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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
174/193

33『VSアギネス隊』

遅刻しました

「なんだ、お前は?」


 俺はアギネスのその言葉を聞いて納得する。ソウル・エンヴィーを使用している間は意思疎通が出来ないみたい事に。さっきも魔族達相手に性能を確認していた時にバリエラさんを見つけて話しかけて見たんだが、問答無用で攻撃された。顔がひきつっている様に見えたから単純に虫が苦手なのか? と思ったんだが、先に話かけた筈なのにアギネスのこの反応、多分、間違いない。

 まさか声が聞こえていない、なんて事は無いだろうから別の言葉に聞こえているのかもしれない。まあ、俺個人は普通に喋ってそう聞こえているから確認のしようがない。このまま行くしかないな。


「てめえ! 俺の部下達はどうした!?」


 どうやら仲間達が姿を消した事に気付いたようだ。


「死んではいないよ、多分。まあ、痺れて動けなくなってはいるだろうけど」


 今度こそ、と言う思いを乗せてアギネスの質問に答える。彼等は飛び上がった俺に魔法をバンバン撃ってきたのでエンヴィーの能力【小鱗分】を纏い魔力に変換して吸収、そして一定量吸収する事で羽から放てる様になる雷撃【羽落雷(エンヴィーサンダー)】で感電してもらった。

 エンヴィー・モス・アストラルだと感電率100%だが、俺が使えるのは66%と低めな上射程も短く威力もない。しかも光るだけで音が出ない仕様、ぶっちゃけこけおどしな技だ。まあ、残念な仕様だが今の空模様も重なったおかげか、アギネス達が気付く前に全員感電させる事が出来たわけだけどな。


「どうしたかって聞いてんだぁ!!」

「おっと」


 アギネスが突然殴りかかってきた、俺はそれを軽くいなし距離を取る。これも聞こえていないみたいだ、面倒だけど全部終わった後にネタバラシをしてやろう。ん?


『猛火よ 我が声に応えここに集いて敵を滅せよ』


 詠唱か、前に構えた両腕に集まる魔力を見るに相当強いのが来そう。チャンスだ!


「舞え! 小鱗分!」

『プロミネンスゥゥ・バスタアァァァ!!』


 アギネスが叫ぶと同時に視界が真っ赤に染まる。だが、俺の体に届かない。他のスキルと違い、【小鱗分】は効果範囲が減っただけで魔力の分解機能はそのままになっている。つまり、このソウルを使用している限り俺に魔法は効かない。まあ、弾数式で6発しか使えず効果時間1分、更に弾を使い切ると空を飛べなくなると言う制限はあるが、十分に破格な性能だから使い所さえ間違えなければ何の問題もない。とか言いつつ既に3発目の小鱗分だったりするんだけどね。


「無傷だと!?」


 魔法の照射時間が終わっても変わらぬ姿でいる俺に驚いた様だ。だが、驚くのはここからだぞ。


「チェンジ・ステータス!!」


 俺がスキル名を叫ぶと、羽に帯電している稲妻が体に集まり消えていく。ここでステータスを確認。


「よっしゃ攻撃力! これで(攻撃)(防御)(素早さ)揃い踏み、魔族は魔法の威力が高くて助かるねぇ」


 スキル【チェンジ・ステータス】。その効果は羽に溜め込まれた魔力をステータスにランダムで加算する事が出来る、というもの。最大で各ステータスが666(LP、MP、SPは6666)になるまで数値が加算される、確か獣の数字とか言う奴だっけ? そういうのは詳しくないから分からん。とにかくそれだけステータスが上がると認識していればオーケーだろう。

 ちなみに、このスキルは【羽落雷】との選択式、どちらも溜め込んだ魔力を全消費してしまうからだ。攻撃するか、ステータスを上げるか、それが問題だ。とりあえず相手が多数なら【羽落雷】、少数なら【チェンジ・ステータス】にしておこう。では、早速行こうか。


 俺はバリエラさん達との戦いで増えた素早さで一気にアギネスの懐に入り込み、2本の右腕で腹と顔面をぶん殴る。


「グッ!?」


 アギネスは俺の動きに気付いたらしく顔を両腕で庇った、残念ながらそれでは片方しか守れないな。俺の右腕がアギネスの腕と腹に直撃、その衝撃でアギネスが吹っ飛んだ。そのまま巨木にぶつかると思いきや翼でバランスを取り回転、ぶつかる筈だった巨木に着地した。


「マジかよ」


 ステータスが上がってもまだ敵わないのか。そう思った直後、アギネスが巨木から離れこちらを見た。

 来るか! そう思い身構える。しかし、アギネスはそのまま地面に降り片膝をついた。なんだ、しっかりダメージ入ってるじゃないか。ここまで強化してまともにダメージ入らないとか言われたら、ホントどうしようかと思ったわ。まあ、最悪ソウルの効果が発揮するまで粘ればなんとか──


「やれ!!」

「なに!?」


 アギネスが突然叫んだ。すると回りの茂みから複数の人影が飛び出してきた。クソッ! またあの気配が分からない奴等か。見た限り全員がこちらに手を向けている、魔法を使うつもりの様だ。小鱗分は──既に効果切れ。なら再展開──いや、間に合わない。


