22『レイドボス情報』
5月最後の更新です
今月は話が進んだな~
「それで村はどうだったんですか?」
遅れた罰とか言って彼女達の食事を用意する片手間に村の事を聞いてみた。てか、おれに料理させる為にユキムラ君に催促メールを送ったんじゃないかな、この人達。
ちなみにユキムラ君は森の中を奔走中だ。デザートが食べたいと言うネリネさんの要望を叶える為に果物を探している。ポイント交換で済む話だろうに探して来いとは、厄介な姉を持ったなユキムラ君も。
「あぁうん、まぁまぁ、だったかな?」
「誰もそんな抽象的な感想聞いてるんじゃないですよ」
「分かってるわよ、ちょっと待って整理するから」
アヤメさんの言葉を聞く限りあまり良い印象では無いようだ。クエストを受けられるって話だった筈だが、他に何かあったのかな?
「まず最初の印象は寂れ果てた村って感じ、その割には人は住んでるんだけど、そうね、滅びゆく村って言うのが一番しっくり来るかしら」
「滅びゆく、ですか」
「物資は物々交換で紙幣や硬貨は無し、もちろん私達が持ってるお金もダメ、クエストってのも物々交換出来ないなら働いてって感じね」
「労働に対する報酬って事ですね」
う~ん、あんな機械の腕を作れる程の文明があったにしてはえらく古めかしい生活をしているみたいだ。受け継いだ技術とかはなかったのかねぇ?
「私達は村で情報を集めてみたんだけど、それがまた厄介で」
「厄介?」
「村に辿り着いたプレイヤーが根掘り葉掘り聞いて回ったみたいなんだけど、それで情報が価値になるって気づいたみたいなのよ、村人の方が」
「おかげで図々しいレベルで色々要求されるのよ! あれをして欲しい! それもして欲しい! あれが欲しい! それも欲しい! これも欲しい! しかも情報は小出し小出し! やってらんないわよまったく! あっこれおかわり!」
貴女も人の事言えないですよ、と言ってやりたいが自重する。絶対面倒な事になるのは目に見えてるしな。
焼き終えた肉をビウムさんとネリネさんが急造した金属の皿に乗せビウムさんに渡す。この皿を作った事だけは評価出来る、さっきはまな板に乗せて食ったしな。それに比べれば文明的なったもんだ。
「それで、情報は集まったんですか?」
「とりあえずは、ね」
「情報の裏付け程度は取れました、例えばレイドボスの名前とか」
「名前ですか、攻略法とかは?」
「そんな情報集まったらこんなに疲れてません」
「そうですか、それでボスの名前は?」
名前からボスの特徴が分かるパターンもあるし、結構重要な情報なんだよな。
「北の湖は【メイズオクトパス】、村人の話では湖は海に繋がっているそうで海水と言う話です」
「水の種類はともかくメイズですか、何をもってメイズなのかが気になる所ですね」
「それ以上の事は村人にも分からないんだって! 理由は戦った事が無いから! 自分達の生活圏なのに討伐意欲が無いってどうなのよ!」
「危険に近付かないようにしてるんでしょ? 無難な判断じゃ無いかしら」
その村の規模は実際に見てないから正確には分からないが、生き残る選択としては間違いないとおれは思う。
もし戦って村まで被害にあったらやりきれないだろうしな。
「次は西の森の主【ミミックファルコン】、空と同色の翼を持ち森の中を神出鬼没に強襲してくるとか」
「ミミック? ミミックってあの宝箱に潜んでる?」
「意味その物は擬態だってと昔聞いた気がするから、何かに擬態してるんじゃない?」
「掲示板の情報からは~、突然現れるってことらしいですから~、まずは奇襲をどうにかしないとどうしようもない気がしますね~」
擬態、擬態か~。幼虫の擬態を知っている俺としては非常に大変な相手だと思ってしまうな。隠れられたら見つからないからな、このゲームの擬態は。
「東、火山周辺を徘徊するのは【ラーヴァガーディアン】、臨戦態勢に切り替わると全身から火を吹くらしいです、名前から考えて火は溶岩の可能性が高いと考えられますね」
「そんなのどうしようもないじゃないですか」
「話じゃ敵対行動を取らない限り切り変わらないみたいだから、手を出さないが1番良いでしょうね」
