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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
146/193

05『ココ救出戦~前編~』

 傷ついた体で必死に走るガガを抜き去りファームを駆ける。シロツキにはガガの治療はゆっくりするように伝えてある、多少はガガがゴブリンに突撃するまでの時間稼ぎが出来る筈だ。厩舎が壊されてそれほど時間は経っていない。それにあの巨体だ、すぐに追い付く。そう思っていた。実際ココと思しき白馬を肩に担いだゴブリンコマンダーはすぐ見付かった。ただ、その周囲に群がるゴブリン(雑魚)が多すぎて邪魔だ。俺はエピタスを降ろし鞭を構える。


『グギャギャギャ!』

「邪魔だ! 雑魚は引っ込んでろ!」


 俺に気付き棍棒を振りかざして向かってくるゴブリンの大群へと鞭を振るう、もちろん魔力は纏ってあるのでゴブリンの首は棍棒と一緒に一刀両断だ。ただ、ひしめくゴブリンの一部を削っただけであまり減らした気はしない。なら次だ。


「エレメンタルソード展開! セミオート設定『接近する敵を攻撃』」


 4本の剣を1本ずつ後方と左右に扇状にそれぞれ配置し、俺自身は右手に鞭を左手に剣を装備しゴブリンの群れに突撃する。やることは簡単、ゴブリンの群れの中に突入、やって来るゴブリンをエレメンタルソードとレッサーミスリルソードで斬り捨てる。更に、それを見てこちらに来るのを躊躇し動きを止めたゴブリンを鞭で無理矢理引き寄せ斬る。そうやって少しずつふんぞり返っているコマンダーと距離を詰めていく。

 そして、エレメンタルソードをくぐり抜けて来たゴブリンはストレインが注意を引き、エピタスが魔法を使い足止め。そこをエレメンタルソードか俺自身で斬り捨てる、実に単純だ。


 グレイスは大きくなった眷族と分身を率いてゴブリンので群れの中を無双中だ。見分け方はグレイスが一番大きく艶のある黒い体毛をしていて二頭の分身は少し小さく漆黒の体毛、そして一番小さく灰色の体毛が眷族だ。

 そんなグレイス達の戦い方は実に豪快だ。ゴブリン達を頭上から爪と牙で強襲して押し倒す。そしてそのまま喉を食い千切る。された方はたまったもんじゃないな、味方で良かったよ。いやホントに。


「そこの冒険者、前に出過ぎだ! 囲まれる前にこちらと合流しろ!」


 突然背後から投げかけられた声、攻撃しながら横目に見ると数人の騎士が少し離れた所でゴブリンと戦闘中だった。いつのまにか救援に向かうよう言われた騎士達を追い越していたようだ。だが、すまない。今は騎士達と行動するより1秒でも早くココを救出するのが優先だ。


「悪い! 後ろの傷だらけの黒い馬が追い付く前にあそこで担がれている白い馬を助けないといけないんだ! 合流はそれが済んだらするよ! ゴブリン共は適当に蹴散らすから適当によろしく!」

「あっ、おい!」


 騎士は俺に何か言おうとしたが、群がってくるゴブリンに対応する為に口を閉じた。見た感じ十分対応出来ているみたいだし、放っておいても問題なく対処出来るだろう。と、言うことで俺は騎士達を背に先に進む。しかし、数が多い。少々防御が薄くなるが新技を試すか。


「エレメンタルソード『集結』『補充』」


 防御に展開させていたエレメンタルソードを1ヶ所に集め、減っていた耐久値を回復。


「『固定』」


 次はエレメンタルソードの柄をくっつけて十字型にして、


「『回転(ロール)』! くらえ! 【サークルスラッシュ・ブーメラン】!」


 回転させて投擲する、これぞ新技【サークルスラッシュ・ブーメラン】。投擲すると言っても【魔力制御】で操作出来るからマニュアルの時と使い心地は変わらない。だが、セミオートによる回転のおかげで動かすだけで攻撃になる中々便利な技だ。その分消費MPは倍だがな。

 本当はイベントで戦ったレイドボスのような大型の相手を想定して作った技だが、雑魚戦の方が有効そうだな。実際、簡単にゴブリンの体がバラバラになっていく様子を見たらそう思えてきた。とりあえず近くに居たゴブリンを倒したので手元に戻そうとしたら、エレメンタルソードが消滅してしまった。耐久値が尽きてしまったようだ。

 う~ん、攻撃回数が増えたせいか、耐久値をフル回復しても消えるまでが早いな。でも耐久値を増やそうとすると威力が下がるし、暫くは攻撃時間を調整してなんとかしよう。予備展開、と。


 さて、周囲に残ったのはゴブリンの屍の山と、その外からこちらの様子を伺っているゴブリン達。俺の新技を警戒したらしく、予備を展開したら死体から内側に入ってこない。なら、コマンダーへの道を斬り開きに行きますか!

