35『VSミミックファルコン改めマリオネットドール』
【マリオネットドール】対応rank:RB
『自らも人形でありながら人形を操るドール種と呼ばれる魔物
どんな大きさでもそれが人形であれば魔力で作った糸で操る事が出来る
糸は武器としても使用可能、不可視の糸での攻撃は脅威と言える』
rankはミミックファルコンと同様、しかし、不可視の糸で攻撃するというのが厄介そうだ。ただ、魔力で作ったと言うことは俺の【擬似魔眼】で見ることが出来るかもしれない。MPの常時消費は痛いが仕方ないか。
マリオネットドールは顔の無い木で出来た人サイズの人形だ。間接毎に球状のパーツが見える、特に目立つのが胸の中央部分にある穴に浮いている水晶? らしき物体だ。
指先からは魔力の糸がミミックファルコンの体のあちこちに伸びている。振り返るような動作をしているからこちらの存在には気付いている筈だ。
「まずは俺が前に出る、みんなついてこい!!」
サザリさんはそう言って前に出る、俺達はその後ろについていく。マリオネットドールはまだ動かない、どういうつもりだ?
「このゲームのパターンなら、もう動いていておかしく無い筈だけど」
「確かにな、何か狙ってるのか?」
「素直にレイドボスの仕様という線は無いですかね? 攻撃されるまで何もしない、とか」
「……まあ、あり得ないだろうな」
「同感」
「アハハ、そうですよね」
さていつ動く? あれっ? 何か忘れているような……あっ! サークは何処だ!? え~とマップには近くにいるのが確認できるけど姿が見えない。
ユキムラ君達と一緒に来るように言っておいたが失敗だったか、ネイは空間を閉じて天井の側にいるのが確認できる。何処かに嵌まったか?
「すまん! ちょっとサーク探してくる」
「えっ!?」
「おい、言ってる間に始まるぞ!」
「すぐ戻る! 行ってくれ!」
俺は必要な事だけ伝えて道を引き返す、みんながマリオネットドールを倒しきるまえには合流できる筈だ。このハリボテは広いことは広いが別に道がある訳じゃない、すぐ見つかるさ、マップと言うヒントもあるしな。
「え~と、マップの光点の位置がここだから、近くにいる筈なんだが……居た!!」
サークは俺達が足場にしている梁の下、羽毛との境目でじっとしていた。コイツは何をやっているんだ? あ、ウインドウが開いた、けど確認は後回し、まずはサークだ。ウインドウを消してサークを叱る。
「コラッ! 勝手に何処かに行っちゃダメだろう、子亀みたいに迷子になったらどうするんだ!!」
まぁ、こんな何も無い場所で迷子になったりはしないと思うけど。まぁ姿を隠せる事はサークが証明してしまったけど。
サークは俺の声に1度上を見上げたが、直ぐに同じ体勢に戻った。一体そこで何をやっているんだ? 俺には特に変わった物は見えないんだが、サークには何か見えているんだろうか? そんな時は【擬似魔眼】の出番だ、さあ、何が見えるかな?
サークの視線の先、位置的にはサーク自身の真下にあったのは見たことの無い魔方陣だ。とんでもなく細かい、1度見ただけじゃ覚えられそうもない。もしかしてサークはこれを暗記しようとしているのか? 何故? サークは一体何を目指しているんだ?
「って、今はそれ所じゃないな、ホラッ、サーク行くぞ! みんなもう戦い始めてるんだから」
しかし、サークは動かず魔方陣に夢中だ、仕方ない強行手段でいこう。
「悪いなサーク今回の戦いが終わった時に、もしこれが残ってたらじっくり見せてやるから今回は諦めてくれ、よっ!」
俺はサークを鞭で捕縛、そのまま手元に引っ張り吊り上げた。サークはそれでも目線だけは魔方陣に向けたままだ、そんなに大事な物なのかこれは? でも今回は討伐優先なので諦めてくれ。じゃ、行くぞ。
サークを鞭でぶら下げながら皆と合流しようと走っていると、正面から派手な金属音が響いてきた。それも何度も、既に戦いが始まっているようだ。まぁ、サークを探すと決めた時からこうなると思っていたけどな。さて、戦況はどうなってるんだ?
