソルジャーを蹴って、後ろに宙返りをしてから着地。お見事!
そして、倒したソルジャーの胸をナイフで切り裂き、魔石を取り出して帰ってきた。芸がどんどん細かくなるなシロツキは。
シロツキが持ってきた魔石を受け取ろうとしたその時、
「キュ! 」
シロツキが突然、俺の右側に跳び上がり、ナイフを抜き、そのまま何かを斬った。斬られた物が地面に落ちる、それは矢だった。飛んできた右の森を見る。そこに居たのは、
【ゴブリンハンター】対応rank:D
『ゴブリンの強化種、主な装備は弓と革の鎧
普通のゴブリンと基本は変わらないが
多少の知能と力が加わっている
森の中で罠をはり、敵を待ち続ける』
ハンター、狩人か。気配察知に引っ掛からなかった、無効に出来るスキルが存在するのか? とりあえず反撃を。
と、思ったら、ハンターは背中を向けて森の中に走り出した。シロツキが追おうとするが、
「駄目だシロツキ! 罠があるかもしれない! 」
「キュ? 」
シロツキは止まってくれた。罠を張ると書いてある位だ、有ると考えて動いた方が良い。グレイスもこちらにやって来た。
「今はポーションも無い、魔石を回収して、町に向かう。それを最優先にする」
「ワン! 」
「キュ! 」
シロツキは、少し間を置いて返事をした。この子は非常に賢い、優先順位も理解出来てるみたいだ。それに対して、グレイスは突撃する癖があるみたいだ。指示には従うから、あくまで上の命令に忠実と言ったところか。とにかく、急いで魔石を回収しよう。ハンターがどこに隠れてるか分からない以上長居は禁物、迅速に行動しよう。
「よし! 回収完了。急ぐぞ! 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
警戒しながら道を歩いて2時間、ゴブリン達とは遭遇しなかった。どうやら、ゴブリンと最後に戦った場所の周辺が、なわばりの端だったのだろう。
「んっ! 」
気配察知に反応、数は4。方角は北、正面だ。魔力も気力も俺達より大きい。どうする? 森の中でやり過ごすか? 町にも大分近付いた筈、そうか! 同じ冒険者の可能性もあるな。
「姿が確認出来るまで近付く。魔物なら森へ逃げ込む、同じ冒険者なら様子を見よう」
「ワン」「キュ」
グレイス達も納得したさぁ行くぞ!
正面に相手の姿が見えた。冒険者だ、その中に見覚えのある人を見つけた。
「ランディ? 」
警戒体制を止めて、近付く。すると、
「お~、ジンじゃないか。久しぶりだな、今帰りか? 」
「あぁ、昨日まで森の奥で粘っててな。ポーションも無くなったし、限界と思ってな」
「そうか。ポーションが無くなるまで粘るのは危ないからほどほどにしろよ。そうだ! 森の中に居たならその間の話を聞かせて貰えるか? ギルドの依頼でな、ここ数日、森の魔物の様子がおかしい、てことで調査に来たんだ」
「そうなのか? 俺は構わないぞ。隠す様な事も無いしな」
「助かる。早速頼む」
~~~~~~~~~~~~~~~~
俺達は、道の端に寄り、ここ数日の話をした。ランディ達は聞きながらも警戒している。グレイウルフリーダーの話をしたら、偉く呆れられた。ゴブリンの話は難しそうな顔をしている。こっちの話が当たりだったのかな? そして、
「俺の話はこれくらいだ」
「いろいろ言いたいことはあるが、とりあえず、格上の相手に挑むのは極力やめとけ。今回は運が良かったんだ、次も上手く行くとは限らねぇ、次からはギルドに報告に戻れ。依頼内容から考えても、情報提供って事で報酬は出るし、失敗扱いにはならねぇ筈だ」
「分かった」
「それとゴブリンの話だが、ソルジャーとハンターが出たんだな? 」
「あぁ」
俺が頷きながら返事をすると、ランディは
「よし! 町に戻ろう。俺達が欲しかった情報も得られたし、わざわざゴブリンのなわばりに入って、怪我をするリスクを負う必要もねぇ。情報も速く町に届けねぇとな。それに、無茶な事をしている新人を放っておく訳にもいかん。それで良いか皆? 」
「僕としては問題はないよ」「私もOK! 」「右に同じ」
「ジンも良いな? 言っとくがお前は強制だぞ」
ランディが、たださえ怖い顔で睨んでくる。
「分かったから、その顔を止めてくれ。普通に怖いから」
「悪かったな、俺は元々こんな顔だ! さぁ話は決まった! 帰るぞ! 」
「落ち着きなよランディ、いつもの事じゃないか」
「うるせぇ! ほっとけ! 」
「はぁ~やれやれ、顔の事はタブーなんだ、次から気をつけてね」
「すいません、わかりました。え~と」
「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はセネル、【魔導士】だ。それでそっちの態度が軽いのが」
「ちょっと~、軽いって何よ。親しみやすいって言いなさいよ。失礼しちゃうな~」
「僕には軽く見えるんだよ」
「む~、まぁいいや、いつもの事だしね。改めて、私は【騎士】のアネット、よろしくね」
「騎士? 」
セネルさんは、ローブを羽織り、身長より長い杖を持った金髪イケメンのお兄さん。美男子とはこういう人を言うんだろう。
アネットさんは、騎士を名乗るだけあって、銀色の甲冑姿。甲冑と言っても、見た目は初心者装備の銀色バージョンだ。燃える様な赤い髪と、セネルさんの杖より長い槍を持っている。
それに、【魔導士】に【騎士】どちらも、最初のジョブ選択には無かったジョブだ。
「見えないよね、この態度で騎士って言われても」
「しょうがないでしょ! クラスアップ先がこれしか無かったんだから! 」
「最後は我だな、我はジオン、【狙撃手】だ」
ジオンさんは、ランディ並の大きな体、装備は服にしか見えないくらいの軽装。そして、背中にライフルを装備している。この世界に銃の類があったんだ。しかし【狙撃手】これも初期には無かったな。それにクラスアップ?
