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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
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38『獣魔ギルド』

 傷が完治してすぐに俺は冒険者ギルドに向かい、大罪の魔獣が現れた事を説明した。ギルドマスターと騎士団の代表の連名ですぐに厳戒体制が取られた直後に、キング、ならびにクイーンの討伐成功の一報と共に、大罪の魔獣が姿を消した事も知らされた。


 報せを聞いた騎士団と冒険者ギルドは厳戒体制を維持しつつ動ける者達での残党狩りを行い、少なくとも【アイン】周辺からゴブリンの姿は居なくなった。森の奥に行けばまだ居るかも知れないが、なにぶん森は広い。奥に行けば行くほど魔物も強力になっていく、それに姿を消した大罪の名を冠する2体。俺はどうなったか知ってるが、他のプレイヤーと異人は知らないそれが森の奥に隠れている可能性もあると危惧して、2日前に森の探索は打ち切られた。まあ実際には騎士団、冒険者共に体力と気力の限界が来た、と言うのが本音だろう。騎士団の応援もあって【アイン】の防衛はマシになったらしいが、備蓄関係はそうでも無いらしいからな。


 ここ1週間で行われたゴブリン襲撃の後始末の流れはこんな所だ。

 さて、次は俺の話だ。


 一昨日の事だ。街の清掃兼警備の仕事を完了しギルドに報告したら、ギルドマスターに呼び出された。最初は何かやらかしたか、セネルに勘づかれたかと疑ったが、ただの報酬の話だった。と言っても、主な功績は部隊と物資の輸送だから俺の功績と言うよりはセツナと従魔達の功績だな。金銭か物資、どちらが良いか問われたのでシェルハウスクラブの修理を頼んだ。おかげで俺が直接受け取る報酬は無くなったが、あれはみんなが作った物、壊れたままってのはな。

 ただ、昨日早速改修するための視察に来た建築士と錬金術師の代表の話だと、修理に2週間から3週間程の時間が必要との事。そんな訳で、俺は今手持ちぶさだ。だからこの時間を使ってケイトさんに紹介された獣魔ギルドへと足を運んだんだが、


「……ここで、良いんだよな? ファームと道を挟んだ反対側って言ってたし」


 言われた場所に行ってみると、目の前に建っているのは蔓に覆われたえらく寂れた建物だ。確かにある意味では目立つ施設ではある。あるが、これはどちらかと言えば近寄りたくない部類の物だ。ちゃんとやってるんだろうな、ここ? いや、もしかしたらまだ再開してない可能性もあるか。一応行ってみるか。


「ん?」


 建物の側に近寄ってみると扉にはかすれた狼と馬が背中合わせのシルエット、そして扉の縁に蔦に隠れた【獣魔ギルド】の文字があった。ふむ、これが【獣魔ギルド】の紋章か? 【冒険者ギルド】の様に旗でも立ててくれればまだ分かるのに。そう思いながら扉をくぐる。


「……お邪魔しま~す」


 ギルドに入るも中は薄暗く、つい小声で呼び掛けてしまった。これで返事が無かったら帰ろう。広さは冒険者ギルドの何分、いや、何十分の1だ? えらくこぢんまりしている。明かりは部屋の中央上部の1ヶ所のみ、壁は全て棚になっている。

 左の棚には大量の石、1つ【分析】してみたら魔石だった。どうやらこっちの棚は魔石を飾っているようだ。そして左の棚には卵が陳列してある。確か魔石は召喚獣を呼び出す為に必要だった筈、つまり、


「左は【召喚師】、右は【調教師】の為の棚って事か」

「そういうことさ、お客人」

「うおっ!?」


 突然横から声が聞こえて驚いてしまった。声がした方に振り返るとそこには小さなカウンターと、見るからに怪しい黒いローブを羽織ったお婆さんが座っていた。……人、居たのか。


「えーっと、こ、こんにちは」

「はい、こんにちは。用が無いなら帰りな」

「いやいや、用があるから伺ったんですが」

「そうなのかい? だったらさっさとそう言いな」


 なんなんだこの人、まさか用件を聞くより前に出ていく様に言われるとは思わなかった。この人が受付で大丈夫か?


「なんだい黙っちまって、用があるならさっさと言いな。じゃなきゃさっさと出ていきな」

「そ、それじゃギルド登録をお願いします」

「登録~?」

「え、ええ」

「じゃあギルドカードを出しな」

「ギルドカード? 冒険者ギルドのカードしか持ってないんですけど、これでいいんですか?」

「いいんだよ、コイツは全てのギルド共有のカードだからね。分かったらそれをこっちに寄越しな」

「は、はい」


 カードを差し出すと、お婆さんはそれを引ったくるように持ち上げ何かの装置に差し込んだ。すると、装置から光が溢れお婆さんの正面にウインドウが現れた。残念ながら、俺からは何が映っているのか見えない。お婆さんは暫くそれを眺め、


「フン、ま、悪くはないね。良いだろう、登録しといてやろう」

「あ、ありがとうございます?」


 あれ? 今の言い方だと、場合によっては登録出来ない可能性もあった?


