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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第3章 星の降る島
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24『足元注意』

 ぶった切ってしまった木は、ハサミを抜いたらあっけなく倒れた。倒れる時に大きな音が鳴ったせいでまたネリネさんに怒られたが、今回は完全に俺が悪いので何も言えない。周辺に魔物の類いがいないのだけが幸いだったかな? いたら間違いなく音に呼び寄せられただろうし。


 倒れた木はビウムさんが大斧で斬り崩し不揃いの薪に変わり全員に配分された。料理に必要だったし素直にありがとうと言っておいた。


 今、入江は完全に日が沈み月明かりが海を照らす綺麗な姿を見せている。他の光源はみんなで囲む焚き火の火だけ、なんだか遭難した気分だ。


 頭上を見上げるがそこにあるのは月と黒い空、星の光は見えない。まぁ、それを取り戻すのが今回のイベントな訳なんだけど。


 聞こえてくるのは女性陣の他愛ない会話と波の音だけ。ユキムラ君は少し離れた場所で何かの調合中、やることがあるって良いね。……少し離れて波の音だけ聞いてくるかな。


 波の音を聞いてるとなんだか清々しい気持ちになってきて心が落ち着く。昔の人もこんな気持ちになったのかな? 何故か子亀達も付いてくるがこの子達は静かだし問題ない。蟹の方はさっきまで俺のテントの周りをグルグルしてたが、何か気になる事でもあったのかな?


 流石に海側の穴まで行くのは怖いので少し離れた砂場に腰を下ろす。


「なんだか長い1日だったな……リアルだと数時間しか経ってないけど」


 なんと言うか違和感が半端ない。本来なら真夜中の筈だからかな? それともこんな時間までゲームをしているからか、これも慣れる日が来るのかな? 


 そんな事を思いつつ波立つ海の中を眺めていると、ふと波間に何かが見えた。

【識別】に反応はない。では【鑑定】はどうだ? ビンゴ! 鑑定結果を表示。


【宝箱】

『財宝が入っている、と思われる箱

 たまに魔物が擬態している事がある』


 ……こういうのって早い者勝ちで良いよね。周りに誰も居ないし大丈夫だよね。いや、小亀と蟹はいるけどコイツらが要求するわけもないし。よし! 早速回収だ。


 海の中にザブザブと足を突っ込み宝箱に向かう。

 波間に見える宝箱は思っていたより深い所にあり、既に腰まで海に浸かってしまっている。でも、


「とうちゃーく! さて早速、いや待てよ」


 このまま開けたら中身水没するんじゃないか? 普通のディスプレイのゲームならともかくこれはCWO、何が起きてもおかしくない。


 ならばと宝箱ごと動かそうとするも、宝箱はびくともしない。杭でも打ち込んこんでるのか? 夜店の景品屋みたいに。


 しょうがない、このまま開けるか。正面はどっちだ? 月光と波で揺れてよく見えない、しょうがない潜るか。大きく息を吸って止める、行くぞ。


 おお、海中ならしっかりと見えるぞ。え~と、こっちか。……開かない。鍵でもかかってるのか? でも鍵穴はない、となるとどこかに開ける仕掛けが、箱のした部分に四角いポッチリが、ボタンかな?


「ボワッ!?」


 押し込んだら蓋が勢いよく開いた、その蓋は俺の顎を直撃、非常に痛い。しかも空気が漏れて苦しい。一旦海上に顔を出し息継ぎをして改めて宝箱に戻る。


 これからは宝箱の上に注意しよう。さて、中身は何かな~? 期待して宝箱の中を覗いた。が、中には何も入ってなかった。まさか、スカ?


 いやいやいやいや、流石にそんなわけないだろう。

 そう思い宝箱の中を確認しようとするが、宝箱は小さな光の粒となって海に溶けていってしまった。……マジか? マジでスカなのか? 俺の期待を返せ! このやろう!!


 ガッカリしながら浜辺に戻り座りこむ。

 あ~、波の音は落ち着くな~。そうだ、少し遊ぶか。【魔具生成】でスコップを作る、ついでにバケツも。属性は土を目指してみる。しかし土属性にはならなかった。代わりに出来た属性は砂、まぁ、水や氷よりは使い道があるかな? さて、遊ぶか。


 砂と海水を混ぜて塊が出来る位の固さにしたら準備完了、何を作るかな? とりあえず山を作ってトンネルでも開通させるか。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「完成! いや~、10年以上昔の記憶にチラッとある程度の知識でも出来るもんだな」


 30分程で完成したトンネルつきの山、トンネルの大きさは俺の腕程度、完成したトンネルは蟹がさっきから出たり入ったりしている。なんか気に入ったみたいだし、壊さず置いておこう。


 次は砂でかまくらを作ろう。と言っても人が入れる程の大きさを作るのは無理だから蟹サイズで、これならバケツ2杯でいけるだろう。固めて広げてドーム状にして穴を掘る、崩れない様に慎重にかつ大胆に砂を掘り出して完成!


