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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
152/193

11『いざ、森へ』

 雑多屋を離れ門前広場へと移動すると既に何人かの冒険者が集まっていた。いや、違うな。ここにいるのは極一部、大半はもう解放された南門の外にいるようだ。まだ時間はある筈だが、みんなやる気に満ちているな。──ってそんな訳無いよな。俺達プレイヤーの中にはこれもイベント扱いしている人もいるみたいだが、ノルン達にとっては死活問題。皆必死なだけ、俺はすぐにその考えに至らない。まだ何処かで他人事だと思っている証拠、しっかりしろ俺!


「シャッ! よし、行こうみんな」


 自分の両頬を思いっきり叩き気合いを入れ直す。ちょっとダメージが入ったけど、気付けならこんなもんだろ。従魔達を連れ門を出る。そこには大型の馬車とそれに乗り込もうとする者達が集まっていた。ふむ、俺達はどれに乗り込めば、おや? なんだかあの馬車だけえらく頑丈そう、それに前にいるのは【トライホーンシールド】? いや、微妙に違う。あれはなんだ?


【チャージトライホーン】rank:D+

『トライホーン種の中でも突撃を得意とする種

 3本の角が前方へ向かせる事で貫通力を増加させる事が出来る』


 トライホーンシールドは守りを得意としていた筈だからその突撃版か。でもrankはこっちの方が上なんだな。いや、それよりも、だ。


「あなたが何故そこにいるのですか? 奴隷商人じゃなかったんですか?」

「もちろん商売ですよ。名目は運送ですね、奴隷だけでは食べていけませんので」


 高めの御者台にいるのは異様に印象に残っている女性、エマさんだ。ゴブリンに襲撃された時に馬車の中に隠れていた女性だ。ただ、彼女は間違いなく強者。何か考えがあってゴブリンの巣に向かっていたと思われるが、結局俺には分からなかった。だが、今それはいい。少なくとも心配する必要が無い人なのは間違いないからな。それよりも、


「このトライホーンはホランが進化したんですか?」


 ホランは洗脳状態で相対する事になった【トライホーンシールド】だ。エマさんが祖父から受け継いだ従魔で、今から向かう村から脱出する時に世話になったのだが姿が見えない。違うと思うのだが一応確認してみると、


「いいえ。この子は『ギゴン』、ホランとは違う子ですよ」


 やはり別個体か、そんな気はしたんだよな。あれ?


「ではホランは何処に? ファームには居なかったと思うのですが」

「ホランならここに」


 そういって御者台から降りてきたエマさんは胸元からペンダントを持ち上げこちらに見せてきた。えっと?


「そこにホランが?」

「はい。これは『リザーヴジュエル』と言いまして、従魔や使い魔と言った生きた所有物をしまっておける魔道具です。1つにつき1体、高級な物なら2,3体まで登録した子をしまう事が出来るんです」

「へえ」


 ペンダントの大きさはペットボトルの蓋位、こんな小さな物にあんな巨体が納まるのか。アイテムボックスの生き物版って所か?


「この中に入ってる時の扱いはパーティ枠ですか?」

「いえ、この中にいるかぎりは控えです。便利ですよ、例えばホランやギゴンの様な大型の子を連れて歩けない狭い場所を進む時や、傷付き動けなくなった時等にこの中に入れるんです。ついでに言うと私のイヤリングの片方はギゴンの、そしてもう1つは……こちらは機会があれば紹介しますね」


 エマさんは髪で隠れた耳元を見せそう言った。少なくとも後一体従魔を連れていると言うわけだ、もう一体もトライホーン種なのかな? 教えてくれそうにないので、その機会とやらを待つとしよう。そういえば、


「そのイヤリングは前に会った時は付けてなかったと思うのですが」

「これは父が持っていたのです。残念ながら使う余裕も無かった様ですが」

「怪我をしたんだっけ。結局お父さんはどうなったんですか? 生きてはいるんですよね?」

「父なら今は家にいます。ポーションや魔法での治療はしましたし怪我の方は大きな問題は無いのですが、少々体調を崩しまして。流石の魔法も病気は治せませんから」

「そうでしたか」


 病気か、それはしょうがないね。話に聞いただけで顔はおろか名前も知らないが、治る事を願っておこう。後は聞いておきたい事は、リザーヴジュエルの値段だな。


「ところで話は変わりますが、そのリザーヴジュエルはどれくらいで売ってる物ですかね?」

「こちらですか? これなら市場で平均1つ百万zl位ですね。複数個体を同時に登録する物なら三百万、と言ったところでしょうか」

「そ、そうですか」


 百万、か。イベント前なら余裕だったんだが、あの後色々買ったからなぁ。買えない事はないんだよ、ただ今後ちょっと苦しくなるかなぁ、と。……もうちょっと余裕が出来たら買おう、そうしよう。うん。


「情報ありがとうございました。それじゃ、そろそろ俺達は行きます」

「あら、私達の馬車には乗ってくれないのですか? 今なら荷台にも余裕がありますから好きな所でくつろげますよ。それに従魔を連れている方は従魔の数だけ場所を取りますので、今から乗る馬車を決めるのは難しいと思いますし」

「あ~、それがあったな」


 従魔は個体によっては大きくスペースをとってしまう。今連れているメンバーならシロツキとストレインは俺が抱えればいける、グレイスもスキルを使いこなせればなんとかなるだろう。だが、エピタスはそれなりに必要だ。何せデカイし重いからな。【サナン】に行くときも全員ゲージに入れた上で馬車の後方の出っぱり部分の荷台に乗せて移動したし。

 でもなぁ、このギゴンとか言うトライホーンを見てると不安なんだよなぁ。ぶっちゃけ、嫌な予感がするんだよ。あれかな? やっぱりチャージ、突撃って言うのが不安なのかな? だが、エマさんの馬車以外は既に結構な人数が乗り込んでしまっている。これから従魔達と一緒に乗る馬車を探すってのは中々難しいのかもしれないな。どうするか?


