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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第3章 星の降る島
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51『紅い閃光』

「本当にここで良いんですか?」


 エドガー達を炎に包んだ俺達は、親亀の足が遠目に確認できる距離までやって来た。同時にエンクさんともお別れの時がきた。彼女は走行中に見えた大きな岩の側に降りる事を望んだのでサークにそこで下ろすように指示した。


「はい、高さも距離も申し分ないので問題ありません」


 本人が言うのだから砲撃するにはいいのだろうが、どうしてそんな柱みたいな岩を選ぶかな? 見た感じ足をかけるでっぱりみたいな物が見えないんだけど、本当に大丈夫だろうか?


「本人が良いって言ってるんだ、俺達が気にする事じゃない。そうだろ?」

「そりゃそうだけど、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です。帝国だとこれくらいの地形が当たり前なのでなんの問題はありません」


 そう言ってエンクさんが取り出したのは崖を登る為の道具の数々、帝国ってのは大変な場所なんだなぁ。まあそういうことなら大丈夫か。


「それじゃ俺達はこれで」

「頑張って下さい、陰ながら応援していますね」

「だったら砲撃するなよ」

「それは無理なご相談です、私は撃つためにここにいるんですから。それでは!」


 エンクさんは早速岩に杭のような物を突き刺しそれを足場に登り始めた、本当に大丈夫なんだと確信を持てたのでサークを再度走らせた。目指す場所は見えている、後はそこに辿り着くだけだ。


「サーク! エンクさんに負けないように全力で頼む!」

「ギィィィィィィ!!」


 サークは親亀を横目に木を蹴散らしながら森を突き進む。それにしても、


「通った跡が酷い事になってるな」

「ああ、雨が降ったら池が大量に出来そうだ」


 山のような体を支える為に親亀の足も当然デカイ。体重も相当なのだろう、その足跡は木を押し潰し地面に大穴を空けている。遠目には正確な深さまでは分からないが、もしかしたら今のサークの大きさよりも深いかもしれない。近付かない様にはしよう。


 そんな事を考えている間に親亀の頭が完全に見える様にはなってきた。シルエットの時は分からなかったが、大分明るくなってきたから分かる。間違いなく海から顔を出していたアイツだ。


「オーイ!」

「こっち向けー!」

「ギィィィィィィ!!」

「クオォォォォォ!!」


 声が出せないネイを除いたメンバーで親亀を呼んでみる。流石にあの巨体の前に出ると言うのは危険過ぎると思ったからだ。しかし、親亀はこちらを向かない。音量が足らないのか、それとも視界に子亀を入れないと止まらないのか分からないが今の方法ではダメらしい。


「サーク、危険だけど親亀の前まで行ってくれるか?」

「ギィィィィ」

「出来るなら頼む」

「ギィ」


 サークが更にスピードを上げる。とりあえずこれで追い付けるとは思うのだが、問題はどうやってこちらを見させるか、だ。頭の位置が高すぎるんだよね親亀、まるで図鑑で見た首長竜の様に。あれ下見えてんのかな? ん?


「あれだ! あの蟹を攻撃しろ!」


 一瞬エドガーの仲間か? と思ったが構えている武器が剣とか斧の近接系だ。エドガーの仲間なら銃を持っている筈だから違うな。おおかた親亀に攻撃しようと近くまで来たが、無理だと感じて立ち往生している面子だろう。相手があれじゃしょうがないけど。さて、


「ネイ! 撃ちまくれ!」


 ネイが両腕を正面に向ける。そして手のある方は5本の指先から小さな魔弾が、無い方から大きな魔弾が次々発射されプレイヤー達に襲いかかる。


「うおっ!? なんだこの攻撃は!?」

「ちょっ! 密度がヤバイ!」

「ダメージはそれほどでも、いや連射されたら不味いぞこれ!?」


 発射口が増えると恐ろしさが増すな【魔弾(このスキル)】は。前に試した時はダメだったんだけど、クエストが終わったらもう1回挑戦してみるかな? あっ!?

 振り返ればネイの胸元のコアが紅く輝いていた。【オーバー・ドレイン】状態だ、その状態から放たれる技は【オーバー・レイ】のみ。


「待てネイ! そこま──」


 俺の制止は間に合わずコアから紅く太いオーバー・レイが放たれる。オーバー・レイはプレイヤー達を飲み込み森ごと親亀を切り裂いた。おいおいおいおい、なんか色紅くなってるし威力もとんでもなくなってる!? 進化したからってこれは上がりすぎだろ!


