09『雑多屋』
2本目だよ
「はい、これで依頼は完了です。お疲れ様でした」
今はAM6:35、ギルドの受付だ。
町に帰りついたあと、一度ログアウトして、食事とトイレに行った。ログインしたら、すぐにギルドに完了報告へ。プレートには報酬の1100zlが加わり、4800zlになっている。
ギルドは、AM6時に開き、PM10時に閉まる。
実は、裏手にギルドが運営してる別の酒場があるらしく、そこはPM10時に開きAM6時に閉まるそうだ。そこでも、依頼を報告出来たらしい。
それを知っていれば、朝からクエストが出来たのに。ともかく新しい依頼を受けよう! お金が無いと、治療も出来ないしね。
「良いものはあるかな? 」
『依頼書
依頼内容:討伐 適性Rank:E
討伐対象:パニックバタフライ 討伐数:5匹
南の森にパニックバタフライの姿が確認された。
早急に対処をお願いします。
報酬:2000zl HP回復ポーション2個』
『依頼書
依頼内容:討伐 適性rank:E
討伐対象:フォレストオウル 討伐数:3
奴によって夜の森で迷子になる人が出る前に
森に現れたフォレストオウルの討伐を
報酬:3000zl』
『依頼書
依頼内容:討伐 適性rank:E
依頼内容:グレイウルフ 討伐数:1
どうやら南の森にグレイウルフが迷いこんだようだ
はぐれだと思われるので早急な討伐を望む
報酬:3000zl』
一つrankが上の依頼が狙い目かな?
いけると思うその理由は
『依頼書
依頼内容:討伐 適性rank:E
依頼内容:ゴースト各種 討伐数:3
先日から草原にゴーストの姿が確認されている
早急な対処が必要と判断したよろしく頼む
報酬:3000zl』
この依頼書を確認したからだ。ゴーストクラスであれば、俺達でも討伐可能だ。夜中の狩りで、死体の類いもアイテムボックスに収納できる事も分かったから、素材を丸々売る事も可能になった。今までは埋めたり、グレイスの餌だったしね。
ちなみにプレイヤーにはないが、従魔には空腹があるみたいで、食事を要求される。狩った魔物を食べさせるのもいいけど、きちんとした料理もあげたいしね。
受付に行って依頼を受け、町の西通りへ。
ここは店が乱立する商店街だ。食材や薬剤、日用品等が売っている。
森は非常に広く、テントと松明等の外泊の用意が必要なんだそうだ。今回はそれを探しに来た。お金が足りると良いが。
色んな店を回ったが、テントは高い。買えない訳ではない。だけど、それ以外が買えないのだ。どの店でもテントは安くて4000zl。ん~、どうしたものか?
西通りから、北通りに向かう道に店が建っている。看板に書かれた名前は『雑多屋』。昨日会ったアムトさんの店だろう、店の扉には『開店中』と書かれた木札がぶら下げてある。行ってみよう。
店の中を覗くと、色んな物が置いてある。この辺りでは見かけない武器の類いから、ガラクタの様に思えるものまで、なるほど正しく雑多屋だな。俺は店の中に入り、声を掛ける。
「すいませ~ん! アムトさんはいますか~? 」
「はーい! 少々お待ちくださーい!」
店の中からアムトさんが現れた。服装はスーツ? いや、執事服かな。ただ、大きく前に出たお腹が服を引っ張り見た目はそう、ペンギンだ。金髪のペンギンだった。
「いらっしゃいませ! 今日は、あれ? ジンさんじゃないか! どうしたんだい? 何か探し物かい? 」
「おはようございますアムトさん。今日は森に入るので、念のため、外泊用のテントを買いに来たんですが、ありますかね」
「テントだね。だったらこっちだよ。ついてきて」
アムトさんの後について店の奥に入る。その先にはテントにカンテラ、調理器具まで置いてあった。キャンプセットのコーナーかな。ちなみにグレイス達は外で待機だ。毛とか商品に付いたりとか嫌だしね。
「ここが外泊用の道具が揃ってる場所だよ。適当に見て行ってよ。譲って貰ったものは、古い代わりに安くしてあるから、きっと目当ての物も見つかるよ」
「ありがとうございます」
「うん、それじゃ僕も行くよ。お客様は他にもいるからね」
そう言って、アムトさんは他のお客の所に向かって行った。彼の様な人が通れるようにだろう。通路の幅広くとられている。おっと、俺もテントを見ないと良いものは有るだろうか?