「チッ」


 思わず舌打ちをし、魔法を避ける為に飛び上げる。直後、俺が居た場所に色とりどりの魔法が殺到し爆発した。


「うお!? ……ふぅ、危なかった」


 爆風に煽られバランスを崩しかけたが、なんとか持ち直した。アギネスめ、いやにゆっくり動いたのは部下達の魔法発動の時間を稼ぐ為だったんだな。マッチョな体のクセに咄嗟の頭の回転も良いのかよ、ホント勘弁しろよな。ただ、膝をついたのは演技じゃないみたいだ。見下ろすと仲間の1人に魔法を受けている様子が見え──


「手を緩めるな! 撃ち続けろ!!」

『ハッ!!』


 アギネスは膝をつき回復しながらも部下達に命令、それどころか自分で魔法を撃ち込んでくる。既にある程度の距離が離れたから避けるの簡単。だが……何故魔法で攻撃してくるんだ? 小鱗分で魔法が効かない事はさっき見せた筈、まさか気付いていていない? それとも小鱗分の効果切れが分かったのか? う~ん? 俺には分からん。だけど、これは好都合。え~と、リィスの方向はこっちか。

 俺は魔法を避けながらリィスが背後になるように移動する、俺が避けた魔法をリィスに吸収させる為だ。間もなく、リィスの魔力の吸収が終わり羽から稲妻が漏れだした。そして稲妻はリィスの胸、頭を伝い触覚へと収束、


「ギュアァァァァァァァァァ!!」


 雄叫びと共に触覚から紫の光線【紫電エンヴィーレイ】が結界へと放たれた。あれは触れた相手の防御力を無視したダメージを与え、確実に感電させるエンヴィー・モスの必殺技だ。紫電は一瞬で結界に到達した。しかし、


「壊れない、どんだけLP高いんだあれ」


 このままだと最悪、結界が壊れる前にリィスのMPが尽きる。なんとかしないと、……あっ。


「リィス! 狙うのは結界の方じゃない、結界を発動している機械の方を狙え!」

「ギュアン!」


 リィスは俺の指示を聞き入れ、すぐに結界を発動していると思われる周辺の機械と紫電をずらす。そして、ガラスが割れる様な巨大な音とも結界が壊れ、ラース・ザウラーが地面に横たわった。


「よおし!!」


 結界が壊れたのを見て思わずガッツポーズした。が、すぐに冷静に戻りアギネス達を確認する。リィスが雄叫びを上げた辺りから魔法が止んでいたが、封印が失敗したこの状況で奴等はどう動くつもりか見ておかないと。と、思ったのだが、なんかラース・ザウラーの方を見て呆然としているな。うん、実に隙だらけだ。よし、奇襲をしよう。

 そう考えた俺は手をこちらに向けながらラース・ザウラーを見ているフード野郎に向かって突撃した。


「ガハッ!?」


 空から落ちる様に放った蹴りはフードの腹を蹴り転倒させた。体は貫いてないけど、これ生きてるか? そう思った直後、


「バカ野郎! なに敵から目を離してるんだ!! 迎撃しろ!!」


 アギネスが怒鳴り気味に叫んだ。いや、お前も目、離してたろ? と言ってやりたい。今の俺じゃ言葉が通じないから無理だけどね。おっと。

 アギネスの声で正気に戻った部下達が突撃してきた。残念ながら今の俺の目には全ての動きが見えている、俺は向かってくる魔族を1人1人確実に対処し動けなくしていく。このソウルを装着している間、俺の攻撃には33%の確率で相手を感電する効果がある。つまり、相手が感電するまで殴れば、例え相手を気絶させる技術が無くとも相手を無力化する事が出来るのだ。


「後はお前と後ろに隠れた奴だけだな、アギネス」

「貴様、よくも俺の部下を」

「安心しろよ。どんな理由であれ、お前達は俺のパーティーを誰も殺さなかった。だから俺も極力殺しはしない。だけど、しばらく動けなくなってはもらうぞ」


 話しても言葉は通じない。それでも、僅かにでも俺の意図を察して貰えるように口に出した。期待はしてないけどね。リィスも予想以上にMPを使ったのか、空に留まっているのも辛そうだ。暫くすれば周辺の生物からMPを吸収しマシにはなると思うが、それまで魔族に邪魔されたくはない。悪いけど、痺れていてもらうよ。


 俺はアギネスを感電させるため1歩踏み出そうとした。その時、森の奥から光が飛び出してきた。

 狙いは──俺か!? 咄嗟に後ろに飛び上がり光を回避する。魔族の増援か? そう思い光が飛んできた方を見る。すると森の奥から人影がゆっくりと現れた。


「ふむ、大罪魔獣と対峙する魔物が現れたと聞いて急いで来てみれば、これはどういう状況なんだ?」


 現れたのは濃い青色のローブを纏い、周りに10冊程の本を浮かべ、片目だけの眼鏡モノクルをかけたセネルさんだった。もしかして、あれがセネルさんのソウル? ともかく味方で良かった。俺は事情を説明しようと口を開こうとして、今の姿だと無理な事に気付きソウルを解こうして──


「アギネスさん、説明してください」


 アギネスの名を呼ぶセネルさんの声に固まった。えっ? どゆこと?

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