 俺はコマンダーの方向にいるゴブリンを鞭で捕縛、それを振り回しながら前進を開始する。少し前に回転を傾ける事で正面にいるゴブリンは当たって弾かれるか、下がって仲間に踏み潰されるかの2択を選ばされている。ただ、この方法だと背後がガラ空きになる。実際、ゴブリンの中にはエレメンタルソードの自動防衛をくぐり抜け俺に迫る者が多数現れた。ストレインもカバーに入ってくれているが、全てを捌けてはいない。エピタスは既に魔法の射程範囲から外れてしまったのか援護が来ない。LPは減っていないから群れから離れてはいるのだろうが、これは少々まずいかな? その時、


「キュー!!」


 シロツキの声が突然響いた、振り返ればシロツキが必死にガガと並走している。なんてこった、ガガが追いついてしまったぞ。シロツキにはゆっくり回復するように指示してあったのだが、雑魚共(ゴブリン)の討伐に時間をかけすぎたか。仕方ない、作戦変更だ。俺は振り回していたゴブリンをコマンダーへと投げつけ、エレメンタルソードとレッサーミスリルソードを振り回しながら声を張り上げ走る。


「全員ガガの近くに集まれ! ガガに指一本触れさせるな!!」

「ワン!」「ピィ!」「クォ!」「キュ、キュー!!」


 真っ先にガガの元に駆けつけたのはストレイン。ゴブリンの足下を【硬質化】した翼で叩き、倒れた所をガガが踏み潰している。次はエピタス、ってアイツは何をやっているんだ? あれは……チッ、邪魔だゴブリン! 思考がまとまらないだろうが! え~と、そう! 滑り台だ! 地面を傾けた状態で出現させた『ストーンウォール』の上に泥を流してそこをエピタスが滑って移動して──あっ、そのままゴブリン達に突撃した。なるほど、移動兼攻撃か。エピタスも中々考えたじゃないか。

 そこにグレイス達が合流し蹂躙が始まる、流石の死体の数にガガも走るの止めた。そしてシロツキが呼吸を乱しながら到着、したと同時に近くのゴブリンに襲いかかる。いや少し休めよ、せめて呼吸を整えろ! なんであんな好戦的なんだ? ウサギなのに。

 ここでようやく俺が合流する。指示した人間が一番最後ってのは結構かっこ悪いな、でもしょうがないよな俺人間だし。人間繋がりで騎士達の様子を説明すると他の騎士と冒険者に合流したようで判別がつかない、お揃いの装備で戦うのは統一感があってかっこいいけど、個人を認識できないのは問題だな。さて、ここからどうする?


 近くでガガを見てみると血が固まりかけていて傷口も塞がっているように見える。が、注視してみると未だ血は流れていた。シロツキの【治癒魔法】もLPを回復する事は出来ても傷を塞ぐのは無理か。必要なのはレベルかはたまた上位の魔法か、それともNPC(ノルン)異人(プレイヤー)で仕様が違うのか、誰かに話を聞く必要があるか。とりあえずこれ以上傷を増やさない様にしないと。ココを助ける事が出来てもガガが死んでは意味がないからな。



「ピィー!?」

「どうした!?」

「ピッピッピィィィ!!」


 コマンダーへと走るガガをどうにか守りながらゴブリンを倒していると、ストレインが騒ぎだした。相当慌てている様子なのだが、俺には何を訴えているのか分からない。だが、グレイス達は違った。ストレインの声を聞いた直後にガガの周りに集まりその足を止めた。


「クォォォォォォォオ!!」

「エピタス、一体何、をっ!?」


 更にエピタスが俺達の前方に地面から巨大な壁を作り出し完全に視界を塞いだ。一体何が起こるんだ? そう思った直後、壁の一部が崩れ足下に矢が何本も刺さる。そして穴の向こうに魔法の光が見えた。


「チッ、そういうことか!」


 俺は失敗を悟った。どうやらゴブリン共は俺達が1ヶ所に固まったのを見て遠距離攻撃にシフトしたようだ。ゴブリンの癖に中々賢いじゃないか、指示したのはコマンダーか? いや今はそれよりこの状況をどうにかしないと。俺はエレメンタルソードを仕舞ってエレメンタルシールドを展開、壁に開いた穴を塞ぐように配置する。だが、新しい穴が直ぐに開いて盾が足りない、エピタスに新しい壁を──


「ヒヒーーン!?」

「ガガ!?」


 背後で何かが倒れる音とガガの悲鳴が響いた、振り返ればガガが首に大きな傷を負って倒れている。ガガの後ろはグレイスの分身と眷族が守っていた筈なのに、今度は何が? そう思った直後、


「キュゥゥゥゥウ!!」

「ギャバ!?」

『ウォン!!』


 シロツキが何かを攻撃し、悲鳴を上げたそれにグレイスの分身達が群がった。そこに居たのは赤い三角帽を被ったゴブリン、俗に言うレッドキャップか?