見繕ったのは一人用の古いテントだ。古いと言っても破けたり、壊れているわけではなく、シート部分がひどく汚れているだけだ。使い込まれているが、しっかり整備していたのだろう。色は黒地に緑の迷彩柄。これで2000zlは安すぎるほどだ。
他には、調理器具と行っても焼くことが出来るだけだ、値段は1000zl、テントと合わせても他の店より安い。後は燃えやすい薪10本で500zl、これで料理の方は大丈夫だ。後はカンテラ、1000zl、簡単な仕組みで、薪があれば使用できる。煙が出るのが難点だが、必要なものだ。これで4500zlギリギリ予算内だ。
昨日は買い出しがあるとか言ってたのにこの品揃え、商品を溜め込んでたのか、はたまた1日で集めたのか。どちらにしてもやり手の商人と言うことだろう。
俺は商品を持ってアムトさんに会いに行く。すでにプレートから商品代は引かれているが、やはり挨拶はすべきだろう。プレートは装飾品としても使えるようだったので、ポーチと同じくベルトに装備した。これで落とす心配はない。
アムトさんを発見。どうやら休憩中の様だ、椅子に座り水を飲んでいる。今なら話しかけても大丈夫だろう。
「アムトさん」
「お~ジンさん、目当ての物は見つかりましたか?」
「えぇ、助かりました。逆にこの値段で大丈夫か聞きたいぐらいですよ」
「大丈夫ですよ、テントなんかは基本的に貰い物ですしね。冒険者を引退した人や、新しいのを買って、要らなくなった物を格安で買い取ったりですね。新しい物は魔物を寄せ付けない仕組みがついて高いですが、一昔前のテントは安くても買い取れますから」
「ちなみに俺が買ったテントは?」
「え~と、ジンさんが買ったテントは、5年前に引退した冒険者の物ですね。なんでも倉庫の肥やしにするくらいなら、他の冒険者の役に立ててくれとこちらに譲られた物ですね」
「そうだったんですか」
「ええ、彼はここの常連でしたから。『初心者冒険者なら、古くても使うだろう俺なら使う』と言ってましたね」
なるほど後輩のために、店に譲ったのだろう。いい人だな。
「その方は? 」
「数年前、森でゴブリンの大量発生がありまして、その時に新人を庇ってお亡くなりに」
「そうでしたか」
「あっ! そういえば買う人が現れたら、渡してくれと言われたものが有りましたね。少し待っていてください」
そういうと店の奥に入っていき、すぐ戻ってきた。手には2枚の紙を持っている。
「これですね、『冒険者なら、必ず必要になるから渡してくれ』と、実際買おうと思うと1枚5000zlはするものですね」
5000zl!プレイヤーの初期費用と同じじゃないか!
「いいんですか! そんな高いもの! 」
「問題ありません、むしろこれを売りに出せば、彼に申し訳がないですから。どうぞ」
俺は紙を受け取る。どうしよう?なんか使いづらいぞ。
俺のそんな気持ちを汲み取ったのだろう。アムトさんは、
「使って下さい。それが彼の供養にもなると思いますので」
俺は頷きながら、
「分かりました。使わせて頂きます」
「うん。お願いするよ。これで僕も肩の荷が降りたよ」
「それは良かったです。それじゃ俺はそろそろ」
「お買い上げありがとうございました。またのご利用をお待ちしてます」
俺達はアムトさんに見送られながら店を後にする。
幸い回復ポーションは、まだ2本づつ残ってる。シロツキの治癒魔法もある。俺達は200zlで買える肉と野菜、水を買って南門へ向かおう。
その前に2枚の紙だ。やはりスキルロールだった。
『【鑑定】寄贈者【マイケル】
道具の詳細を知る事が出来るようになる』
『【識別】寄贈者【マイケル】
モンスターの名前や人物の名前を知ることができます』
マイケル。それがテントの前の持ち主か。
確かにこれは有益なスキルだろう。初期に取らなかった人はどこかで、5000zl支払い買う必要があるわけだ。
とりあえず使おう。鑑定のスキルロールを見る、説明が書いてあるだけだ。じっと見ていると紙に魔方陣が浮き出てきた。それが消えるとスキルロールは輝き砕けた。グレイス達の時は、これで習得出来たのだから、俺もそうだろう。識別の方も同じ現象が発生し輝き、砕けた。
ステータスには、鑑定と識別が加わっていた。スキルの習得は成功だ。グレイスは最初、あの魔方陣が見えなかったという事なのだろう。
さぁ、森に向かう間、試しながら進むとしよう!
【ジン】 冒険者rank:F
種族【常人種】 状態:【良好】
職業【捕縛師Lv3】【調教師Lv3】
TLv6
LP :230/230
MP :210/210
SP :300/300
攻撃:20(30) 魔攻:19
防御:19(24) 魔防:13
持久:31(36) 精神:17
器用:28(39) 素早さ:25(30)
運:19
土:5 水:5 火:5
風:5 光:6 闇:7
JP:6
ジョブスキル
【鞭術Lv5】【調教術Lv4】
スキル
【俊足Lv3】【気配察知Lv4】【魔力操作Lv5】
【魔力変換Lv2】【気力操作Lv3】
【鑑定Lv1】new!【識別Lv1】new!
称号
【親愛の女神の加護】
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また、3日以内で更新します