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竜となったその先に  作者: おかゆ
第一章 出会い
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第9話 竜、遊ぶ

 俺は今、隙を見てこの小部屋から抜け出そうとしている。

何故って?

それは俺がもう動けるのに、傷が完治するまでは動いてはなりませんって医者の若いお姉さんが言うからだ。

そのせいで、俺はもう1週間ほど外に出ていない。

どこで見張っているのかと思うほど、お姉さんもといルーネさんは俺がベッドから足を床に下ろすたびに、この部屋に入ってくるのだ。

そして、怒られる。


気遣ってくれるのは大変嬉しいが、俺の意志は関係ないんですか!?と思うほどの拘束力だ。

・・・まあ動くと確かに傷は痛むのだが、我慢できないほどじゃない。

よほど激しい運動をしない限り、傷は開かないだろう。


そんなこんなで、ルーネさんが薬を買いに隣町へ出かけているこの絶好の機会を、俺は逃すわけには行かない。

だいたい、こんなに横になってばかりでは身体がなまってしまう。

翼はなんともないんだし、久しぶりに空を飛んでみようかと思ったが、すぐにやめた。

着地時が怖い。

足にかなりの負担がかかるだろうと思った。


ちなみに、ルティは村の子供達にすっかり懐かれてしまい、俺は動けない間、部屋の窓からルティと子供達が楽しそうに遊んでいるのを眺めてホッコリしていた。


そしてついに、俺は部屋からこっそり抜け出した。

そして、長い廊下をクリアして、外への扉を開いた。

太陽の光を直接浴びることができて、とても気持ちよかった。


『セトさーん!』


早速ルティの念話がとんできた。

飛んできた方向を振り返ると、子供達をぞろぞろと後ろに引き連れながら俺の方へ駆けて来るルティがいた。


「おー、ルティ!すっかり人気者だな!」


『はい! セトさん、動けるようになったんですね!』


ルティが頭を足にすりすりしながらごろごろと咽を鳴らした。


「前から動けてはいたんだが、ルーネさんがなかなか・・・ね」


『あぁ、あの人過保護みたいですよ? 子供達がそう話してました』


子供達に言われているとなると、相当な過保護だ。

そう思って、フフッと笑ってしまった。


ルティと会話をしている俺を、子供達は珍しそうに興味津々の目で見ていた。


「お兄ちゃんすごーい!」


「お兄ちゃん虎さんとお話できるの?」


「このお兄ちゃん、ルーネさんがつきっきりで看病してた人でしょ? もう大丈夫なの?」


なんとも可愛らしい様子で、俺の黒い着物の袖を小さな手で引っ張りながらはしゃいだ。

そういえば、この子達は昼間は隣町の学校に行っているとルーネさんから聞いた。

俺がこの村に落ちたとき、子供の姿が無かったのはそのせいか。

ちなみに今日は休日なのだそうだ。

ってことは、この様子だとこの子達は俺が竜だとは知らないわけだ。


(変に敬語使われなくていいし、遠慮もないからこの子達といたほうが楽だ・・・)


子供達を見て、そう思った。


「お兄ちゃんはもう大丈夫だって言ってるのに、ルーネさんがなかなか部屋から出してくれないから、こっそり出てきちゃったんだよ」


子供達は”こっそり”の部分がたいそうお気に召したらしい。


「あー、お兄ちゃんだめなんだー!」


「ルーネさんに言っちゃうよ?」


え、ちょっとそれは・・・。


「あはは、それは困るな。 頼むから内緒にしててくれよ」


俺が口元に人差し指を持っていくと、子供達はまたまた嬉しそうに、同じように口元に人差し指を持っていって、


「いーよ!」


「誰にも言わない!」


「僕らとお兄ちゃんの秘密!」


俺が楽しそうに子供達と戯れていると、足を後ろからカクンとされてちょっとよろけた。

見ると、ルティが少しすねたような顔で俺を見上げている。

子供達とばかりおしゃべりしていたせいだろう。


(おまっ・・・なんて可愛いんだ!!)


