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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
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29『紡いだ絆の続きを』

 俺を振り落としたモスは元の高さに戻り、再度爆発する光る玉を部屋にばらまいた。仕切り直しと言うわけか、それじゃあこっちも準備をサッと終わらせよう。LPポーションとMPポーションを飲み込みながら別のポーションを自分に振りかけ、武器をシザークラブハンマーに、足防具をトータスカラパグリーブ、腕防具にクラブアームズ、そしてアクセサリにハリボテの翼と竜亀の首飾りを装着。俺の今の最強装備だ。胸当ては壊れて見た目もボロボロだが残念な事に替えがないのでそのままだ。


 さて、光る玉に近寄らないように動きながらテイムする方法を考えよう。まず思い出すべきは俺が覚えている幼虫との記憶と幼虫自身の記憶。そして、この部屋の様子だ。モスの後ろについているアストラルという言葉、確か意味は精神体みたいな意味だった気がする。そんな抽象的な奴がいるって事はここは幼虫の心の中か、それに近い場所だと思われる。なら、この部屋自体がヒントになっている筈だ。

 最初に考えるべきは原因、そう、幼虫が『嫉妬』なんて力を手に入れてしまった最初の原因を探る事。一番に思い付くのはやはり、


「ネリネさんだろうなぁ」


 あの人が無意識か故意か知らないが、虫除け効果のあるお香を使って幼虫を追い出してしまったのが原因と考えるのが普通──ゲッ!

 ネリネさんの名前に反応したのか、モスの雷撃が俺の体を貫こうとした。しかし、装備した竜亀の首飾りがその効果を発動した。俺のLPは減らず雷撃がモスの元へと戻っていく。が、雷撃はモスの手前で消滅、紫色の粉へと変わった。

 あっぶねぇ!? 首飾りが無かったら俺が死んでたし、モスが魔法系の無効能力を持ってなかったらモスを倒してしまったかもしれない。不用意に何か呟くのは危険だな、注意しないと。ってマジか!?


 今の雷撃で羽のチャージが完了したらしく羽が激しく輝き帯電しだした。回避! 回避しないと、えっと──そこだ!! 俺は光る玉から距離を取りながら移動し、光る玉がない空白地帯に走る。その最中に羽が一層強く輝くのが目に入る。来る! そう思った俺は一度足を止め、モスの雷撃に備える。もし、飛び込んだ先に雷撃が来たらアウトだからな。

 直後、羽から雷撃が落ちた。問題の移動ルートは……俺に真っ直ぐ来る。これならイケる! そう思った俺は空白地帯に飛び込んだ。雷撃は俺が止まった場所を挟み通りすぎていった。よし!! なんとかなったぞ! さあ次が来る前に考えろ、モスをテイムする方法を。


 鍵はネリネさんだ。彼女がやった事に対して俺が幼虫になんて声をかけるか、これが問題だ。そして俺はその答えを思い付いていない。だからもっと考えろ、幼虫の心を。

 思い出すべき事は幼虫の記憶、アイツが力を求めたのは何故だ。そんなものは決まっている、俺達にもう一度会う為だ。だから強さを求めた、あの森で生き残る為に──いや待て、それは何か違う気がする。俺達から離された幼虫は何を考えていた? 確か『何故?』だ。一体何が何故なんだ? 離れる事になった事か? それともネリネさんの事? いや、お香に抗えなかった事かも? 思い出せ! あの時の幼虫の状態を。あれは俺が残したミツミツリーフを──奪われた?

 俺はふと1つの答えに辿り着き、部屋の上にぶら下がっている俺が入っていた繭を見上げる。俺の考えが正しければあの繭の意味は……よし! やることは決まった。後は試すだけだ。


「待たせたなエンヴィー・モス、こっからが本番だ。行くぞ!!」


 俺はエンヴィー・モスを見上げてそう叫びながら玉の位置を確認する。まずはあの邪魔物を退かさないと、ついでに確認したい事もあるしな。俺はシザークラブハンマーを構え射出、玉の間をハサミは直進する。そして玉のいくつかがハサミに近付き爆発、同時に流していた魔力の感覚が消えハサミが戻ってきた。すぐにハサミの耐久値を確認。やはり、耐久値は減っていない。効果は武器に対しても同様と言うこと、これなら、イケる!


 俺はモスに向かって一気に駆け出す。データは少ないけど、恐らくあの触覚からの雷撃には使用間隔(インターバル)がある。そうじゃなきゃ、動きを止めた俺に発射しない理由がない。もちろん、今この時もな。俺はモスの真下近くに着くと同時に気力を足に集中し跳躍、しかしこれではまだモスの元に辿り着けない。だけど俺は届かせる方法があるのを知っている、要はデビルキッド戦(あの時)と同じことをやればいい。


「羽ばたけ! ハリボテの翼!」


 背中で翼が動く感触を感じながらもう一度跳ぶ為に力を込める。すると、足の裏が何かを踏む感覚が来た、俺はそれを力一杯踏み込み更に高く跳び上がる。間近に迫るモスの頭、だが、


「ギュア!?」


 モスは羽を振り更に上に移動を始めた。更に羽から光る玉が放たれ、その一部がこちらに向かってくる。でも、


「行け! エレメンタルソード!」


 指輪からアイテム一覧の上に並べ替えておいたエレメンタルソードを取り出し、モスに近付き過ぎない用に移動させ玉を誘導、玉が動いて出来た隙間からモスに向けてシザークラブハンマーを射出する。モスに近付くにつれ魔力を動かしている感覚が減っていく。だが爆発を受けた時と違い感覚が消えない。

 そしてハサミがモスに届く前に更に魔力を流しハサミを開く。しかし、触れる直前に流した魔力の感覚が消える。だが、届いた。それを証明するように俺の体が勢いよく引き上げられる。その勢いはハサミが手元に戻っても衰えず、俺の体をひっくり返した。そして、モスの上に乗る事に成功した。


「よし!」


 再びモスの上に登れた事に思わず声を出してしまった。LPはともかくMPは一気に減ってしまって危ない事になってるが、これはすぐにMPポーションを体に振りかけ対処する。それでも僅かに減り続けている、モスの側だと何もしてなくとも減ってしまう様だ。本当に厄介なのに進化したものだな。さあ、絞めに入ろうか!