「俺はジン、捕縛師です。あの、クラスアップとは? 」
「ジン君は異人だね、だったらまだ知らないか。それなら先輩冒険者として説明するね。クラスアップとは、メインの職業レベルが20になったら、サブ職業やスキル構成から、上位の職業を選ぶことが出来るようになる事だよ」
「職業は変えられない、と説明を受けたのですが」
「職業の上位種だから、基本は変わらないんだよ。ただ、上位になると取得出来るスキルが増えるし、下位のスキルに必要なポイントが減るといったメリットが有るんだよ。職業によっては覚える事の出来ないスキルも出てくるしね」
「そうなんですね、ありがとうございます。セネルさん」
「これ位気にしないで、さぁ、ランディが待ってるし行こうか」
「はい! 」
道で待ってるランディに合流する。
「やっと来たか! さっさと帰るぞ! 」
「了解」「OK!」「承知」「お、応」「ワン」「キュ」
俺達はそれぞれランディに答えて道を進む。さぁ、帰還だ。
ちなみに、
「ところでランディ? ランディの職業は? 」
「俺か? 俺は【拳闘士】だ」
「そうなんだ」
見た目通りだった。
【ジン】 冒険者rank:F
種族【常人種】 状態:【良好】
職業【捕縛師Lv14】↑2【調教師Lv14】↑2
TLv28 ↑4
LP :420 ↑30
MP :510 ↑60
SP :520 ↑40
攻撃:42(52)↑4 魔攻:43(55)↑5
防御:35(40)↑3 魔防:20(22)
持久:50(55)↑5 精神:28 ↑2
器用:51(62)↑5 素早さ:39(44)↑3
運:30 ↑2
土:10 ↑1 水:7 火:6
風:9 ↑1 光:10 闇:12
JP:9 ↓14
ジョブスキル
【鞭術Lv9】↑1【調教術Lv8】↑2
【調理術Lv1】【片手剣術Lv1】new!
スキル
【俊足Lv7】↑1【気配察知Lv9】↑2【魔力操作Lv11】↑1
【魔力変換Lv9】↑1【気力操作Lv9】↑1
【鑑定Lv7】↑1【識別Lv7】↑1【魔力武具生成Lv1】
称号
【親愛の女神の加護】
従魔
【グレイス】
種族【ブラックウルフ】状態:【良好】
Lv14 ↑2
LP:500 ↑100
MP:530 ↑100
SP:520 ↑60
攻撃:50 ↑8 魔攻:47 ↑5
防御:40 ↑5 魔防:38 ↑3
持久:42 ↑2 精神:32 ↑2
器用:37 ↑4 素早さ:53 ↑3
運:26 ↑2
土:13 ↑1 水:11 ↑1 火:11 ↑1
風:13 ↑1 光:9 ↑1 闇:15 ↑2
スキル
【嗅覚Lv9】↑1【俊足Lv9】↑1【闇魔法Lv10】↑2
【幻影Lv6】↑1【危機察知Lv10】↑1【魔装Lv3】↑2
称号
【双極の女神の加護】
【シロツキ】
種族【ホーンラビット】状態:【良好】
Lv14 ↑2
LP:480 ↑80
MP:520 ↑40
SP:500 ↑80
攻撃:43 ↑3 魔攻:45 ↑7
防御:35 ↑5 魔防:36 ↑4
持久:45 ↑5 精神:32 ↑2
器用:46 ↑6 素早さ:55 ↑5
運:33 ↑3
土:9 ↑1 水:12 ↑1 火:8 ↑2
風:12 ↑2 光:16 ↑1 闇:2 ↑2
スキル
【聴覚Lv10】↑2【俊足Lv10】↑2【治癒魔法Lv10】↑1
【危機察知Lv10】↑1【気配遮断Lv9】↑1
【武器装備Lv☆】【魔装Lv3】↑2
称号
【癒しの女神の加護】
()内は装備合計値
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なんとか三日以内
このペースは自分には無理っぽいので
週間ペースに変えます
投稿済みの編集はもうすぐ終わります
それではまた来週