18『違和感』
遅刻しました。もういっその事18時更新に変えてしまおうかな?
「それじゃ発見したら魔法を空へ打ち上げるという事で」
「あい、分かった。それでは行くとしよう」
クチバさんはそう言って結成したパーティーを引き連れて出発した。あちらのパーティーメンバーは、リーダーのクチバさん、サブリーダーのバーズ、エゼルド、デギット、バエロ、アマンダ、ハンナにその従魔エージュの7人と1匹。
そしてこちらはリアンノ、ミーム、オード、マリーダ、そして俺と従魔達の5人と3体。このメンバーになった理由はバランス、と言いたい所だがちょっと違う。と言うのもハンナさんが俺とパーティーを組むの嫌がったのだ、それも相当なレベルで。俺個人としてはそこまで嫌われる事をした記憶は無いんだけどな。
そこからは簡単だ、好き嫌い合戦が始まり最も軋みの小さなメンバーが集められたと言った感じだ。しかし、俺は何処で彼女に会ってそこまで嫌われる事をしたんだろうか? 気になるな、聞いて答えてくれるものだろうか? ただ、なんとなく教えてくれない気がするのは何故だろうか?
さて、話を戻そう。俺達はミームのスキル【追跡】を頼りにラプターを探すチームだ。彼女によると小さな痕跡でも探すことは可能だが性能が相当弱くなるらしい。確実に追えるであろう物は大きな痕跡、特に足跡なら確実とのこと。そういうわけで地道に落ちている枝や葉っぱを掻き分けながら足跡を探索しているのだが、かれこれ1時間、未だ手がかりなし。
このままだとらちが明かないと言うことで更にパーティーを2つに分けて探し続けているのだが、今のところ成果は上がっていない。アーマードの名前からして身体は大きくなっている筈なのだ、当然その足跡も。だと言うのに、
「何で見つからないかなぁ?」
「探し方を間違えているのかもしれないですね」
少し離れたところで俺と同じように探しているオードが返事をした。オードは【大盾戦士】、2メートルを越える高く分厚い盾を軽々持って移動することが出来る程ステータスを持った男だ。防具ははゴツい全身甲冑、兜の形状から視界が悪そうかつ動きにくそう見えるが、ゲームの仕様かそれほど不便は無いらしい。そういうところはゲームだよなぁ、CWOって。
「具体的に何が間違っていると思う?」
「そうですね。……探す場所、見る位置、そんなところですかね?」
「まあそんなものだよなぁ。それじゃあ少し移動してみるか、リアンノ達はあっちだからこっちに行ってみよう」
「了解です。それじゃ僕が前に出ますね」
「頼んだよオード。スクエールも頼むな」
「ピィー!」
スクエールは元気に返事をしながら木の上に飛び上がっていく。いつもは食べるとき以外あまりやる気を出さないんだが、久しぶりに一緒に行動するからか、はたまた単なる気まぐれか今日は動きが速い。でも成果が出ないんだよなぁ。
ちなみにグレイスは鼻が使えないので探索から外している、今は足下で俺の影に潜んで特訓中だ。シロツキは別行動中の女性陣の護衛に行っているので、ここには居ない。それとさっき気が付いたのだが、いつの間にか従魔達が俺から離れられる距離が延びている様だ。居なくなった幼虫を探そうとした時は俺から数メートル位しか離れなかったのにな。クラスアップしたジョブのおかげか、それともスキルのおかげか、ともかくありがたい話だ。それにしても、
「見つからないなぁ」
「見つからないですねぇ」
場所を変え、見る位置も少し広げて探したが見つからない、スクエールも何かないかと旋回しているだけだ。ラプターの奴、森の中をどうやって移動してるんだ?
「あの、リーダー?」
「リーダーはやめてくれ、俺には似合わない。呼ぶときはジンでいい」
【指揮】と【鼓舞】のスキルを持っているという、ただそれだけの理由でこのパーティーのリーダーは俺になっている。もちろん、俺は従魔以外の誰かに、いや従魔にだって何かを強制するつもりはない。あくまでも全員の意見の総意を代表するだけ、という立場だ。反対意見があるなら前のめりの姿勢で聞くつもりだぞ、俺は。
「では、ジンさん。さっきから何か聞こえませんか?」
「えっ? 特に何かってのは聞こえないな。たまにリアンノの「みつかんな~い!!」──まあ、今のが聞こえる程度だけど」
というかあの子はもう少し静かに探せないのか? まあ、おかげでこうやって探索範囲を広げられているんだけどな。しかし、あんな大声上げてたらゴブリンが寄って来て──ん?
