第1話 勇者選定
この作品は超不定期更新です。
それでも構わないという方はご一読下さい。
量産される勇者 俺はそのうちの1人だった。
魔王による脅威に国が動き出し、ある物を開発したのがきっかけだ。
ごく普通の人間を適当に選び国が開発した得体の知れない液体を国の命令で体内に注入されることで勇者の力を得ることが出来る。
そして約一ヶ月に一人、人工的に勇者が誕生していった。
そしてついに俺の番が来た。
城の一室で静かに行われる作業。
鮮やかな青色の液体、注射の針が俺の皮膚に刺さり腕から液体が流れ込んできた。
液体が流れ込んできてから急激に体温が下がったような気がして寒気がしてきた。
もしかしたらこのまま死ぬのではないかと考えたが死にはしなかった。
これから気持ちの悪いモンスターにじわじわ殺されるよりかはここで死んだ方が良かったなんて思いはしたが、どうしても死ねない、少なからず生きたいという気持ちはあった。
次に王女との謁見、通過儀礼ともいうべきか
勇者の魔王討伐の誓いと王女の激励のお言葉、定型文の出し合い
「必要ないだろ、こんなの」
結局は死ににいくようなものだ。
王女だって死にゆく人たちを見送るのも億劫だろうに可哀そうだなと思った。
「私は必ず魔王を討伐し、この国に平和を取り戻します」
「お気をつけてあなたに神の御加護があらんことを」
思わず笑いそうになった。
いや、実際にやけてしまってたかもしれない
やっぱり、バカバカしいだろこんなやりとり
その後、王女は側近の兵士たちを部屋からだし
俺と二人きりに
ん?
二人きりになった。
「あなたにお話があります」
よく分からないが真剣な顔をしていた。
さっさと魔王討伐に行かせてくれないかと面倒な儀式に退屈していたが、王女の言葉と行動に疑問を感じた。
「これをあなたに渡します」
透き通った重量感のあるコイン五つ俺の手に握らせた。
これも通過儀礼なのだろうか、わからない
「これは国宝の中でも特に力の強い魔道具です、使い方は――」
そこで兵士が部屋の中に入って来て、王女も口を閉ざす。
よく意味は分からなかったが俺はとっさにポケットにしまった。
兵士はそれには気づかずに早く行けとも言わんばかりに俺を部屋の外に追いやった。
今までの勇者には渡さずに俺だけに渡した。
あまりに贔屓な話だ。
それだと俺以前の勇者は無駄死にではないかと
王女は正に一瞬の出会いに一目ぼれをして俺に国宝を与えたビッチなのだろうか。
考え過ぎか、自惚れるのもいい加減にしろ、俺。
仮に、王女に人の力量を見る力があるのだとしたら、俺はそれに当てはまったという事だ。
期待に応えられるのかどうかはわからないがチートアイテムとともに俺は魔王討伐の旅に出た。