【ゴブリンアサシン】対応rank:C-

『ゴブリンの中で隠密に秀でた個体の1種

 特に優秀な個体は赤い布を体の何処かに身に付ける習慣がある

 奇襲と暗殺を得意とし、毒等の状態異常を起こさせる個体もいる』


 マジか!? このタイミングでこんな奴が来るのか! いや待て毒だと? ガガの傷跡を確認すると少し青くなっている様に見える。不味い、ただでさえ弱ってるのにこれは非常に不味い。いままで毒なんてなったことはないから状態異常を回復するアイテムの事は完全に抜け落ちていて持ってないぞ。どうするどうする!?


「ゴフォッ」


 テンパっていたらガガが血を吐き出し、そのあとからは泡が溢れてきている。やッべぇって!? ハッ、そうだ! さっきいた騎士達なら毒を回復するアイテムを常備してるかも──ってダメだ! ついさっき勝手にやると言ったばかりじゃないか! 流石にそれは情けないし図々しい。でも、背に腹は変えられないし、もうどうすりゃ良いんだ!!


「グウォォォォォォォォォ!!」

「今度はなんだ!? こっちはもういっぱいいっぱ──はあ?」


 何かの声に振り返ると、そこには巨大なライオンが立っていた。いや、ライオンじゃない。頭と胴体はライオンだがタテガミの後ろにヤギの頭が、背中の中央辺りからは翼が、そして尻尾の代わりに巨大なヘビが生えている。これは俗に言う合成獣、キメラと呼ばれている有名なモンスターではないか? 翼は無かった気がするけど。いや今はそんな事はいいんだよ! 問題はこれが敵か味方かって事で──うん? 誰かが乗ってる?


「ジンさん!」

「ケインさん!?」


 折り畳まれた翼の内側、ヤギの首に掴まったケインさんが降りてきてこちらに走ってくる。


「どうしてここに、それにケガは!? 俺のポーションじゃ傷は──」

「あ、あの後すぐに手があいた冒険者が救援来てくれて傷はその人達から貰ったハイポーションでなんとか、それよりガガは!?」

「……すいません。アサシンに襲われて毒を受けてしまって──」

「ガガ!!」


 ケインさんは毒と聞くと、すぐにガガの元へと走って行ってしまった。俺もすぐに後を追い頭を下げる。


「すいません! こんな事になってしまって、本当にごめんなさい!!」

「……顔を上げてくださいジンさん」


 ケインさんはそう言うが今の俺にはケインさんにあわせる顔がない。だから頭を下げ続けていたら、ケインさんが言葉を続けた。


「元はと言えば僕が悪いんです。ガガの意思は分かっていたのに、戦う事を、力を持つ事を、使う事を恐れた僕が。でも、ガガのLPがジワジワ削れていくのを見てあの時の、大切な仲間を、家族を失った時を思い出しました。もうあんな思いをしたくない、だから僕はここに来ました。僕の罪の象徴である、あの子を連れて」


 俺がゆっくりと顔を上げるとケインさんは俺の後ろ、キメラを見ていた。罪の象徴……まさか、そういう事なのか?


「ガガ」


 ケインさんがガガに話しかけるとガガの体をに絡まった赤と黄色の鎖が現れた。一体何を?


「今、君にかけた全ての制限を解除する。君が望んだ力だ、どうかその力で家族を救ってくれ『キャンセレイション オブ リストリクシャン』!!」


 ケインさんの指輪から光が溢れガガの体に現れた鎖が弾ける。そして、ガガの体が輝きだした。進化が始まった。そう思った瞬間光が消え、代わりに現れた赤い結晶がガガの体を飲み込んだ。


「一体何が起こって?」

「ガガ。それが君の選んだ形なんだね」


 赤い結晶は何度も形を変え、最後はネイと同じ形になって砕けた。直後、巨大な嘶きが響き新しい姿になったガガが姿を見せた。【判別】結果はUnknown? だと。一体何に進化したんだ?

今回の進化の説明は次回になります

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