40『対決! ダンジョンボ……あれ?』
俺達は洞窟には似合わない巨大で豪華な扉の前までやって来た。正確はその前にある広場の真ん中から突き出た結晶の前だ。この結晶に触れると触れた本人がいるパーティがボス部屋に飛ばされるそうだ。
「それじゃ最終確認だ、まずはゲンジロウが頭を攻撃、ゲンジロウにヘイトがいったところで各自遠距離攻撃開始、近接は隙が出る攻撃直後のみ、後は臨機応変に、準備はいいか?」
「おう! いつでも行けるぜ」
「任せてください」
俺の現在の装備は目立たないように王都で買い揃えた量産品の軽装備、軽装といっても春夏秋冬のメンバーが作った防具よりも性能は上、見た目はさほど変わらないけどこの鈍い銀色のラインがカッコイイんだよね。ドロップした防具の方が性能は良いけど、見た目がね、大事だよねデザインって。
武器はレッサーミスリルソードとサーペントテイル、アクセサリとして指輪に擬態したネイと竜亀の首飾り、まぁ、まだ首飾りが必要な程の相手と戦った事はないが、今回はパーティだけでrank:Cの相手と戦うからな、念の為だ。
サーク達の方も問題ない、あるとすれば2体が既にグレイス達よりレベルが高い事か。ネイはLv25、サークは22だ。ユキムラ君のゲンジロウは25か26で進化したらしいからネイはもう進化していい筈なんだが、また何か必要なんだろうな。ホントこのイベントはレベルが上がりやすいな。さて、
「よし、行くぞ」
俺は合図代わりに一言告げると水晶に手を当てる、すると、結晶が紅く光り俺達を飲み込んだ。へぇ、いつもの転移とは色が違うのな、ダンジョンの仕様かな? 光が消えるとそこは暗い部屋の中だった。部屋の壁は長方形のタイル、いや、レンガ? が敷き詰められた物で、その壁には等間隔に松明が刺さっていて部屋の中を照らしていた。
「ほう、なかなか雰囲気あるじゃねぇか」
「これぞダンジョンって感じだよな」
「だな! で? 俺達の相手のモグラ野郎はまだか?」
「う~ん?」
「どうしたユキムラ君、唸り声なんてあげて?」
「いえ、確か掲示板ではいつもの白い光で転移したって書いてありましたから、紅い光だったのが気になって、それに部屋に入ったらすぐモールが出てくるって話だった筈、なんですけど、それも無いし」
「ってことはあれか? レア現象を引き当てたってことか?」
「さあ? それは分かりませんけど」
ふむ、掲示板の話と俺達の状況にズレがあるのか。周囲を見渡して見るが、特に変化はなし。どうするか?
「……とりあえず進んでみるか? ここでじっとしててもしょうがないし」
「そう、ですね」
「んじゃ、行こうぜ」
俺達はゆっくりと前に進む、しかし、ボスの姿は見えない。聞こえてくるのは俺達の歩く音と武器が擦れる音だけ。そして、正面に見える松明の根元が見えた辺りでその音を、いや、声を聞いた。
「クォオォォオォォ」
「何処だ? 何処から聞こえた?」
テツが周りを頻りに見渡す、だけど、俺達はそれどころじゃなかった。
「……ジンさん、今の声って」
「そんな訳ない、筈だ、アイツはちゃんと親に返した」
「でもこの声は──」
「同種の別個体って可能性もある」
「こういう状況で起こる事は大体悪い方、ってテンプレで決まってますよね」
「……まずは声の出所を探そう、テツ! 円陣だ! それぞれ正面を警戒しよう」
「おう!」
俺達は従魔を横に連れそれぞれ背中を合わせて3方向を警戒する。しかし、姿は見えない。
「テツ、ユキムラ君、何か見えるか?」
「僕の方は何も、壁と松明だけです」
「俺も同じだ、ってか見えてたら知らせるさ」
「だよな、さて、正面に見えないと言うことは──」
「「「上か!!」」」
俺達は揃って天井を見上げる。そこにあったのは四角い何かと見たことのない魔物、判別!
