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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
175/193

34『VSセネル』

 俺が困惑して固まっている間も、セネルさんはアギネスと会話を続ける。


「憤怒は覚醒した、お前の推測通りにな。封印しようとしたが、俺達が持ち込んだ封印装置では力が足りず──」

「そこじゃありません。あれは何で、どうしてそこで感電して動けなくなっているのかを聞いているんです」


 えっ!? アギネスの奴、既に感電してたの? マジかよ?


「あれは……よく分からん。恐らく嫉妬の使い魔的な奴だと思われる。嫉妬同様、攻撃されると感電しまともに動けなくなる。しかも魔法では治療出来ん」


 そうなんだ。それは説明になかったな。そして使い魔じゃありません、主です。


「と、なるとあそこで浮いてるのが嫉妬ですか。感電とはまた厄介な。それにしては普通に喋れていますね? どうしてですか?」

「恐らくは耐性だろう。それなりに俺は高いからな」

「そうですか。ところで事前にお渡ししたポーションはどうしたんですか? 万能薬もあったでしょ?」

「半分は始めにやられた部隊に、残りの4分の3をバリエラの部隊に持たせた。残りはここに転がっている部下達が持っていた」

「はぁ、貴方達の悪い癖ですよ? 魔力は確かに万能ですが、肉体の全てをカバー出来る訳ではないんですよ」

「……善処する」

「その返事では期待は出来ませんが、まあ良いでしょう。奴の目的は?」

「憤怒の解放、だと思われる」

「ふむ、確かに僕が集めた情報でも魔獣が協力関係を持つ様な物はありましたが、嫉妬が? 発生の特性上、それは少々──ですが、貴方がそう思ったのならそうなのでしょうね。あれについて他に分かっている事は?」

「条件は分からんが魔法を無効にする事がある。ステータスも高い、恐らくは平均で700近くあるだろう」


 いえ、攻撃、防御、素早さが666あるだけでそれ以外は200も無いです。はい。ってか一撃加えただけでそこまで分かるのか? すげぇな魔族。


「それに加えて打撃には感電効果、なるほど。面倒な相手であることは間違いみたいですね、とりあえずこれを」


 セネルさんはローブから何かを取り出すとアギネスに投げつけた。それはアギネスの頭に当たって砕け、アギネスを濡らす。


「万能薬です。あなたの分析が正しければ僕1人で戦うのは難しいそうですからね。動ける様になったら前衛をお願いします」

「何故俺が」

「僕は常人種の魔導士、いくらレベルを上げても近接戦闘になれば不利なのは変わりありません。貴方方魔族と違ってね」

「フン」

「不服そうですね。一体誰がゴブリンの数が揃うまで痕跡を隠してきたと思っているのですか? ラプターを憤怒に導くためにユニークを残して全滅させたのは? 対異人の新武器の実験用の部隊を寄越せ、なんてのもありましたね。そうそう、その中にジン君を混ぜろと言う無理も聞きましたよね? よもやここまで来て契約を反故にするおつもりで?」


 は? 今、なんて言った? 痕跡を隠した? 群れの全滅? 新武器の実験? 一体何を言っている?


「そんな気はない。やってやるよ」

「そうでなくては。では、お願いしますね。さて」


 セネルさんが俺に向き直る。俺の中は疑問で一杯で何をすればいいのか分からない。俺の知ってるセネルさんは優しく、礼儀正しいしっかりした人だ。色々と便宜も図ってくれて恩もいくつかある。ファームを紹介してくれたのもセネルさんだし、俺達に絡んできた面倒なプレイヤーの足止めもしてくれた。そんな彼が、敵? 何の冗談だ。


「アギネスさんが中々折れないせいもあって君は色々と聞いてしまった。悪いけどここで消えて貰うよ? まあ、元々敵な訳だから聞いていようとそうじゃなかろうと関係無い話だけどね。それじゃあいくよ? トゥッティ・バーストスピア・フォルテ!!」


 わざわざこちらに倒す理由を話すセネルさんは、まるで普通に話す様に魔法を放った。えっ? と呟いた時には既に目の前に赤い丸がいくつも迫っていた。


「クソッ!?」


 俺は慌てて右に避けてたが、どれかに僅かにかすり一気に3割近くゲージが減った。今のはなんだ!? 何発同時に魔法を発動したんだ!?