「う~ん、膠着状態ってやつかな、これは」
マリオネットドールは左手をサザリさんに向けている、特に何かしているように見えないがサザリさんの楯は何かを受け止めているかのように何度も揺れている。
【擬似魔眼】で見れば5本あるマリオネットドールの指先から数え切れないほどの糸のような魔力が見える。あれがアイツの武器と言うわけだ。
サザリさんの前に出ようとする人もいるが、腕や足を斬られて後退を強制されている。そもそも見えなきゃどうしようも出来ないな、これは。
右手も左手同様魔力の糸が伸びている。だが、伸びている場所はミミックファルコンの梁全てだ。指先に近い物は見えるが離れるほど俺には見えなくなる、多分、さっき俺達がいた場所にもあったんだろうな。
とりあえずサザリさん達から少し離れた場所で待機しているユキムラ君とテツに合流しよう。
「ユキムラ君、テツ」
「ようやく来たか、遅いぞ」
「すまんサークが少し頑固でな、それで状況は?」
「ジンさんと別れて直ぐに戦闘を開始したんです、最初は攻撃しても反撃を全然してこなくて楽勝だったんですけど」
「LPゲージが半分を切った辺りで頭が引っくり返ってから反撃しだしてな、その後からずっとこんな感じだ」
「俺ってそんなに長くサーク探してたか? あのサイズでもレイドボスだぞ? それが短時間でLP半分って」
「ま、胸の中央に分かりやすくコアっぽい球がデカデカと浮いてるし、アイツも動かなかったしな、そうだジンも攻撃しとけよ、フェーズが2つ先に進むぞ」
「そこは大丈夫だ、パーティメンバーが攻撃した時点でこっちにも通知が来てる、確認はしてないけど」
サークを探すのが最優先だったからな、さて、内容は、
【緊急クエストが更新されました】
『レイドクエスト【マリオネットドールを討伐せよ】が発生しました』
【マリオネットドールを討伐せよ】
難易度 ★★★★★★★
『フェーズ3.マリオネットドールを討伐せよ』
成功条件.マリオネットドールの討伐
失敗条件.パーティの全滅
マリオネットドールの逃走』
ふむ、フェーズ3の内容がこれならフェーズ2はミミックファルコンの討伐、いや、破壊かな? 一応作り物の訳だしな。さて、マリオネットドールを討伐する方法を……考える必要はないな。
「ネイ、思う存分あれをおちょくってやれ」
「~~~~~♪♫♪♫」
ネイは楽しそうに音楽を奏でて俺の指輪に戻る。そして指輪の前に手のひら程の歪みを発生させて、そこに【魔弾】の新アーツ【マシンガンバレット】を発動、俺の指先に軽い振動を与えながら普段よりも小さな魔弾が歪みに飲み込まれていく。歪みの出口は奴のコアの背後、それもほぼゼロ距離のようだ。
だって弾が歪みに入る度にマリオネットドールが揺れているからな、どうやらあんな小さな隙間の先でも見えているなら空間を繋げる事が出来るみたいだ。【空間魔法】ってのは本当に便利だな、いずれ敵が使ってくる事を考えると恐ろしいけどな。
当然、マリオネットドールもそのままネイの攻撃にされるがままになっている訳もなく反撃を開始する。しかし残念、そこにネイはいない。
ただこのゲームはNPCがリアル同様の行動を起こせるゲーム、それはモンスターも例外ではない。つまり直ぐにネイの攻撃方法を見極め対処を始めた。
具体的には、ネイの作った歪みから魔力の糸が魔弾の隙間を縫うようにこちらに迫ってきたのだ。
「ネイ! 空間を閉じろ!」
「ーーーーーーー♪♪」
魔力の糸は俺の指に数本の引っ掻き傷を残して地面に落ちた。あと少し遅かったら指が切断されてたんじゃないか、これ? 危ない危ない。さて、ネイの魔弾で1割程LPが減少したが、同じ手は通じないと考えるべきだ。
さて、次はどうしようか?