「戦うなら私のような遠距離系の武器を使わざるえないですね、もし、攻略する人がいたらそちらに合流しても良いですか?」
「別に良いわよ! 私達じゃ何も出来ないしね! でも事前に言っといてよ!」
「了解です!」
遠距離武器か~、俺だと魔力剣とネイの魔力弾になるけど、あまり活躍出来そうにないな。
「最後は北の崖、名を【チャームプラント】特定の動物を誘導する香りを漂わせて待ち伏せをするそうです」
「最後? 南の竜は?」
「それが、あの竜の情報は村人から集められなくて」
「どうも最近現れたって設定みたいなのよ、竜の事を聞いたら教えてくれてありがとうって言われたわ」
ふ~ん、てっきりあの竜がいるから森に動物が住んでいないと思ってたけど、そうか、最近なのか。それならなんで森に動物がいないんだろう? 気になるな。
「あの竜の事は謎ですが、4体の危険なモンスターがいるのは分かりました、そこで──」
「ただいまー、果物取ってきたよー」
「おかえりー」
ネリネさんが何か言おうとした時、ユキムラが帰ってきた。話の腰を折るタイミングになってしまったが返事は返すべきと返事をした。ネリネさんの目付きが少々、いや若干鋭くなった気がする。
そもそも取ってくるよう言ったのはネリネさん本人だ。睨むのは筋違いだろ。そんなネリネさんの様子を見てユキムラ君が困惑する。
「え~、と、僕何かした?」
「……別に」
「そ、そう、それなら良いけど、はい、これ果物、柑橘系ばっかりだけど」
「ご苦労様、次からは気をつけなさい」
「は、は~い」
だからネリネさんの要求がおかしいんだよ、どうしてこう自分が絶対正しいって姿勢を崩さないかなぁ。本当に自分が悪いと判断したら謝れるのに。
あれだな、悪いと思うハードルが高過ぎるんだな。リアルでもあれなら相当人に嫌われてそうだ。
「コホン、それでですね、これか──」
「あっ! それ私が狙ってたのに!」
「数が少ないんだから諦めなさい、それと要求するならその両手の物を片付けてからにしなさいよ」
「欲しい物を欲しいって言って何が悪いよ!」
「数が少ないから自重しろって言ってるの! そんなに欲しいなら自分で取りに行くなり交換するなりしなさい!」
「今アヤメが持ってるのが良いの!」
「だったら諦めなさい! これは私のよ!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着きましょう、どうです? 私の持つリンゴモドキでも食べてみては」
「それ~、リンゴの見た目したミカンですよね~」
「はいっ! たまに見つかるバグ食品らしいです、【シングル】ではよく流通している食品の1つでして、ああ【シングル】って言うのは私が拠点にしていた帝国の街の名前でして」
「へぇ、名前からするとこっちの【アイン】と同じ感じがしますね、もしかして最初の街ですか?」
「その通りですユキムラ君、あの街にも色々お世話になりました、今は事情があって離れていますがまた行きたいですねぇ」
「あれ? 帝国の食品を何故カンナさんが知ってるんです?」
「【アイン】で買ったミカンに混じってたんですよ~、あの時はびっくりしました~」
「なら、ランダムで発生するレア物とか?」
「いえ~、これはバグですよ~、食べた時の残念な感じがなんとも言えないので~」
「そうですか? 私はこれ結構好きなんですけどね、ちなみに帝国のどこかにこれ専門の生産施設が──」
「皆さん私の話を聞いてください! 大事な事なんですよ!」
話を無視され置いていかれたネリネさんが叫んだ、よく見れば若干涙目? ふむ、ネリネさんには放置系の対応が効くのかもしれないなぁ。と思いつつエンクさんに貰ったリンゴモドキを1つ食べる。
うん、食感はミカンなのに味はリンゴ、このミスマッチ感、確かに残念だな。
と言う訳でボスの名前判明回でした。
流石に1週間で全てのレイド戦には参加出来ないので
戦うのはこの内1体になる予定です
読者の皆様はどれと戦いたいですか?
まぁ、答えられてもシナリオを変えるつもりはありませんが
それでは、また次回!




