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不思議な国の…俺?  作者: 田中AG
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第4話

そこは町というよりは集落だった。

しかしちゃんと店はあるし、動物オンリーだけど住人もたくさん住んでいる。

ただ…。

人間用の建物がひとつもなかった。

まあしかたがないけど。

町に着いた時、ここは本当に町なのかと疑問に思ったのもしかたのない事だろう。

町の入り口には大型犬が座っていた。

俺の姿を見てグルルと怒りをあらわにする。

ハスキーだ、やべえ。

回れ右して逃げようと思ったが助け舟が来た。

「やあひさしぶり」

左手にのっかてたトムが声を上げる。

その声に気づいたハスキーは怒りを収めシッポを横に振る。


ヒサシブリ


トムに近づきながら片言でしゃべる。

「主はいるかい?」

親しげにトムが話すがハスキーは少し警戒する。


ヌシハイルガ、ソノニンゲンハナンダ?


俺をじろっと睨む。

「私の恩人だ。名前を授けてくれたんだ」

トムの言葉にハスキーは目を剥く。


ナマエヲサズケテクレタ!?


とても驚いてるようだ。

「その通り。すさまじい力を授かったよ」

トムはとても嬉しそうに俺を見る。


ナルホド、デハサキホドカンジタチカラハオヌシノシワザカ


「いやあれはこちらにいる武田様の力だ」

トムの言葉にさらに驚く。


アレホドノチカラヲコノニンゲンガモッテイルノカ?


近所迷惑なことをしてしまったな。

反省反省。

「あれは武田様からすれば軽い遊びだよ」

まあ確かに軽すぎる遊びではあったがハスキーは驚愕しているぞ、かわいそうに。

まぁ俺の責任だけどな。


ア、アレホドノチカラガアソビダト!


「私もとても驚いたけど何気ない仕草で簡単に作っていたよ」

ハスキーは尻尾を股に挟んでいた。


ワ、ワルイガコノマチニイレルワケニハイカナイ


おっとまさかの出禁だ。

「じゃあせめて主に合わせて欲しいのだけど」

トムの提案にソレガイイと主を呼びに行った。

「大変申し訳ありません。私が至らないばかりに」

なにを言っている。

悪いのはすべて俺だ。

そう言ってトムの頭をなでる。

トムはとても嬉しそうに目を細める。

そして待つこと10分。

ハスキーが急いで戻ってきた。


モウスグヌシガクル


おー、主が来るか。

って何だ!

すごい形相の熊が四足でこちらに向かってくる。

ぎゃーーー!

悲鳴こそ出なかったが足がすくんで動けなかった。

シンダフリヲシナイト…。

そしてずいぶん手前からブレーキを掛け俺の目の前で止まった。

そして二本足で立ち上がる。

2メ…いや3メートルはゆうにありそうな熊だった。

「やあ久しぶり!」

硬直してる俺の左手の上で嬉しそうに挨拶するトム。


ヒサシイナ


熊は立ったまま俺を威圧している。

いやもうすでにそんなことをなさらずとも恐慌状態ですよ。


ホウニンゲンノクセニワレヲコワガラナイカ


俺は一体どんな顔をして熊を見てるのかわからないが、熊はなにやら納得してるようだ。

「当たり前ですよ、この私でも勝てなかった相手ですからね」

こらこら、そんな風呂敷を広げるな!

俺なんて物理でワンパンだろ!


ナルホド、サキホドノチカラガコノニンゲンノシワザトイウノモウナズケル


納得しちゃったよ!

どうしよう、どうすればいいんだ?

「はじめまして、俺は武田というものだ。君の名前は?」

いろいろ考えても何にも浮かび上がらなかった。

口先だけで喋っちゃてるよ今。


ワレニナマエハナイ


「それじゃ不便だから名前をつけてあげようか?」


ナ、ナンダトーーーーーー!


怒号が響いた。

おおお、怒らせてしまった?!

死んだ、俺絶対死んだ!


ホントウニワレニナマエヲツケテクレルノカ?


へ、名前?

俺はさっき何を言ったんだ?

「おおお!主にも名前をつけてくれるとは!武田様はとても寛大な方だ!」

近くにいたハスキーも目を輝かせている。

そんな事言ってしまったのか。

だったら名前考えないと。

…浮かばない。

全然浮かばない。

熊なんだから熊の名前でいいか。

グリズリーとか有名な名前だけど、あれはヒグマの亜種だったか。

それは種の名前であり名前として使うのはダメか。

呆然とした頭で考えていたら、これまたさっきよりもすさまじい怒号が響いた。

その怒号で俺の頭の中に何かが切れた気がした。

そして俺はホワイトアウトした。



気がつけば俺は干し草の上で寝かされていた。

ここはいったい…。

頭を振り周りを見るとトムがいた。

「武田様が目覚められた」

誰に言ってるのかわからないが、そう告げると俺のそばまで走ってきた。

いや飛び跳ねてきた。

「大丈夫でしたか?」

何だ、一体何があったんだ?