 俺は這いながらモスの首付近に移動し、すぐさま指輪から黒い球体を取り出す。そう、ゴブリンジェネラルが使っていたハンマーの中心に収まっていたと言う謎の石だ。分かっているのはただ重い事、だが今はこれが手元にあることを喜ぼう。玉は取り出した瞬間に俺の手ごとモスの体に食い込んだ。


 あれ? これボックスの中に入れてた時より重くなってね? 前は転がせる位出来た筈だけど、今は微動だにしない。ちょっとこれヤバくない? だけど、効果そのものは俺が望んだ、いや、それ以上の成果が上がっている。モスの高度が一気に下がったのだ。なら、止める理由はない。仮にこれで手がヤバい事になろうとも、このまま続行だ。ついでだ、トータスカラパグリーブの効果を使い重量を更に倍だ。MPはギリギリだがSPはほぼ満タン気兼ねなく行くぞ。


「ギ、ギュ、ギュゥゥゥゥゥア!!」


 落ちないように必死に羽ばたき抵抗するモス。ここだ、ここで畳み掛ける!!


「いいか! よく聞けエンヴィー・モス、いや幼虫!」

「ギュア!?」


 反応した? いや、必死になって出した声がそう聞こえただけか。だが構わない、俺は今俺が出来る事をするだけだ。


「俺は、いや俺達は、決してお前のものにはならない!!」

「ギュ!?」


 今、一気に落ちたぞ。どうやら俺の声はしっかり届いているようだ。


「何故なら! 俺達が世界を自由に生きる冒険者とその従魔だからだ! そして、俺達はこんな暗くて狭い所でお前と共にずっと過ごす事は決してない!」


 幼虫は俺達と一緒に居たいんだ、例え俺達の意思を無視して拘束してでも。その証拠があの繭だ。あれは俺達を捕らえてここから逃げられない様に、いや、二度と誰にも奪われない様にするためのもの。そんなものに納まり続けてたまるか!


「だから! お前が俺達と来い!」

「ギュア!?」

「お前の気持ちは分かった。居たかった場所を追い出され、貰う筈だったものを奪われ、それでももう一度俺達に会うために強さを求め、封印された。辛く、悔しかっただろう。そして、これからだってお前の思い通りにならない事は山ほどあるだろう。だけど! いや、だからこそ! 少しでも楽しく笑って過ごそう! 俺と、仲間と一緒に! 今度は絶対その手を離さない! だから! 俺達と一緒に世界を見に行こう!!」


 モスの動きが止まる、と同時に部屋中にヒビが走り出す。ヒビはあっという間に部屋の床、壁、天井を覆い、轟音を響かせながら砕け散った。砕けた部屋の欠片は光となり辺りを白く染め上げていく。そして、モスの体も光に変わっていく。


「幼虫!?」


 俺が叫ぶと同時にモスは完全に光に変わる。当然、乗っていたモスが消えた事で俺は床に落ちる。その時、光が俺の周りに集まって来て落下の速さが落ちゆっくりと下ろされた。俺が床にしっかり立つと光は離れ、俺の正面に集まり始めた。光は卵の様な形に変わり、直後に弾けた。中から現れたのは蛾だ。紫色と黒い体毛を持つ胴体に、緑色を基礎とした目に見える迷彩模様がある羽。これが今のお前の姿か、もう幼虫とは言えないな。


『カモフラーモスをテイム可能です。テイムしますか?

         yes/no            』


【カモフラーモス】、エンヴィー・モスではないんだな。まあ、名前なんてどうでもいいか。もちろんyesで、名前は、そうだな。紫色よりも緑色の印象が強いし、グリーンとモスから取って、


「【リィス】。で、どうだ?」

「シュウ!」


 どうやら気にいってくれた様だ、リィスは無理やり俺の腕に止まる。これは……物凄く邪魔だな、腕を前にすると視界に羽が被ってほぼ見えない。どこか別の場所に止まってもらって、うん? なんだ、あれは? いつの間にか部屋の中に紫色の結晶が一本生えている。ふむ、


「リィス、外への出方って分かるか」

「シュゥ?」


 あぁ、ダメっぽい。クエストのクリアも告げられないし、とりあえず触ってみるか。俺は結晶に手を沿える。すると、Congratulationの文字が視界に現れた。


「ここでクリアかよ」


 全く面倒なクエスト用意してくれたもんだよ。おっログにも出た、クエストの文字化けも消えてる。結局これはどんなクエストだったんだ?

 そう思ってログを見て固まる。新しく出たログの始めにこう書かれていたからだ。


『魔王クエスト【エンヴィー・モス・アストラルを従えよ】をクリアしました』


 これはあれだ、物凄く面倒そうなのに巻き込まれたっぽいぞ。どうしよう?

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