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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第4章 アイン防衛戦
143/193

02『急報』

「ソイツはペペンだよ」

「ペペン? それがアイツの名前ですか?」


 翌日、大量の魚の買い付けに成功し全てアイテムボックスにしまった後、あのペンギンについて聞いてみた。アイツの名前はペペンと言うらしい、俺は卸業者のおっちゃんに更に詳しく聞いてみる。


「ペペンはこの辺りを根城にしているはぐれペンギンだよ。確か種族は【アイフィーペンギン】、氷を自在に使いこなせるとかで気に入った獲物を見付けると冷凍してお腹のポケットに入れちまうそうだ。後は……そう! 見所がある相手を見付けた場合はを贈り物をするとかって言ってたな」

「言ってた、って誰がですか?」

「そりゃ【鑑定士】だよ。あの人達は道具から魔物まで何でも調べてくれるからね、たまに知らない魚なんかを見付けたら呼ぶんだよ。ほら、あっちの壁に貼ってある魚拓の下に説明があるだろ? あれ全部【鑑定士】が書いてくれたんだ。おかげでここで仕事してる奴は皆この辺の魚には詳しいのさ」


 指差した壁には確かに黒い魚の後があり、その下にはその魚の名前と特徴、美味しい食べ方なんかも書いてあった。なるほど、これは便利だ。まあ、今の俺では活かせそうにないけど。

 それよりも気になったのは贈り物の方だ。まさかこの魚卵が贈り物なのか? とりあえず聞いてみよう。


「ペペンと戦った後に魚卵(こんな物)が入ってたんですけど、何か分かりますか?」

「う~ん? こりゃまたデッカイ卵だな。これがなんの魚の卵か知りたい、と?」

「はい」

「流石にこれだけでなんの魚かは分からんなぁ」

「そうですか」


 ダメか。【分析】しても【識別】しても卵としか分からなかったからNPC(ノルン)の情報に頼りたかったんだが、孵してからのお楽しみか~。

 ノルンの情報とは何か? 実はスキルの結果より詳しい事を知っているノルンが結構いるんだ。特に専門職についているノルンにその傾向が高い。しかも分野によってその方向性が異なっている。例えば薬草関係でも(ポーション)関係なら【調合師】、栽培関係なら【栽培師】と言った所だ。まあ、簡単に言えばヘルプより人に聞けって事だ。ジョブもスキルもね。


「それでこの卵をアンタはどうするんだい?」

「孵そうかなって思ってます。それで必要な物を探してるんですけど、水槽ってありますか?」


 魚卵を孵化させるにはいままでと違い少々準備が必要だ。まずは水槽、それもそれなり大きな水槽が必要だ。卵の大きさからそれなりにデカイのが生まれそうだからな、場所はとるが仕方ない。

 次が海水、この時点で海に棲む魚だと言う事はほぼ確定だろう。後は隠れ家になる岩場と海草を少々、それと一日一回海水を変える必要があるらしいが、流石に一週間もこの街にいる予定はない。海水の交換の為に転移門を何度も使ったらまた貧乏になること間違いなし、なので海水を洗浄する何かを用意。あとは1週間程マイルームに置いておけば孵るそうだ。


 ゴウカとケンランの時は魚卵ではなく普通の卵だった事を考えると、魚であっても魔物なら楕円形の卵になると言う事なのだろう。つまりこの卵からは普通の、いや大きな魚が生まれると言う事かな? まあ、生まれるまで分からんが。


「水槽かぁ、水槽はないな。うちは生け簀だからなぁ、でもそれ以外の物ならあった筈。ただ、中古品になるけどそれでも良いなら融通してやるよ」

「それでも構いません。お願い出来ますか?」

「おうともよ。そんじゃちょっと待っててくれ、すぐ持ってくるから」


 そういっておっちゃんは部屋の奥に向かった。水槽が無かったのは残念だがそれ以外は揃いそうだし、とりあえずは乾燥しないようにして桶の中で我慢してもらおう。

 暫くしておっちゃんが大きな箱を持って戻ってきた。中を確認すると細々とした物までしっかり入ってる、おっ! 中々便利そうなアイテムまであるじゃないか。やっぱり専門の職場は良いもん揃えてるな、遠慮なく貰ってしまおう。俺が箱から転送リングでアイテムボックスに詰め替えている、その時だった。


「み、見つけたぁ!」

「うん?」


 突然背後から声が響く、俺とおっちゃんは反射的に建物の入り口を見た。そこには汗だくで疲れた様子の男性が俺達の方を見て立っていた。あれは……冒険者ギルドの制服、一体何を見つけたのだろうか? とりあえず声をかけて見るか。


「えっと、どちらさん?」

「はあ、はあ、さ、サナン冒険者ギルドの者です。い、異人冒険者のジン、さんですよね?」

「ええ、そうですけど。えと、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫、です。これくらい」

「そうですか? それで俺に何か用事でも?」

「少し待ってください、息を整えますので。はー、ふー。オホン! ジンさん、あなたに正確には王国内の異人冒険者に『緊急指名依頼』が来ています。今すぐ冒険者ギルドに向かって下さい。詳細はギルドマスター直々にお話しします」


 緊急指名依頼? なんだそれ? しかも異人、プレイヤー全員に? まさかまた何かのイベントか? いやそれなら運営から何かしらの情報が公式サイトに上がる筈。と、なるとノルンサイドで何かあったという事か? とりあえずギルドに向かうか。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「俺がここ、サナン冒険者ギルドのギルドマスター『ディーデル』だ」