たしか町に着いて誰かと話していたような…。

「意識が戻ったか」

人影が近づいてきた。

誰だ?

薄暗かったがすぐに目が慣れた。

真っ裸な野性美溢れる青年がこちらに近づいてきた。

アァーー!

お、俺にはそっちの趣味はないぞ!?

「武田様、あなたにはとても感謝している」

そう言うなり俺の真横に座る。

え、えっと。

「ととと、とにかくふふふふくをききききたほうがいいんじゃない?」

すごくどもりながら青年から離れる。

「大変申し訳ない。我々には服は不必要だったのであいにく持ちあわせがなくてな」

いやいやだからって裸でそのプラプラさせてるのはどうかと。

「不快でしたら元の姿に戻しましょうか?」

そう言うと青年は変身した。

熊に。

──っ!

「こちらの姿の方が落ち着くのか?」

オモイダシタ。

この熊と話をしていて気を失ったんだった。

あのバインドボイスやばいだろ。

「そ、その姿はとても凛々しいが、少し手狭になるので人型のほうがいいかな?」

ほぼ棒読みで提案した。

この姿の熊と一緒にいるよりもまだ裸の青年と一緒の方が身の安全が保障できるだろう、多分。

「そうだな、ここはそんなに広くないからな」

また青年の姿に変身した。

「まさかこの我にも名前を頂けるとは。このグリズ一生の感謝です」

グリズ?

え、名前なんてつけたっけ?

もうまったく覚えてない。

「名前をつけるには膨大な魔力を必要と聞きいた事がある。その魔力を惜しげもなく我に注ぎ込んでくれるとはさすがは武田様だ。トムが負けたというのもうなずける」

「その通りです。私と主、いやグリズ殿に名前を授けたのにこうして生きておられるのです。さすがにお疲れで気を失ってしまわれましたが」

え、そう言う事になってるんだ。

ぶっちゃけると、お恥ずかしながらびびって気を失っただけなんだけどな!

でもわざわざ情けないことをばらす必要もないし、話の流れのままにしておこう。

「いやまあなんにしてもよかったよ、何事もなくて」

しかし変身能力とか凄いな。

「さすがは武田様、もう魔力が回復しているようだ」

え、そうなの?

「そうですね、武田様から先ほどまでの魔力を普通に感じられます。さすがです」

さすがなのかどうかはわからないけど…。

名をつけると魔力が減るというが、まったくその感覚がわからない。

そもそも魔力を感じたことすらないからな。

…ぐぅぅ。

しまった。

おなかが鳴ってしまった。

ハズカシー。

「おやこれは失礼した。トムからいろいろ聞いているので食事の用意も出来ているぜ」

おお!

トム君ナイス!

「外で宴会の準備も完了している。皆も武田様を一目みたいと集まっているので皆へ是非あいさつをお願いしたい」

ええっ。

挨拶とか苦手だな。

だがしかし食事を用意してくれてるんだし恩を返さないとな。

多分グリズのであろう家から出た俺は驚いた。

家の前は大きな広場だったけどそこにはもう動物動物、そして動物とたくさんの動物がいた。

俺の姿を見た町に住む動物たちは口々に叫ぶ。


オオ!ニンゲンダ

ヌシニナマエヲサズケタニンゲンダ

ココロビロキニンゲンダ


イロイロな声があちこちからする。

街にいる半数は犬だ。

熊もそこそこいる。

あとヤギにネズミ、じゃないモルモットか。

それにフクロウもいる。

「静まれ!武田様のお言葉を拝聴せよ!」

いや、いやいやそんなに敷居を上げられてもな…まいったな。

「えーコホン。俺は武田という名前だ。今回は俺のわがままでこの町に迷惑を掛けてしまって申し訳ない。なのにこんな俺のためにこのような宴会まで開いてくれてとても感謝してる。もちろん受けた恩はきっちり返すつもりだ。何かあったら遠慮なく言ってくれ!出来ることは何でもするつもりだ」

…しーん。

あれ全然受けなかった?

もしかしてやらかしてしまったか!?

「みな聞け!武田様は我らの為にあの憎きワニとリスを退治してくれるそうだ!みなの望みは我の望み、あ奴等の暴虐を見事武田様が解決してくださるであろう!」


オオオオーーー!

タケダサマアリガトウ!


広場に割れんばかりの歓声が広がる。

え?

なんか話大きくなってない?

ってか社交辞令を本気で受け取らないでくれ。

「さすがは武田様、このトムとても感服いたしました。その偉業を是非とも私にもお手伝いさせてください」

トムもかなり興奮している。

え、もう決まり事なの?

え、え、えええー!

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