「ちなみに私達の馬車は従魔を連れている人専用になってますよ。何せ大きいですからね」

「それならそうと始めに言って下さいよ! 悩む意味が無いじゃないですか」

「ウフフ、ちょっとしたお茶目ですよ。出入り口は後ろにあります、鍵は開いているので乗り込むならご自由にどうぞ」

「……はぁ~。それじゃ乗らせてもらいますよ」


 なんとも無駄な時間を過ごしたが、とりあえず馬車に乗り込んだ。前の馬車、確か竜車とか言ったか? あれとは違い扉も壁も金属で出来ている。と思ったが内側は木製だった。と言うかこれ前に乗った竜車と一緒じゃないかな? どうやら扉を金属製に変えて、壁に装甲は貼り付けているだけのようだ。メッキの竜車と言うことか。

 前と違うのは鉄格子だった部分が塞がれ、御者台行く為の穴から入る光だけが竜車内を照らしている事だろうか。全体的に暗いせいか広い筈なのに酷い圧迫感を感じる、あまり長く居たいと思う場所ではないな。既に従魔達と乗り込んだ人が居たが、どうにも話し掛けられる雰囲気じゃない。とりあえず適当に人が少ない角の方へ陣取り、寛ぎながら所持品とステータスを確認していると少しずつ人が増えていった。


「あっ、ジンさん」

「えっ? 何処?」

「ほら、あっち」

「あっ、ホントだ」


 その中にはユキムラ君とアンク君も居た。ユキムラ君は俺を見つけると駆け寄って来たので、右手を軽く上げて挨拶をする。


「やあ、2人も来たんだね」

「ええ、もちろんです。【アイン】に住んでいる人には色々お世話になってますから、参加しないって選択肢はありませんよ。あっ隣良いですか?」

「ああ、かまわないよ」

「ありがとうございます」


 ユキムラ君はそう言いながらゲンジロウとノブシゲと共に俺の左側へ座り、アンク君もその隣に座る。アンク君の従魔なら竜車じゃ無くても行けたと思うが、ユキムラ君と一緒にいる事を優先したのかな?


「あの、ジンさん。1つ聞いていいですか?」

「構わないけど、何か気になったのか?」

「なんでこんな暗い所に陣取ってるんですか? もっと明るい所でも良かったんじゃ」

「ああ、それか。理由は簡単、グレイスの特訓だ」

「グレイスの特訓?」

「そういえばグレイスが居ませんね、何処に居るんですか?」

「影の中」

「「えっ?」」


 そうグレイスはここには居ない。どうにも出発まで時間がかかりそうだったからな、しっかりスキルが使えるようになる為の特訓中だ。もちろんグレイスだけではない。シロツキは俺と一緒に魔力武器の性能アップの為に魔具を生成しているし、エピタスは鋭くなった甲羅を少しでも早く展開するために何度も甲羅の隙間を動かしている。残念ながらストレインの【加速】はこんな狭い場所では出来ない為、俺の肩の上で休んでいるが。あっそうだ。


「ユキムラ君、はいこれ」

「あっ、苗!」


 取り出したのはさっき所持品を確認している時に見つけて思い出した【快樹の苗】、イベントから持ち帰ったユキムラ君からの預かり物だ。渡すタイミングをどうしようかと思ったが、覚えている内に渡しておかないときっと俺はまた忘れるからな。今後も思い出したら、覚えている内に終わらせてしまおう。


「ありがとうございます、助かりました」

「気にしなくていいよ。どうせあっても俺には必要ない物だし」

「あはは、まあ僕も植えるところが無いので暫くはボックスの肥やしですね。ですが、いつか必ずこれを植える土地を手に入れて見せます!」

「おう、頑張ってな。俺にも協力出来る事があったら言ってくれ、金銭の貸し借り以外になら協力するよ。折角持ち帰ったんだ、どんな風に育つのか見てみたいしな」

「ありがとうございます!」

「もちろん俺も手伝うぞ。なんせパーティだからな」

「あれ? アンク君はイアン達とパーティを組んでたんじゃないのか?」

「イアンさんのパーティは抜けたんですよ。あっ、別に喧嘩別れとかじゃないですよ。ただ、やっぱり同世代の方が話が通じるって言うか」

「あ~、ジェネレーションギャップ的な奴か?」

「そんな感じです」


 そうだったのか。まあ、イアンのパーティはバランスがとれているし、アンク君が抜けてもまだなんとかなる、のか? こうしてアンク君が抜けている訳だから、なんとかなっているんだろう。しかし、そんなイアン達って年上だったかなぁ?


「それでは皆様、これより発車いたします。少々揺れますから、しっかり体を固定してくださいね。固定できない方は──頑張ってください」


 突然エマさんの声が響き渡り発車する事を告げた。だが、頑張れって何!? そんな揺れるのか今回は!? そんな俺の疑問を他所に竜車が揺れて動き出す。目的地は前線基地になっている村、俺達は無事辿り着けるんだろうか? 物凄く不安だ。

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