【デビルキッド】rank:C
『ヤギの頭を持つ悪魔種、イタズラ好き
自分が嫌がる事が好き、特に好きなのは人の絶望した顔』
とりあえず色々問題がある相手だってのはよく分かった。正しく高みの見物をしてたってとこか? 左手に持っているのは三ツ又の槍、背中には1対のコウモリ系の羽、色は多分黒に近い赤。それ以外はゴブリンに近いか?
デビルキッドは俺達を見下ろしながら四角い何かを傾けた。それは檻だ、デビルキッドより少し大きい檻。そして、その中には、
「クォォォォォォォォォ!!」
「「子亀!!」」
俺とユキムラ君が同時に叫んだ。ネイは指輪を赤く点滅させサークはハサミを頻りに鳴らす、2体が反応するなら間違いなく同一個体か。だが何故だ? 何故アイツがここにいる!? それも檻の中なんて。
「ベェ? ベベベベベベベベ!!」
デビルキッドが声を出す、もしかして笑ってるのか?
「なんだアイツ、エドガー並に、いやそれ以上にムカツク奴だな」
「ベェェェェェェェェェェェ!!」
テツの言葉に反応したわけではないだろうがデビルキッドは声を上げる、同時にデビルキッドの両目が光る。何をするつもりだ?
「「ピィィィィィィィィ!」」
ゲンジロウとノブシゲが突然声を上げた、今度はなんだ? と思いつつ視線を正面に戻すと空間に歪みが発生していた。そして、
「「「「「ゲヒャヒャヒャヒャ!」」」」」
気味の悪い声を出しながらデビルキッドと同じ羽を持った紅いゴブリンが現れた。コイツはなんだ?
【デビルキッズ】rank:D
『悪魔の子供、非常に好戦的で残虐な事を好む
見た目は羽を生やしたゴブリンだが、能力は別物
ゴブリンの見た目のせいか集団戦を得意とする』
悪魔の子供!? 面倒そうなのが出てきたな。
デビルキッズは俺達を取り囲むように出現した、数は8体。
「チッ、数が多いな、どうする?」
「どうするも何も倒すしかないだろう」
「んなことは分かってる! 個人戦か集団戦かって話だ!?」
「それはこの囲いを突破してからの話じゃないですかね?」
「……そうだな、それじゃまずは一点突破だ、ユキムラ君側の壁際へ全員で向かおう」
「「了解!!」」
「ベェェェェェェェ!!」
そう俺達が作戦を決めて動き出そうとした時だ、デビルキッドがまた声を上げた。と同時にウインドウが目の前に開く。
【チェーンクエスト発令】
『クエスト【種族を越えた絆 友を救え!】が発生しました』
【種族を越えた絆 友を救え!】
難易度★★☆☆☆☆☆ 制限時間30分
勝利条件. 制限時間内の敵全滅
敗北条件. 制限時間内の敵全滅の失敗
パーティの全滅
チェーンクエスト、また子亀を救えってか。色々と気になることはあるが、一番の問題は制限時間があること。rank:CとDとの集団戦、Dだけならなんとかなると思うがCは、いや、今はそれより、
「時間がない! ダメージ覚悟で突っ込むぞ!」
「了解です!」
「このクエストの内容について色々聞きたいところだが、クリアが先だな、後で聞かせろよ!」
「分かった、それじゃ突撃だ!」
俺は駆け出しながらインベントリから再作製した4枚の盾を取りだし展開、鞭を右手、剣を左手に構えて突撃する。サークは俺の後ろについてくる。
テツは大槌を肩に担ぎ、ユキムラ君はノブシゲに跨がり槍を構える。まずは一点突破、その後は殲滅戦だ。再度の子亀救出、やってやるよ。




