ラストマジック
暖かい暖炉のそばで、老婆は女の子に絵本を読んでいました。読み終えた老婆が絵本を閉じると、女の子が聴きました。
「ねぇ、おばあちゃん」
「なんだい?」
「この絵本、パパが作ったの?」
「そうだよ。パパはお絵かきも、お話を作るのも上手なんだよ」
「へぇー。じゃあ喋る雪だるまさんは、ほんとはいないの?」
「いるよ。お口は動いてなかったけど、ちゃんと喋っていたんだよ」
「おばあちゃん喋る雪だるまさんとお話した事あるの⁈」
「あぁ、1度だけね。海の見える小さな街に住んでいた時に、大雪が降ってね、雪だるまさん作ったら喋ったんだよ」
「いいなぁ。私も海が見える街に住みたい!」
「海はないけど、近くに山ならあるね」
「山なんてつまらないよ!ねぇおばあちゃん、私が今日作った雪だるまさんもお話できないかな?」
「どうだろうね。お話できるといいね」
老婆は女の子を寝かせつけると、家の外に出ました。外は真っ暗で、星が綺麗に見えます。老婆は女の子が作った雪だるまの前にしゃがみこみました。
「今日あなたの話をしたのよ。あれ以来雪が積もらなくて、雪だるまを作らなかったのよね。気づいたら私は大人になっていて、今の旦那と結婚して、子どもができたの。旦那の仕事の転勤でこの山の近くに住むことになったのよ。前より大きな家でね、今は息子と、息子の家族みんなと過ごしているの。孫のサラテがとてもかわいいの。あなたもみたでしょ?自慢の孫なのよ。今の私はしわくちゃおばあちゃんだから、久しぶりにあってもあなたはわからないかもね」
老婆はそう雪だるまに話すと、立ち上がって家に戻ろうとしました。
「ほんとだ、しわくちゃおばあちゃんになってるね。だけど僕にはわかるよ」
老婆は雪だるまを見ると、微笑みました。
「やっぱり、笑った顔が1番可愛いよ。久しぶりだね」
「あなたは相変わらず生意気なのね。久しぶり」
fin.