「やはりその速さは驚異だね、あのタイミングで躱されるとは思わなかったよ。それじゃあドンドン行こうか。トゥッティ・アクアランス・フォルテ!!」


 クソッ! 確認している暇が無い! 俺は迫って来る大量の水の槍を躱す為に咄嗟に空へと飛んだ。


「逃がさないよ? デュエット・トルネードアロー・&・アースバレット・フォルテ!!」


 頭上から風の螺旋を纏った矢、地上からは土の塊がまたも大量の襲って来る。【小鱗分】、いやまだだ! まだいける!! 俺は必死に2つの魔法の大群の隙間を縫う様に避ける。


「おお! 凄いね、これを躱すのかい!? なら次はこれだ! デュエット・シャドウジャギド・&・シャインエッジ・フォルテ!!」


 今度は黒いギザギザの円と白い直剣の刃が全方位から襲い掛かってくる。どんだけ魔法を撃てるんだ!?


「小鱗分!!」


 流石にこれは無理と判断し小鱗分を展開、飛んできた魔法を受け止める。小鱗分はその効果を存分に発揮し、全ての魔法を分解した。分解された魔力を溜め込んだ羽は、爆発するんじゃないかと思う位にバチバチと音を立てている。ステータス、いや、ここは感電に賭ける。


羽落雷(エンヴィーサンダー)!!」


 紫色の雷が俺のすぐ側を駆け抜ける。エンヴィー・モスの【羽落雷】は真下から外へと向かう範囲攻撃だが、ソウル【エンヴィー】のこの攻撃はランダム攻撃だ。何故なら発生地点の羽が動く度に雷撃の軌道が変わってしまうからだ。当然、狙った場所に当てる事など不可能。発動した最初の一瞬を除いては。【羽落雷】の最初の一撃は必ず正面に向かって放たれる、これを利用すれば確実に狙った相手を狙えるのだ。


「セクステット・エレメンタルバスター・フォルテッシモ!!」


 セネルさんに向かった雷撃はセネルさんが放った新たな魔法に弾かれた。いや、弾かれただけじゃない。その魔法は雷撃を押し退けこちらに迫って来た。攻撃範囲、スピード、これは躱せない。俺は6色の魔力の光に飲み込まれた。だが、


「あ、危なかったぁ。小鱗分の効果が生きてて良かった」


 流石にもう無理だと諦めたじゃねえかこの野郎。だが分かった。俺じゃセネルさんに、いや、セネルに勝つ事は不可能だ。なら、逃げの一択だ。とりあえずリィスと合流を──


「余所見してんじゃねえぇ!!」

「アギネ、クッ!?」


 突如、背後からアギネスが殴りかかってきた。防御をする事には成功したが、衝撃は防ぐ事が出来ず吹き飛ばされる。


「ガハッ!?」


 飛ばされた先の巨木に衝突、思わず声が出た。が、おかげで止まった。ゲージは──思ったほど減ってないな、増やしたステータスのおかげか? あっそうだ。


「チェンジ・ステータス!!」


 とりあえずこれで能力を補強、増えたのは……魔攻か。残念ながら今の状況だとあまり役に立ちそうにないな。おっと。


「チィ!!」

「流石に2度目は警戒するってーの!!」


 俺は叫びながらアギネスに殴りかかる。しかし、俺の拳は両方とも防がれてしまった。


「舐めるなよ。同じ手は、ゴハッ!?」


 だから反対の腕2本で横っ腹を殴ってやった、アギネスは俺の腕が4本あることを失念していたようだ。まあ、4本腕の相手となんて戦う機会は──あるかもしれないが相当少ないだろうからな。


「お前は邪魔だ! その辺で転がってろ!!」


 俺は怯んだアギネスに4本の腕と足でラッシュを仕掛ける。いくつかの攻撃は防がれるが、手数が違うからか、結構な確率でアギネスの体に攻撃が当たる。


「クッ!?」


 その内にアギネスが呻き動きが鈍る。感電が入ったな? ここだ!