「なあオード」
「なんでしょう?」
「俺達がここに来てからゴブリンって見かけたか?」
「そういえば見ていませんね」
「だよな」
俺達が出発した時、村の周りはゴブリンで溢れていた、【アイン】の時だってそうだ。なのにここに来てから1時間程経つのに、ゴブリンの姿は愚か足跡らしきも見ていない。何故だ?
「それと、さっき何か聞こえるって言ってたよな。それってどんな音?」
「キーン、いやジーという感じの耳鳴りのような音です」
「聞こえる理由に心当たりは? 特にスキル関係で」
いくら耳を澄ませても俺にはそんな音は聞こえない。可能性としては元々オードの耳が良い、又は何かしらの身体の変調、もしくはVR機『CONNECT』の異常、そしてスキルの効果、そんなところだろう。この中で最も確認しやすいのがスキル、だから聞いた。そして返答は──
「それなら【感覚増強】のスキルですかね? 五感の感度を上げるスキルで『シールドバッシュ』のタイミングを計る為に取りました。常時スキルですから、オンオフは出来ませんけど」
ビンゴ。だが一応確認だ。
「五感って事は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5種類の事でいいのか?」
「はい。最初は色々違和感がありましたけどもう馴れました──ああ、なるほど。このスキルが音を拾ったと考えたのですね」
「そういう事だ。それでオード、その音の出所は分かるか?」
「ちょっと待って下さい。……何処からかは分かりませんが方角は分かります」
「それじゃ、案内を頼む」
「任せてください!」
急にやる気を出したな、あまり頼られるって事に慣れていないのか? まあ、やる気があるのは良いことだ。それにしても相談しながら動けるのは良いな、従魔達じゃこうはいかないからな。実質一人で決めて突き進んで行ってるだけだし、やっぱ会話の出来る仲間はいいな。セツナのように従魔達と話せるようになったら変わるのかな?
そんな探索には全く関係ない事を考えながら、オードに案内され森を進んでいると俺の耳にも耳鳴りのような音が聞こえ始めた。流石に方向までは分からない。一応、スクエールを下ろしておくか。それからしばらく警戒しながら進んでいると、
「恐らくあそこから音が出ていると思います」
オードが木の枝の1本を指差しそういった。ふむ、
「俺にはただの枝にしか見えない──ん? あれは確か、【分析】!」
【服従石】
『これを装備したものは意思を奪われ、石に登録された魔力の持ち主の奴隷に変わる』
スキルが進化したおかげか、それとも何か別の要因か名前が分かるようになっているが、あれはかつてラプター達の額に付けられていた石だ。それが枝の先に引っ掛かって、いや付いている? ならあの枝は──【判別】! あれ? 反応しない。いや、そんな筈は──だったら何度だって【判別】【判別】【判別】【判別】【判別】【判別】はん──来た!!
【イリュージョンオウルスコープ】rank:D
『魔法に秀でたミミズクの1種、特に【幻影魔法】が得意
幻を見せて油断させた上で音もなく忍び寄り獲物を狩る生粋のハンター
普段は身体を細くして枝等に【擬態】、更に【隠密】状態で獲物を待つ』
よっし! 正体判明。ミミズクか、確か尖った羽を耳のように生やしたフクロウの事だったか? いや、それよりもこいつの得意魔法だ。【幻影魔法】つまりコイツは何かを隠しているという事か? だがそれは自分の意思ではなく何者かに強制されている、と。だったら解放してやらないとな。
「オード、地上の守りは任せたぞ」
「何をするつもりか分かりませんが、守ることこそ私のジョブの役割。任せてください」
「頼りにしてるぞ。スクエール、目的はあの石の破壊もしくはミミズクの拘束だ。行け!」
「ピィー!!」
俺の肩に止まっていたスクエール勢いよく飛び出し、こちらに気付き身体を膨らませたミミズクに突撃していった。念のため、俺も新たなエレメントソード『アイスソード』を浮かせて追撃の準備は完了。その間に2羽は空高く飛んでいき姿が見えなくなっていた。ふむこれじゃ援護も出来ないな。よし、
「オード、俺は木の上に上がるから極力この辺にいてくれ。グレイスはオードの影に移ってくれ、オードの援護を頼んだぞ」
「信じて待っていた方が良いのでは?」
「念のためだよ、念のため。俺が見ていないうちに皆が強くなっているのは分かっている。でも、相手の実力は未知数。何が起こるか分からないからな。それじゃ行ってくる」
俺は気力を纏い跳び上がり、木の枝を跳び移りながら木の天辺へ向かう。【巨虫の森】が近いからか枝が太くてしっかりしてる、これなら踏んだ瞬間に折れるって事は無いだろう。
そして、簡単に安全を確認しながら天辺へ向かって俺が見たのは沢山のミミズクに囲まれたスクエールの姿だった。