23『今後の方針』
「食事も終えたので、改めて今後の相談を始めます、良いですね?」
食事を終え日が西に沈もうとしている頃、ようやくネリネさんの話が始まった。
いつもならそろそろログアウトを考えなきゃいけない時間だが、イベント中はその心配は必要ない。1日中ゲームに熱中出来るっていいよね。正に娯楽って感じだ。
「そこ! ボーッとしないで下さい!」
「すいません、つい」
「次から注意して下さい、これ以上時間を無駄にしたくないですから」
時間を無駄に、か。そう思うんだったら罰なんてさせなければ良かったのに、そうすればもっと早く話題を移す事が出来ただろうに。まっ、既に後の祭りだから言っても仕方ないけど。
「さて、私達春夏秋冬としては第1にポイント、次点で素材の収集を目的としていましたが、村で得た情報から私達は別行動をした方が良いと考えました」
「はい!」
「なんですかエンクさん?」
エンクさんが声を出しながら勢いよく手を上げた。何か気になる事でもあったのか?
「どうしてその考えに至ったか説明して下さい」
「それを今から話すんです、ペナルティとして説明が終わるまでお喋り禁止です! 良いですね?」
「え~」
そんなの簡単な注意だけで良いだろうに、なんだって罰扱い? 聞いてみよう。
「はい」
「なんですかジンさん」
「ペナルティの理由を教えてください」
「話の腰を折ったからです、そしてジンさんもペナルティです」
「はいはい」
この人はすぐそう言うな、大分慣れてきたけど一体どうして罰を押し付けるのやら。……そうだ!! 少し思考を読んでみようか。少しはネリネさんの考えが読めるかもしれない。
折角習得したのに使う機会もない【読心術】、ついに活躍する日が来た。では早速行ってみよう。
(ま・・・、・・し・・・・ん・た・・・・・し・・・て・・さ・・・・か)
……ダメだ、全然分からん。使っていればいずれ分かるようになると思うが、今は全く役に立たんな。とりあえずつけっぱなしにしておこう。レベル上げレベル上げっと。
「私の目的とする素材は鉱石です、それには火山周辺がもっとも効率よく収集出来るようです、私と目的を同じにするのがビウムさん、それとエンクさんです」
「私は金属系の武器を作りたいからね」
「私は弾の材料です」
「エンクさんの発言は許可していません黙って下さい」
「……は~い」
いや、今のは別に構わんだろう。本人の話題だし言い分もあるでしょ。
「それでアヤメさんが欲しいのが──」
「それは私が話すよ、私が欲しいのは動物系の皮、特に毛皮が欲しいの」
「ちなみに~、私が欲しいのは~染色する為のお花です~折角なので昔ながらの自然染料を試してみようかな~と思いまして~」
「御2人の目的を考えると南から西の森にかけてになるわけです」
「姉さん達の話は分かったよ、それじゃ僕はカンナさんについて行くよ、僕は薬草探しとゲンジロウの仲間を増やす事が目的だから」
「えぇ、構いません、そうなると思っていましたから、問題はジンさんです、あなたはどうしますか?」
どうするか、ねぇ? 火山で鉱石探し、または森で薬草探しと毛皮集め、う~ん。
火山なら固そうな魔物、動物が居そうだよな。タンクの役割を持つ従魔を探すならこっちなんだが、今の俺には子亀の親探しもある。とても水陸両用の子亀が火山に居たとは思えないからスルーかな。
遺跡も気になるんだよなぁ、俺達が運ぶのを手伝った機械の腕、あれ間違いなく人型ロボットになるよな、はめる窪み人型だったし。完成した姿を見てみたい気持ちもある。
……考えてみたら悩む程事じゃないな。素直に行きたい所に行けば良いんだよな。
「俺もユキムラ君と行くよ、小亀の親が火山にいると思えないしな」
「そうですか、分かりました、それでは私とビウムさん、エンクさんは火山に、アヤメさん、カンナさん、ユキムラにジンさんは南から西の森でよろしいですね?」
「「は~い」」
俺とエンクさんは無言で頷き、ビウムさん達はそれぞれに返事をする。
さて、話も終わったみたいだし俺は何をしようかな? とりあえずシザークラブハンマーの検証を再開しようかな。
「あの~ネリネちゃ~ん? パーティーメンバーはどうするの~?」
シザークラブハンマーを取り出した所でカンナさんがネリネさんに聞いているのが耳に入った。一応聞いておこう。
「もちろん分けます、パーティーは一緒に行動する人と組んでください」
ま、当然の判断だな。え~と、勢いよく魔力を流すとハサミ部分が飛んじゃうから地面にハサミの先端を固定してっと。
「出かけるのはいつですか? 今すぐ?」
「いえ、そろそろ日も暮れますし暗い中移動するのはゲームの中とはいえ危険なので、夜明けまで様子を見ます」