「おりゃぁぁ!!」

「グフッ!?」


 格闘技なんて習った事はないので、ただただ力一杯腹を蹴ってやった。アギネスは呻き声を上げて地面に向かって落ちていった。よし、これで逃げられる。え~と、リィスは……ん? 本が浮いて──ってヤバイ!! あれは──


「セプテット・アンサンブル・スフィアステージ」


 何処からかセネルさんの声が聞こえた。すると、本の周辺が揺らぎ一気にに広がった。もちろん、俺を巻き込んで。見渡して見るとさっきよりも周囲の色が薄い、どうやら膜の様な物に閉じ込められたみたいだ。


「イッタ!?」


 なんだ!? 突然右足に痛みが走りゲージが減少した──ゲッ!?


「おいおいおいおい!? 勘弁しろよ!?」


 後ろを振り返ってみれば、そこにはさっき見た魔法が大量に駆け巡っている。どうやらさっきのは流れ弾に当たったらしい。しかもその魔法の大群は徐々にこちらに近付いてきている。あれを避ける? 不可能だ。見た限りでは魔法の発生源は俺を包んでいる膜そのもの、更に反対側に当たった魔法が跳ね返り軌道も均一じゃない。魔法同士がぶつかると消滅するみたいだが、とてもじゃないがあの数をどうにかする術がない。だったら、こちらのまだ魔法を吐き出していない部分を突き破って逃げる。これしかない。


「おりゃぁぁぁ!!」


 俺は膜に一気に近付き、そのスピードのまま蹴りを膜にぶつけた。しかし、


「なんだ、これ? うお!?」


 なにやら柔らかい感触と共に弾き跳ばされた。こんな魔法もあるのか。いや、時間がないんだ、何も考えるな。一撃でダメなら連打だ!


「おりゃぁぁ!!」


 そう思い力を込めて攻撃をしてみたが、全く破れる気がしない。


「グッ!? クソッ! もう無理か。小鱗分!!」


 そして俺が膜の破壊に悪戦苦闘している間に、すぐ側まで魔法の発射が広がっていた。これ以上はダメだと感じ【小鱗分】を展開した。これで後残り回数は一回、出来ればこれを最後にしたい。だから、切り札を切る。


「貫け雷光! 紫電(エンヴィーレイ)!!」


【紫電】は触覚から放たれる紫色の光線だ。他の攻撃同様感電効果付き、しかも確率80%とこのソウルが持つ攻撃で一番感電する可能性が高く最も攻撃力が高い。問題点は変身している時間を示すゲージを消費して使用するから乱発は出来ない事。このソウルの必殺技みたいなものだ。

 だが、紫電は膜を勢いよく押している様に見えるが、破れる様な雰囲気はなかった。


「破れない、か。だったら同時攻撃ならどうだ? 羽落雷!!」


 幸い、既に膜の中は魔法が縦横無尽に飛び回る異常な空間になっている。おかげで羽落雷は連射が可能、後はソウルの変身エネルギー切れる、または小鱗分が時間切れになるまで膜を破れば俺の勝ち。出来なければ──いや、勝つ事だけを考えろ! ただ膜を破る、その1点に集中しろ!

 羽落雷の雷撃を取り込んだ紫電はその威力を増し、膜を更に押し出していく。そして、ゲージが残り1割を切った時、その時はやって来た。俺の雷撃が膜を破り、外の空気が強風となって襲いかかってきた。


「クッ!? 負けるかぁ!!」


 もう小鱗分の残り時間が無いのだ、ここで風に負けている場合ではない。俺は必死に羽を動かし前進、膜の外へと脱出した。


「よ、よし! それじゃ今度こそ、っ!? 小鱗分!!」


 外に出た直後、膜の中から溢れた魔法が次々に襲いかかってきた。俺は慌てて【小鱗分】を再展開。危ねぇ!? 折角脱出出来たのにここでダメージを受けたらソウルが解けて落下、そのまま死んで苦労が水の泡になる所だった。しかし、


「魔法の流れ弾は来てもセネルの追撃が来ない。いや、これが追撃なのか? アギネスは──まだあそこで痺れている。今の内だな」


 俺は【小鱗分】が解けて落ちる前に急いで地面に降りリィスの元に走る。さあ、さっさと脱出だ。

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