「GYUOOoooooooo!?」


 親亀が吠える。どうやらまともなダメージが入ってしまったようだ、ってヤバイだろこれ!? ゆっくりと親亀がこちらを向く、目が紅く輝いているのが見えた。うわぁ、分かりやすい怒り状態。そ、そうだ!


「子亀! チャンスだ鳴け! 鳴いてお前に気付かせろ!」

「それだ! 頑張れカメ公! お前なら出来る!」


 ネイはオーバー・ドレインとオーバー・レイの反動でまともに動けない、そして俺達に親亀と戦う力はない。子亀よ、お前だけが俺達の最後の希望だ。


「クオォォォ!! クオォォォォ!!」


 子亀は必死に声を上げる、頼む! 気付いてくれ親亀!! 子亀が声を上げ始めると少しずつ親亀の顔が近付いて来た、攻撃する素振りは見えない。だけど目は紅いままだ、子亀を見つけたのに怒りがおさまっていないのか?


 まさか攻撃した事を怒っているのか、それとも何か別に……ん? 子亀をふと見ると足を前に出して進もうとしているが、全く進めていない。あっそうか! もしかしたら捕まっていると勘違いしているんじゃないか? でも子亀がいるから攻撃出来ない、と。なら糸を切れば解決だな。早速即席マジックソードを作り糸を切る。


 すると、子亀の脚がサークの甲羅から離れ傾いていく。やっべ!? 子亀が踏ん張れないのを忘れてた! 急いで【気力制御】を使い子亀の側まで動き甲羅を掴んだ。危なかった。


「サーク、ちょっと前屈みになってくれ」


 サークは体を前に少し倒し甲羅の傾きを和らげる、とりあえずこれで転げ落ちる事は無くなった。俺は子亀の甲羅を掴み直し持ち上げてサークから降りる、親亀は俺の様子をずっと見ている、いや子亀の方を見ているのかな? どっちにしろ怖いからこっち見ないで!


「よ、よし、さあ子亀! 説得よろしくな!」

「クォ!」


 子亀は意気揚々といった感じで親亀の元に歩いていく。そして俺は子亀から目を離さず、親亀を刺激しないようにゆっくり確実に後ろに下がる。さあどうなる? そう思った直後、


「GYUWHOooooooooo!!!」


 親亀が頭を上げ空に向かって一際大きく吠えた、あまりの声の大きさに俺は耳を塞ぐ。周りを見れば倒れた木や人ほどの大きな岩が親亀から飛んで来ている。本来なら轟音が鳴り響いている筈だが親亀の声で何も聞こえない、更に猛烈な風に目を開けているのも辛い。いやもう本当災害かよお前!


 次第に声が小さくなり辺りを静けさが支配した。そして俺の目の前にCongratulationsとここ数日よく見かけた文字が現れる。親亀を見上げれば既に目に紅い光は無い、良かった、誤解されて死ぬという結末は回避出来たようだ。


「クウォ」


『【エンピビエスタートル】がテイム可能になりました。テイムしますか?

                yes∕no』


 ふぁ? お前テイム出来るの? クエストモンスターなのに? まあ、出来るならするよ、もちろん。


「改めてよろしくな子亀!」

「クウォ!」

「GYUuuuuuu」


 唸り声が頭の上から響き、同時に震動が体に伝わってくる。親亀が反転し道を引き返し出したのだ。これでクエストは終わりだな。おっ、


「朝日が」


 親亀の正面から朝日が顔をだした。そうか、もうそんな時間か。


「終わったな」

「ああ、これでクエストクリアだ」


 テツがサークから降りてこちらに歩いてきた。後ろにはおぼつかない足取りのネイもいる、あの姿だとオーバー・ドレインの反動がこういう形で出るんだな。サークは……夜通し走り続けた疲れが出たようで眠っているようだ、起きたら褒めてやらないとな。今はとりあえず、


「お前に名前をつけないとな!」

「クォ!」

「何が良いかなぁ」


 確か種族はエンピビエスタートルだったな……、よし!


「今日からお前の名前は──あ、れ?」


 突然、頭の横に鋭い痛みと衝撃が来て視界がずれる。一体何が? そう思っても体は動かない、目も動かず状況が分からない。音もよく聞こえず、なんだかみんなが慌ただしく動いているのだけが見えている。


 そして、気が付けばまた白い部屋にいた。そこには、


「イエーイ! ようこそ、待機室へ!」


 初日に見た、イベント管理者デューが目の前に立っていた。どうやら俺はやられてしまったようだ。

誤字報告機能便利ですね。アドバイスまで一緒に本文に書き込まれてしまうのが厄介ですが、依然に比べればどうと言うことはないのでドンドンやっちゃってください。


それでは

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