「良いかい? 1回しか言わないから耳の穴かっぽじってよおく聞きな。アンタは既にギルド指定の目標を達成し、その報酬を取得できる状態にある。ギルドカード(コイツ)をファームのガキ共に渡せば色々と貰えるから、時間が出来た時にでも寄りな。それと今後【獣魔ギルド】(ここ)に用がある時もファームに行きな、大まかな事はあっちに任せてあるからね。こっちでしか出来ない事はその都度指示がある筈さ」

「分かりました」


 俺はギルドカードを受け取りながらそう答えた。更にお婆さんは続ける。


「じゃあ早速こっちで出来る事をやるよ。よっこいせ、と。さあ、これを引きな」


 お婆さんがカウンターの下から取り出したのはそれなりに大きな箱だ。箱の上部には穴が空いている、覗いてみると中には黒と緑の煙が見えた。引けって事はこの穴に手を突っ込めって事だよな? 安全なのか、これ?


「浅ましい奴だね。覗いても中は見えないよ」

「じゃ、じゃあせめて何が入ってるのか教えてくださいよ」

「そいつは無理だね、そんな事したら面白みが無いじゃないか。あたしゃこの箱をビクビクしながら引くバカ共を見るのが楽しみなんだ。さあ、さっさと引きな」

「……じゃあ引きたく無いです」

「アンタ、あたしの楽しみを奪う気かい? それなら登録を取り消すよ、良いのかい?」

「取り消し!? そんな事、婆さんに出来るのか!?」

「出来るさ。なんたってあたしがここのギルドマスターだからね」


 マジか? 何でギルドマスターが受付やってるんだよ。いや、人が居ないからか。外装がボロボロなのもそれが原因か。


「人手不足なら人を雇いましょうよ」

「あたしゃ人が嫌いなんだよ。人はすぐ嘘をつき、騙し、裏切る。それ比べて獣は良い。手をかければかけるほど答えてくれるからね。おっと、それは今どうでもいいことだね。そんな事より選びな。引くか、登録取り消しか。どっちだい?」

「……引くよ、引かせて頂きますよ」

「ならさっさと引きな」


 この人はまともに考える時間すらくれる気は無いようだ。しかし、引くとは言ったものの、


「これ、噛んだりしませんよね?」

「さあね。ほらさっさとやりな」


 この婆さんは本当に──いや、もう何も言うまい。既に色々手遅れだろうし、何より今後関わることはほぼ皆無だろうからな。さて、それじゃあそろそろ引いてみるか。しかし、いざ謎の箱(これ)に手を突っ込むとなると、中々勇気がいるな。だが、こんな所で時間をかけてはいられない。


「ふー……いざ!」


 箱の中に勢いよく手を突っ込む。しかし、特に何も起こらない。と、いうか何かあるような感触も──お?


「なんだ、これ? よっと。──ふむ、紙、か」


 手の平に何かが滑り込む感触を感じ引き上げると、手の中に折り畳まれた紙があった。開いてみるとそこには654の数字が、なんだこれ?


「ほう、そう来たか。んじゃあ次だよ、さあ引きな」

「えっ、これで終わりじゃないの!?」

「何言ってんだい、後2回引くんだよ。ほれ、1回やったから恐怖も不安も多少安らいだろ? さっさとやんな」


 促されるまま更に2回手を突っ込み、122と106の数字が書かれた紙を引いた。それを見た婆さんは、


「フン、カードを見た時にも思ったが、アンタには妙な縁があるようだね」

「縁?」

「独り言に質問するんじゃないよ。それより、ほれ」


 婆さんが唐突にカウンターにあるものを置いた。これは──


「鍵と……網?」

「それ以外の何に見えるんだい」

「いやまあ、そうなんですが」

「さあ、ここで出来る事はこれで終わりだよ。鍵と同じ番号の棚の中にあるものを網に入れて、さっさと出ていきな。いいね?」


 そう言って、婆さんはカウンターの奥に消えた。なんともまあ、投げやりな人だな。まあ、登録出来たから良しとしよう。うん。それじゃ、貰える物貰ってファームに向かうとしよう。

すいません、7話で終わりませんでした。

まあ、もう少しでこの章も終わりますのでもう少しお付き合い下さい。

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