「ジンです」

「早速本題に入る。よく聞いてくれ」


 俺は少し休むとその場で座り込んでしまったギルド職員に促され直ぐに冒険者ギルドに向かった。受付に名前を告げギルドカードを見せると直ぐにギルドマスターの執務室に通された。そこで待っていたのがこの男ディーデルさん。よく日焼けした筋肉室の体を惜し気もなく見せ付ける半裸の男、少なくともギルドマスターなんて仕事に就いている様には見えない。「漁師です」と言われた方がまだしっくり来る。そんなディーデルさんはそのまま言葉を続ける。


「今朝報せが届いた、内容は【アインへの救援】だ。問題が発生したのは3日前の夕方、アインの南方の森より大量のゴブリンが出現、これの迎撃を開始した」

「な!?」


 ゴブリンの大量発生!? またあの時のような戦いが? でも【アイン】には沢山の冒険者がいる。モヒカンヘッドのランディみたいな強い冒険者もいるのに救援要請が来ると言うことは、


「あの時よりも大量のゴブリンが?」

「その様子だと何か知っているようだな」

「ええ、まだ【アイン】に居た頃に少し首を突っ込みまして」

「それなら知っているだろうが、元々ゴブリンが群れで襲ってくるのはそう珍しい事ではない。が、今回は明らかに異常だ。報せによれば街を取り囲むほどの数が押し寄せて来ているそうだ、それも途切れる事なく森の中から現れ続けるともあった」

「そんなに大量に?」


 アインの街の全容を俺はまだ知らない。だけど小さな街ではなかった筈だ。それを取り囲む数、一体何が起きたんだ?


「普通ならありえない事だ。考えられるのは2つ、多産の魔物、あるいは動物を大量確保した。もしくは【ゴブリンキング】と【ゴブリンクイーン】が誕生したかだ」

「キングにクイーン」

「キングには同種族への能力を上げる力がある。これがまた厄介でな、はっきり言って力を上げるだけなら新人でも数が揃えばなんとかなる。だがキングは繁殖能力の底上げまでしてしまう。簡単に言ってしまえば底無しになるんだ、更に妊娠期間も短縮してな」

「妊娠期間の短縮?」

「母体の容態なんて無視して成長するんだ。最短で3日で生まれる、ただのノルンなら一回出産するだけで干からびて死ぬ、最悪の力だ」


 ゴブリンキング、数を増やすと言う面では確かに最悪だ。拐われた時点で諦めるしかないじゃないか。


「そこにクイーンが加われば更に倍だ。【ゴブリンクイーン】と呼ばれちゃいるが、あれはどちらかと言えば蟻や蜂に近い。大量の子宮を持ち1日で同時に30体以上産む。そこにキングの能力が加算されれば1日で100体以上産む最悪の大量生産生物へと変わる。最悪の事態だ」

「30体以上産む時点でそうではないですか?」

「ゴブリン30体程度なら所詮数だけ揃えたゴブリンだ、それほど驚異ではない。それ以上の数をぶつければ良いだけだからな。問題は奴がキングの能力で強化されると他の生物の雄を食べるだけでその生物の特徴を受け継いだゴブリンを産める様にはなっちまうって事だ」


 食べるだけで子供を産める? おいおい、それはつまり男も拐われるって事か!?


「お前さんの想像通り、いや、それ以上だろうな。奴は新鮮なら死体でも関係ないからな、おかげで遺品も遺体もほぼ残らん。正に最悪だ」

「そんなのどうするんですか? 俺達は死んだら生き返れますけどそんなのと戦えると思いませんが」

「お前達に求めているのは防衛力だ。キング、クイーン討伐にはrankB以上の冒険者で当たる事になるだろう、そうなれば【アイン】の防衛力は一気に落ちる。その不足分をお前達で補いたいのさ。死んでも生き返る戦力、防衛にはもってこいだろ?」


 確かにそうなのだが、なんか今イラッとした。いかんな、デビルキッドと戦ってから怒りやすくなった気がする。落ち着け、怒っても面倒はあっても良いことはない。そう、冷静に冷静に。


「ふう。……それで俺はどうすれば良いんですか?」

「この街に転移門はない。だがギルドの地下には転移出来る魔法陣が存在する、緊急時のみ使用出来る、な。今回はそれを使う。出来れば今すぐにも行ってもらいたいんだが、この街に用事は残ってるか? あるなら少しだけなら待つ事が出来るが」

「用事?……それなら大きな水槽を売っている場所ってありますかね? これの孵化に必要なんですけど」

「ほう、こりゃまたデカイ卵だな。これを飼う為の水槽か、それならギルド経由でお前に渡る様に手配しよう。その分少々金がかかっちまうが、問題はあるか?」

「いえ、大丈夫です」

「ならばもうこの街に急ぎの用事はないな? それじゃ転移陣に案内する。ついてきてくれ」


 そう言うとディーデルさんは執務室の扉へ歩いていった。俺は言われた通りについて行く。そうだ、セツナに連絡しておこう。救援を要請する事態になってるんだ、戦力は少しでも多い方が良いだろう。

【アイン】に住むノルンの皆は大丈夫だろうか? 余裕があったら探してみよう。

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