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不思議な国の…俺?  作者: 田中AG
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第2話

気がつけばそこは見慣れぬ場所だった。

森?のような場所だった。

…何故こんな場所にいるんだ?

その答えはすぐに思い当たった。

立花だ。

ヤツに部室へ入るように急かされた。

部室に足を踏み入れるとそのまま落下のような感覚の後に気を失った。

そして今に至る、と。

空を見上げるが、生い茂った木々が邪魔をしてよく見えなかったものの、どうやら普通の空のようだった。

ハっと反射的に体に手を這わすが、どうやら怪我とかはないようだ。


ニンゲンダ、ニンゲンガイル


不意に声が聞こえた。

周りを見ると木の枝にリスが3匹いた。


コンナトコロニニンゲンガイルゾ?


また声が聞こえた。

口パクがあってないように見えるが、どうやらリスがしゃべってるみたいだ。

どういうことだ?


ニンゲンダ

ニンゲンダ

ニンゲンダ


急に合唱するかのようにニンゲンを連呼し出した。

すると周りから別の声が聞こえた。


ニンゲンガイル

ニンゲンダ

ニンゲンガイルゾ


まわりを見渡すとどんどんリスが増えていった。

何なんだいったい?


ニンゲンハテキダ

ニンゲンヲコロセ

ニンゲンヲヤッツケロ

ニンゲンヲタベチャエ


いや待て!

リスは肉食じゃないだろう!

などと冷静にツッコミを入れてみたが、どんどん増え続けるリスに恐怖していた。


ヤッツケローー!


合唱が起きてリスが一気に襲い掛かってきた。

俺はあわてて立ち上がり、手元にあった何かを掴みながらその場を逃亡した。

必死に逃げるがリスの大群は次から次と現れてどんどん俺の体に飛び乗ってくる。

手で払いのけると、先ほど掴んだ物が飛んでいった。

それは俺の弁当箱だ。

地面に落ちると弁当を包んでいた布がほどけそのまま弁当の中身もバラけた。


ナンダコレハ?

タベモノカ?

ナンダコレハ?

ナンダナンダ?


リスたちは俺の弁当に飛びつき一瞬で食べ終わった。


オイシカッタ

モットタベタイ

モットヨコセ


そして一斉にこっちへ振り向いた。

俺はすぐさま逃げ出した。

なんなんだよ!

木の実でも食っとけよ!

などと心でツッコミをいれながら必死に逃げる。

無我夢中で逃げていると少し先に森の出口が見えた

一気に駆けて、ようやく森を抜けた。

目の前には大きな湖が広がっていた。

後ろを振り向くが、リスたちは森からは出てこなかった。

湖の近くで息を整え、そのまま座り込んだ。

何だったんだいったい。

全速力で走ったのでとても喉が渇いていた。

幸いなことに湖が目の前にあるので水が掬えるところまで入り、両手を使って水を飲んだ。

一心不乱に水を飲んでると目が合った。

そう何者かと目が合ったのだ。

そして俺は固まってしまった。

その何者かというのは、とても巨大なワニだった。

俺は後ろに倒れる感じでしりもちをついてしまった。

…もう走れるほどの体力がない。

なによりびびってしまって体が硬くなってしまった。

だめだ食われる。

そう確信した。


ニンゲンヨ、ココデナニヲシテイル?


目と鼻の先にワニの顔があり、大きな口を開けながらしゃべってきた。

恐怖で口が開かなかった。

オビエルコトハナイ、ワレハミズクサシカタベン。

体は硬直しているが心でなんでやねん!とツッコミを入れた。

「いや、その…」

なんとか口が動いてくれた。

「リスに追われて逃げてきて走ってたからのどが渇いて…」

呆然な表情でなんとか答えることができた。


リスカ、アレハキケンナモウジュウダカラチカヅカナイホウガイイゾ


ええっ?


シュウダンデオソッテキテトテモキケンナイキモノダ


ちょっとまて、あなたの方がよほど怖いですよ。

口には出さなかったがとても率直な感想だ。

今も目の前で口を大きく開けながらしゃべるワニには、恐怖しか感じない。

「ち、近づかないように注意します」

そういうとソレガイイチカヅクナと釘を指してくれた。


オマエハナゼコンナトコロニイル?


まったく表情が読めないけど心配してくれているのか?

「気がついたら森にいて、そしてリスに追われてここまで逃げてきたんだ」

だいぶ落ち着いてきたのか普通に喋れるようになっていた。

もちろん目の前のワニの姿が恐怖過ぎて体はまったく動かせないけど。


ソウカ、ソレハナンギダナ


どうやら心配してくれているようだ。

やさしい草食のワニなのかな?