今度は魔力を少しずつ流し込んむ、前回はただ流し込んだだけだったからな、今度は全体的に、おっ、ハサミが開いた。ドンドン行こう。
「じゃあ、太陽が昇ったら出発?」
「そのつもりです、もちろん異論がなければですが」
うおっ!? なんだ? ハサミ部分に青い魔力が纏ったぞ、これにはどんな効果が? 何か試せる物は、え~と……入江の外に見えるあの木なんて良さそうだな。一旦魔力を流すのを止めて移動開始だ。
話を続ける女性陣から離れて入江の外の森に入り少し歩く、あんまり近くでやると誤射した時まき込むかもしれないからな。
とりあえず入江の入り口が見える程度まで離れれば大丈夫だろう。
手頃な木を見つけハサミを合わせる。……ところでこれ、どうやったら挟むんだ? 魔力を入れすぎたらハサミ自身が飛んでいくしな、とりあえず魔力を抜いてみるか。あっ、青い魔力が引っ込んだ。まだハサミは閉まらない。
更に抜いてみる。すると、ハサミはメキメキと音を立てながら木の両側から3割程食い込み止まった。これ、人に使ったら体ぶつ切りにならない? 気をつけよう。
ただ、結局青い魔力の正体は分かっていないから再挑戦しないと、でもさっきのやり方じゃ同じ結果になるかもしれない。どうするか? ……あっ、【疑似魔眼】使えば良いじゃん! 剣が壊れた時から必要ないと思って外してたよ、あれも結構MP使うからね。
早速使いながら魔力を流してみよう。やり方はさっきと同じ、さてどうなってるのかな?
最初に動いたのはさっきと同じでハサミ部分の開閉、この時点で流していた魔力が動いた方のハサミ部分に流れなくなった。
次は青い魔力の出現、今度はハサミの動かない方に魔力が流れなくなる。この状態を維持するために魔力を止める。さて、もう一度木にセットしてここからが考察だ。
魔力の流れを見ていた限りコイツには部位毎に流せる魔力の上限が存在し、上限に達するとそれぞれに発動するギミックが存在するようだ。ハサミの下は開閉、上は青い魔力の発現、発射はまた後で調べるとして、次はハサミを閉じてみよう。
魔力抜ければ元に形に戻るならば、動かしたい部分の魔力を減らせばそこだけ動かす事が出来る筈、つまりハサミの下だな。少しずつ行くぞ。
ゆっくりゆっくり、思ったより難しいな。片方を減らすだけでいいのに全体的に減ってしまう。あっ、青い魔力が消えた。そっちは消えちゃダメなんだって。もっと細かく動かさないと。
何度か挑戦したがどうしても上手くいかない、いままでみたいに動かすだけじゃダメみたいだ。考えろ、考えろ、今必要なのはなんだ? 細かい動き? いやそれならもう上手くいっている筈だ。もっと他に、何かないか、何か。
あっ、ヤバイ! MPが残量が少ない! どうするどうする!?
「ああっ! そうか! 魔力の総量を変えようとするから上手くいかないんだ!」
今回必要なのは減らす減らさないじゃなくて偏りだ、既に注ぎ込んだ魔力を別の場所に動かすんだ。魔力を外に逃がさないだけなら、それほどMPの消費も必要ない。よし実践だ。
ハサミは既に青い魔力が纏った状態で開いている、ここから下の魔力を上に向かう様に根元に移動させる。すると、ガキンッと金属音に近い音がなりハサミが閉じ、木は真っ二つになった。
「おぉ~、こりゃまたスゲー威力、相手によっては一撃必殺だな」
まだまだ問題はあるが使い方は把握した。後はこれの性能を100%発揮できる様に練習するだけ。やってやるぞ!! でもとりあえず今は、切ってしまったこの木だ。ハサミを抜いても開いても倒れてしまうだろう。どうすれば良いだろうか?
シザークラブハンマーの使い方講座
自分に絵を描く才能があれば良かったのですが
絵は本当にポンコツなので文章で解説させて頂きます
実在の蟹のハサミは大半は構造上、下側しか動きません。
そこで下側のハサミに魔力を流す事で動く仕組みになっています
対応スキルは【魔力制御】
上のハサミに魔力を流すと魔力の刃が出ます
これは道具としてのハサミの性能を魔力を使って再現しています
こちらの対応スキルは【魔具生成】
そしてハサミの射出機構
こちらは【鞭術】と【魔力制御】【気力操作】が対応スキルになってます
ジン以外のプレイヤーも装備出来ますが
全てを使いこなすには同じスキルを持っている必要があります
この作品のユニークと名が付く物は大体スキルに合わせて能力が決定するので
俺必殺技ならぬ、マイロマン武器がドロップする様になっています
ユニークウエポンはイベントモンスターやボス等の
特殊な個体がドロップする設定になっております
では、何故報酬として出たのか、それは……まだ秘密です