あやうくその可愛さに悶えるところだった。

あぶないあぶない。


「何? ルティ」


あえて、なんでもないように話した。


『僕とも遊んでください!元はといえば、遊びに来る途中でこの村に来ちゃったんですから』


むすっとしながらなんて可愛いことを言うんだ。

これを断る奴は俺が許さん。

あ、俺が遊ぶのか。


「もちろんだよ、ルティ。 俺だって、お前と遊びたくて抜け出してきたんだから」


とたん、ルティの顔がパアッと明るくなった。


(分かりやすい奴だなあ)


くい、と、袖を引っ張られた。

ん? と今度はそちらを見ると、子供達がじーっと俺を見ている。


「・・・何?」


「虎さん、ルティっていうの?」


代表して一人の女の子がそう聞いてきた。


「そうだよ。 だから皆も、この虎さんのこと、ルティって呼んであげてね」


笑顔でそう言うと子供達は ハーイ! と元気に返事をして、わっとルティの周りに集まった。


「ルティあそぼ!」


「行こうルティ!」


子供達は口々にルティの名前を呼んで、ルティはそれに応えるように「ガウガゥ」と鳴いていた。


そして、子供達は俺を振り返って言った。


「お兄ちゃん! お兄ちゃんの名前はなんていうの?」


「教えて!」


今度はちゃんと答えられる。

ルティにもらった立派な名前があるんだからな。


「俺の名前は、セトっていうんだ」


教えると、子供達はなにやら集まってひそひそと話をして、もう一度俺に向き直って一斉に言った。


「「 一緒に遊ぼう! セトお兄ちゃん! 」」


ちょっと吃驚した。

でもすぐに、


「もちろんだ!」


と返事をした。


すると子供達は村の外にある大きな木に向かって走り出した。


「セト兄ちゃんも早く!」


「早く来ないと置いていくよ!」


やれやれと思い、「待ってくれよ」といいながら、後を追いかけた。



俺が木の根元につくと、もう何人かの子供はその木に登り始めていた。

そして、結構上まで登った子が、大声で言ってきた。


「この上の眺め、すごいんだよ! お兄ちゃんも見に来てよ!」


「俺はいいよ。 もうちょっと傷が治ってからまた誘ってくれ」


しかし子供達は、「早くー!」などと叫んでおり、聞こえていないようだ。


「まいったな・・・」


『セトさん、大丈夫ですか?』


ルティが俺の前にお座りをしてたずねてきた。


「たぶん大丈夫だとは思うが、万が一ってことがあるだろ? それがルーネさんにばれたときが怖い」


『あはは、確かにそれは怖いですね。抜け出していることじたい、ルーネさんはかなり怒ると思いますよ?』


・・・だよねー。

ルーネさんが帰ってくる前に、俺はあの部屋に戻らなければならない。

さて、どうしたものか。


「あれ、天竜かな!?」


「ばか、あれはただの鳥だよ。 そうそう天竜なんて見れるわけないだろ」


「天竜かもしれないじゃん!」


そんな声が上から降ってきて、俺も空を見上げた。

・・・確かにあれはただの鳥だ。


「おーい、天竜ってなんだ?」


聞くと、子供達は我先にと説明を始めた。


「セト兄ちゃん天竜知らないの?」


「天竜って、翼の生えた竜のことだよ!」


「ただの竜も珍しいけど、やっぱり天竜の方が珍しいんだよ!」


ん?

ちょっと待ってくれ。

竜と天竜の違いが良く分からない。

俺は竜は皆翼が生えているものだと思っていたんだが、違ったのか?


「・・・竜と天竜って、何が違うんだ?」


「あのねあのね、竜は2種類あって飛べない竜と飛べる竜がいるんだけど、飛べる竜は腕が翼になったもののことなんだって!」


「あ、それおじいちゃんも言ってた!そういう竜のことを、普通はワイバーンって言うんだよ!」


「飛べないのはリンドブルムって言うんだよ!」


「天竜は手と翼が一緒じゃない竜のことを言うんだって! だけど天竜って、王族もめったに出会えないくらい珍しいんだって!」


「授業で習ったよ! 先生が言ってたもん!」


なんか・・・一気に説明された。

・・・ってことは、だ。

俺はどうやらそのむちゃくちゃ珍しい天竜らしい。

しかも、飛んでいる鳥を天竜だと子供が思ったってことは、トクサも俺のことを鳥だと思って矢を放ったのだろうか?

トクサに何故と聞いてもなかなか話してくれなかったのは、俺を鳥と間違えたと言えなかったからだろうか・・・。


「へぇ。 皆物知りだな!」


俺がそう褒めると、皆まんざらではなさそうに、一様に胸を張って「そうでもないよ」と言った。

小憎たらしいところがまた可愛い。


「じゃあ、俺そろそろ戻るから」


そう言って子供達に手を振ると、子供達は心底残念そうに


「えー」


と言った。


「俺の傷が治ったら、今度はもっといっぱい遊ぼうな!」


そういうと、


「絶対だよ!」


「またね、セト兄ちゃん!」


と手を振り返してくれた。


「ルティはどうする?」


『ぼくはもうちょっと遊んでます!』


俺はルティの頭を撫でて、あの部屋へと戻っていった。



この後、何が起こるかも知らずに・・・。



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