 どうせ自己満足だ、この際見た目は気にしない。


「ふー、とりあえず満足した、さて次は何をしようか、な?」


 立ち上がり周りを見渡しながらそんな事を呟いていると、ふと、後ろの黒い岩壁が気になった。1ヶ所だけ色が薄いのだ。近付きよく見てみれば影で黒く見えているのは白い壁のようだ。大きさは片手程、入り口からは見えない様に岩の影に存在していた。


「ふむ、これはなんだろう? ……ボタン的な何か? それともただ模様が違うだ──」


 触りながら白い部分を調べていると、ガコッ、と音と共に凹んだ。マジでボタンだったの?

 直後ゴゴゴゴゴ、と音が響いていきた。もしかして俺、何かやらかした!?


 暫くしたら音が鳴りやんだ。しかし、目に見える限り何か変わった様子はない。でもあれほど大きな音がなって何もないはないだろう。周辺を調べた方がいいな、とりあえずこのボタンを中心に調べよう。


「ジンさーん!」

「うん? ユキムラ君どうした、何か……あったみたいだな」

「はい! 入江の入り口の割れ目半ば辺りに小さな部屋が出現して、ビウムさんが突撃してそのまま姿を消しました」

「姿を消した? 転移トラップか?」

「姉さん達もそう言って後を追いました、僕はジンさんを呼ぶために戻りました」


 何をしているのだあの人達は、そう言う時は準備を整えてから調べるのが基本だろうに。恐らく俺が部屋を出現させちゃったと思うから、強くは責められないけど。さて、


「今すぐ追おう、案内よろしく!」

「はい!」

「あっ、お前達はここにいろ、危ないかも知れないからな」

「グウゥゥウゥ」


 これは了解の意味で良いのだろうか? まぁ、胴体を下ろして休む体制になったし多分そうなんだろう。ちなみに蟹はハサミを何度か鳴らしたあと俺が作ったかまくらに入っていった。暗いところが好きなのかな? 追ってくる気が無いなら良いか。


 俺はユキムラ君と一緒に入り口に戻る、確かに帰ってきた時にはなかった部屋が長方形のくぼみとその先に広がる部屋があった。ユキムラ君と一緒に中に入って気付いた。これトラップじゃないわ、ただの転移部屋だ。


 だって、地面にデッカイ魔法陣が存在してるもの。


「単純な確認不足、もう少し用心深く動けないものかね? ……俺が言える事じゃないけど」

「すいません」

「いいよ、気にしないで、それより行こう、多分帰り道もちゃんとあるよ、こういうタイプの隠し部屋は」


 俺は魔法陣の中央へ向かう、これはあれだな、【アイン】の冒険者から東門に向かった部屋の洞窟バージョンって感じだな。部屋の中央に着くと魔法陣が輝く。そして、気がつけば別の洞窟の中に居た。


「足元には魔法陣、出口は多分同じだと思うんだが、居ない、か」


 女性陣の姿はなし、マップを確認するとユニオンメンバーの彼女達のマーカーは俺達に重なる様に表示されている。役に立たないな、このマップ。

 薄暗い部屋を目を凝らして見れば足跡が残っている。彼女達のものだろうか?


 道は正面に1つだけ、とりあえず進んでみるしかない、か?


「姉さん達、居ませんね」

「これが転移部屋なら皆同じ所に辿り着くと思うんだが、トラップと勘違いしているままなら今ごろここじゃない出口を探しているんじゃないかな?」

「それじゃあ進むしかないですね、また遅いって怒られるかもですし」

「怒るくらいなら待ってくれよな、ホント、そろそろ行こう、とりあえずここが何処か調べないとな」

「分かりました」


 ユキムラ君と共に薄暗い通路を進む、どこからか光が漏れて全く見えないわけだはないが、もう少し何とかならないものか。ランタンとか贅沢は言わない、せめて松明とか。あっダメだ、肝心の油がない。クソッ、サバイバルするにも色々足らないなぁ、そもそも油ってどうやって入手すればいいんだ?


 そんな事を思いつつ進んで行くと前方に一際明るい光が見えた、どうやら出口のようだ。

 2人揃って早足で光に向かう、光は月が覗く大きな穴から洞窟内に届いていた。そしてその穴こそ出口だ。


 俺達は出口から出た。しかし、


「危ない!」


 出口から出るとそこは見晴らしがいい山の上、それも崖のだった。この島で山は火山だけ、ならばここは火山の何処かの筈だ。もし、勢いよく外に飛び出そうものなら、そのまま下に転がり落ちた事だろう。


 出口から横に登り坂が続いている、人1人がぎりぎり進める幅の道だ。手すりや柵の類いもない、危ない道だな。


「ここを姉さん達は進んだのでしょうか?」

「みたいだな、見ろ、足跡が続いている」

「怖くなかったのかな~、こんな道」

「さてな、とにかく行ってみよう」


 俺達は足跡を頼りに進む、頼むからここまで来て行き止まりとかは止めてくれよ。

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