校長室なんて…だるい…
体を引っ張られ5分。そろそろ気持ち悪くなってきた頃に、僕が連れてこられた部屋のプレートには校長室と書かれていた…
ここには学園中の誰よりもめんどくさい人がいる…
ギギッ…、
重たい扉が、古びた音を立てて開く。どうして、偉い人いうのはこうも物を大層荘厳にしたがるのだろうか?大きな扉ほど開けるのに体力を使うというのに。そうなるとどれだけ小さいかの方が重要じゃないのか…精密化して省エネってのが重要なんじゃないかと僕は思うんだよね…
「おい、夜空 リン。聞いているのか?」
いつの間にか中に入っていたらしい。
僕は1人、その人物の前に立たされている。
扉の隙間から、ハル先生が僕の方を見ていた。いや覗き見てるのバレバレですよ…
改めて、目の前に偉そうに座っている人に目を向ける。
メガネをかけて、いかにも校長ですと言った面持ちのおばさんが座っている。
本当にめんどくさい…何故なら…
「私が心を読めるのを知っていておばさんと罵ったのかね?失礼ですよ。リン。」
そう、この人は…人の心が読める。まぁ、それだけであって他の魔法や武術はいたって一般レベル。その能力だけで校長の座に着いたと言っても過言ではないと僕は考えている。というか、そもそも僕の気持ちが読めるのなら、僕の気持ちを尊重して今すぐに家に帰らしてもらえないだろうか?
「はぁー…あんたの心読んでると私の心まで荒んでくるよ…」
「はぁ…まぁよく言われますよ。それより僕がここに呼ばれた理由はなんですか?」
心を読まれる機会なんてそうそうないだろ!なんていうツッコミを自分で入れるが、校長はクスリともしない…この人…本当に苦手だ。
「リン…あなたは本当に…」
そう言って、ため息をつきながら彼女は机の中から、一枚の紙を出してきた。
「用事というのはこれですよ…」
僕は紙を覗き込む。
「騎士検定?」
騎士検定…アパレス学園の生徒のみならず国中の生徒が受けることになる騎士としての階級を決める検定。その階級は星の数で表され、その星によって個人個人に仕事が振り分けられる。最高の階級になると星は5つとなるが…まぁ、そこまで行くと国への奉仕義務から始まり、この学校では、生徒会への参加の義務化、学年指導の義務化など多数の義務が付きまとう。名誉職であり、生徒の憧れであるのは確かだが、僕からしたら、ただただめんどくさい制度で、真面目にやってる人たちを尊敬するばかりだ。
「はい。そうですよ。リン。あなたは1年から2年に上がるために必要な騎士検定に参加しませんでしたね。」
確かに1学年の最後、学年末に行われているテストだ。だが…
僕は入学時のパンフレットを思い出す。確か、特に参加しなくても進級はできたはずだ…
「それがどうかしたんですか?その日はちょうど僕は風邪気味で…」
咄嗟に嘘をつく。めんどくさいことは極力避けたい…
「リン。私が心を読めるのを知っていて言ってるのですか…まったく…」
読めるのは知っている。だが別にそれが校長1人にばれたからといって今更どうなるというのだろうか?休んだ日は戻ってこない。隠す方がめんどくさい…
僕は改まって校長を見る。
「それで、騎士検定がなんですか?参加義務は無かったですよね?」
「いやー。それが、去年からちょうど義務化になったのです…各クラスホームルーム及び、正面玄関入り口にて三学期の初めから掲示していたのですが…1人で不参加で終わった生徒がいましてね…」
校長はこちらを見ていた。明らかに工作だった。そんなわけがない、もし変わったとしてもなんとでも連絡方法はあったはずなのだ。
「校長。それで僕は留年ですか?少し理不尽な気がするんですが?」
僕は3学期ほぼ学校へ行ってないのを棚に上げて抗議する。それでも最低限の義務は行っているはずだ…
「そう思いますか…わかりました、ではこうしましょう。」
校長が少し笑った気がする。僕はそこで悟る……嵌められたのだ。何か僕のがやることになる…
そこにあったのは決闘書だった。決闘書…騎士における日常での戦闘行為は禁止されている。騎士道精神に反するそうだ。そこで何か問題があった時には、決闘という形をとる…だがらって、どうして僕が決闘…
「検定の代わりにするということです。相手はあなたと同じ学年の女の子子…あっ、ごめんなさいね。同じ学年だった女の子です。もし勝てましたら、その子と同じ階級認定を受けれるように手配しますよ。」
「やらないと言ったらどうなります?」
一番めんどくさくないであろう方法を模索する。星1の女の子と戦って学年を上げるか。このまま帰って寝るか。今は寝る方に天秤は傾いている。戦闘なんてめんどくさい…
「断ったら、退学です。」
天秤が校長の手によって強制的に決闘へ傾けられた…退学はいろいろとめんどくさい…会いたくない人に会うことになる…
「わかりました。やりますよ…何時からですか?」
「今からよ。」
「………」
嵌められている気がしてならない。なんだこの手際のよさは…これは何か探りを入れ…
「それでは、ハル先生。リンを闘技場まで逃さないように、連れて行ってあげてください。」
僕が校長に何か言うよりも早く、何時のまにか後ろに立っていたハル先生に引っ張られた。
「わかりました!校長先生!!!」
僕の体はまた宙を浮いて引っ張られることになった…