いやそんなワニは普通はいないよな。

まあ肉食なリスもいないけど。

少し悩んだが、あることを質問した。

「この世界には人間はいるのか?」

さっきからニンゲンニンゲンと言ってるから勿論存在はするとは思うけど。


ニンゲンハマチニイル


やっぱいてくれたか。

じゃあ次の質問だ。

「その街ってどこにあるのかな?」

ワニは体を右に向けてアッチニイルと答えてくれた。

「じゃあそこに行ってみることにする。ありがとう」

俺が礼を言うと、ワニはそのまま湖に消えていく。


イクカ、ウサギニハキヲツケロ


そういい残して。

ワニの姿が見えなくなるまで見送ってから、ようやく腰を上げた。

そのまま先ほど座り込んでいた場所まで戻り、今度は大の字に寝転んだ。

なんなんだこの世界は。

リスが襲ってきてワニが草食で。

それ以前になぜ喋ってくるんだ。

おかしいだろう。

目を閉じる。

これも全部立花のせいだ。

何の恨みがあるんだよ。

くそ。

…。

……。

ああ、なんだかいい気持ちだ。

極限まで走りそして恐怖で体が硬くなっていたので、こうやってのんびり転がるととても気持ちがいい。

そういえばさっきのワニが忠告してたな。

ウサギには気をつけろとか。

ここは動物の役回りがまったく逆なんだな。

そろそろ街に行かないと…。

しかし疲れた体を起こすことが出来ず、俺は寝息をたててしまった。



「な、なんだこりゃ!?」

気がつけば体を拘束されていた。

どうやら眠ってしまったようだ。


ワァオキタ

オキタオキタ

ダイジョウブ

チャントコウソクデキテル

モンダイナイ

モンダイナイ


次々と言葉が耳に入ってくる。

体は動かなかったが首はある程度動いた。

体の状況を見ると地面にヒモのような物で固定されていた。

「ガリバーかよ!」

周りを見るとたくさんのインコが必死に縄を固定してる杭をくちばしで押さえつけてた。

「おいこのヒモをほどけ!」

大声を上げるとインコたちはクモの子を散らすかのように走って逃げた。


ニンゲンコワイ

ワレラタベラレル

ハヤクオサエツケナイト

オマエイケヨ

イヤダオマエガイケ

イヤダヨ


どうやらインコたちは人間が怖いらしい。

だから拘束しているのか。

でもこんなことしなくても、近づかれたら飛んで逃げれるだろうに。


ワレワレノスヲマモラナイト

イソゲイソゲ


巣?

近くに巣があったのか。

「聞いてくれ。ここで寝てたのは悪かったが、俺はお前たちの巣にはなんの興味もないんだ。だから解いて欲しい」

やさしい口調で諭すように言ってみた。


キイタカ

スニキョウミガナイトイッテイタ

ナラダイジョウブダ

デモニンゲンハウソヲツク

ソウダッタ

ニンゲンハウソヲツクワルイイキモノダッタ

ヤハリオサエツケナイト


「いやいやまったまった。確かに人間は嘘をつく。それは認めるが、俺は巣にはまったく興味ないんだ。信じてくれ」


アノニンゲンハキョウミナイトイッテイル

デモウソヲツクトミズカラミトメテイル

ドッチナンダ

イイモンカ

ワルモンカ


かなり疑心暗鬼のようだ。

「俺は良いもんでも悪もんでもない。ただ街に行きたいだけだ。たのむ」


イイモンデモワルモンデモナイトイッテイル

マチニカエリタイミタイダ

ココカライナクナッテクレル?

ソウカモシレナイ


よしよしいい感じに話が進んでいる。


デモニンゲンハキケンダ

ソウダキケンダ


おいこら話を戻すな。

「大丈夫、全然怖くないよ。さっきリスに殺されそうになるくらい弱いよ」


リスヨリヨワイノカ!

ナラアンゼンダ

サッサトココカライナクナッテモラオウ

ソレガイイ

ソレガイイ


リスってそんなに凶暴なのか。

インコは俺に危険がないと判断して、ヒモを次々とかじって切っていく。

ようやく自由になれた。

俺は体を起こして伸びをする。

そして立ち上がり周りを見渡すと地面になにやら穴が開いている場所を発見した。

あれがインコたちの巣なのかな。

ちょっと見てみたいが、近づくと攻撃されそうだしやめておいた。


ヒモヲトイテヤッタ

サッサトココカライナクナレ

サアイソゲ

イソゲ


すごい睨まれているがまあここはこいつらの言う通りにしておこう。

「あっちに行くんだけどあっちにリスはいる?」

さきほどワニが教えてくれた方向を指差す。


アッチニハリスハイナイ

アッチハダイジョウブ

ウサギガイルダケ

ソウウサギダケ


ウサギか。

ワニが気をつけろとか言ってたか。

「ありがとう」

じゃあなと言って手を振る。


アイツウサギニヤラレルナ

カワイソウナヤツダ

ウンカワイソウ

カワイソウ


なんだか後ろで不安を煽るセリフが聞こえた。

ウサギか、やばそうだな。

不安を残しながら人間の街を目指した。

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