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竜となったその先に  作者: おかゆ
第三章 ドラーク学院
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第63話 セトの能力

 アーサーのもとに学園で捕らえた怪しげな者たちが送り届けられるのと同時に、セトからの手紙が来た。

手紙には、怪しげな連中の帽子にかけられている術式を何とかしてからでないと帽子は外してはならないとかかれてあった。

外したらどうなるかも。

アーサーはセトに任せろと返事を書いて送った。


「・・・とは書いたものの・・・」


どうしたものか・・・。

術式の解除などという高等技術を使えるものは、ここグランティス大王国にも数えるほどしかいない。

しかも、それには多くの時間が必要になる。

術式の解析がとても難しいのだ。

セトからの報告で、術式がどのような効果をもたらすのかは分かったため、ある程度の時間短縮にはつながるだろう。

構成、効果が分かっても、その解除にはものすごい体力と魔力と精神力が必要になる。

失敗すれば術式の暴発もありうるのだ。

最新の注意を必要とする作業なのだが、セトはそのことを知っているのだろうか?


「・・・なんにせよ、セトに任せろといった手前、やらんわけにはいかんな」


アーサーの言葉に、大臣たちも重々しく頷いた。


その日から、グランティス大王国とその同盟国に緊急の魔術師募集の張り紙が町のいたるところに張り出されたのだった。







 + + + + +







場所は変わってドラーク学園。

スティールの竜騎士学が教室で行われていた。

竜につける武具の名称や、乗り方のコツ、竜の治療法など、竜騎士にとって基本的なことを教えていた。

丁度、治療魔法の解説が終わったあたりで授業終了の鐘が鳴った。


「それじゃ、次は契約竜についてやるから資料集忘れんなよー。終わり!」


日直が起立、礼を言って、授業は終わった。

休み時間に入って、教室内ががやがやし始めたときだった。


 ピュィイイイイイイイイイ!


透き通るような鳴き声が教室に響いた。

俺も含め、教室内にいた全員がその鳴き声の方を振り向く。

振り向いた先にいたのは・・・


「あ、あのときの鳥だ!」


生徒の一人が言った。

そう、窓のほうから羽ばたいてきた青い鳥は、スティールにアーサーからの手紙を届けに来たのと同じ鳥だった。


精霊であるその鳥はまっすぐ俺の方に飛んできて、肩にとまった。

足を見れば、手紙が結んである。


なんとなく生徒の前で広げていい内容ではない気がして、手紙を外すとすぐに青い鳥を窓の外に放った。


『ご苦労様。 ありがとう』


鳥にだけ聞こえるように念話を放つと、鳥は応えるように俺を振り返り、その場で一回転してから淡い光を残して消えた。


さて、と窓から離れると・・・。


「え、な、何?」


生徒たちに取り囲まれていた。

その目は”興味津々”と訴えており、あ、面倒になる と思った。


「セトさん、さっきの鳥はセトさんのですか!?」


「違うよ」


「誰からの手紙なんですか?」


「まだ見てないから分からないよ」


「お城からの手紙ですよね!?」


「どうしてそう思うんだ?」


「スティール先生がお城に行く前もあの鳥来ましたので!」


「へ、へぇ」


「セトさん、何者ですか!?」


「さあね」


何を聞いても俺が曖昧な答えしかしないと悟ったのだろう。

皆一様に口を尖らせた。


「セトさん、竜じゃないんですよね?」


「・・・どうかな」


やばい、少し間があいたか?


「竜じゃないなら・・・」


俺の一番近くにいた男子生徒が、不意に俺の顔に手を伸ばしてきた。


「・・・え?」


「耳の後ろ、触られても平気ですよね」


男子生徒の指が本来角である突起に触れるや否や、その生徒の手を払いのけた。


 パシンッ


教室に、乾いた音が響いた。


角を触れられた反動で若干だが一瞬足に力が入らなくなり、体がわずかばかり沈んだ。


「何してる!」


即座に俺と生徒たちの間にスティール先生が割り込んできた。


(やばい・・・。 体が沈んだこと、生徒たちに感付かれたか?)


俺に手を払いのけられた子は、呆然としてその手を見ている。


(いや、それ以前の問題か・・・。 普通、耳の後ろを触られたくらいであんなに過剰に反応する人間はいないもんな)


若干沈んだ体をさりげなく元に戻しながら、冷や汗をかいた。


(それにこのスティール先生の反応も不自然に受け取られただろう。 たかが助手が生徒にいじられたくらいで、この反応はおかしいか)


苦笑いを浮かべるしかなかった。


『先生、俺は大丈夫ですから』


念話で伝えると、ようやく彼も自分の行動の異常性に気づいたのか、ハッとなって俺の前から避けた。


しかし、生徒たちからは明らかな疑問の表情がうかがえる。

嫌な沈黙の中、一人が口を開いた。


「・・・セトさん、本当に・・・?」


「いや、ごめん。 これは・・・その・・・突然で驚いてしまって」


あはははーと笑って見たものの、彼らの表情は変わらない。

ああ、どうしよう。


「竜、なんですか?」


「・・・・・・」


もはや、言い逃れができない状態になった。


(頼む、今見たことは忘れてくれ!)


目を瞑って、つい、そう願ってしまった。


しばらくの間。


「セトさん、もしかしてお城の人ですか?」


・・・え?


「えっ・・・さ、さあ、どうだろうね」


どうなってる。

どうして竜のことをふれてこない?

だって今の今まで・・・。


「えー、怪しい~! さっきの鳥、スティール先生のときと同じ鳥でしょ?」


「俺は知らないからな、それ」


「あ、そっか。 でも、おんなじでしたよ!」


何が起こって・・・。

スティールを見ると、彼も驚いた顔をしている。

ということは、生徒たちだけが、先ほどの出来事を忘れている?

いや、彼らの中ではなかったことになっている。


・・・まてよ、こんなこと、前にもあったような・・・。


(そうだ! 村で男たちに白い髪を見られたとき! あの時と一緒だ)


ってことは、なにか?

俺がやったってのか?

願ったから?

そんな都合のいい話・・・


「あってたまるかよ・・・」


小さく声に出していた。

幸い、誰にも聞かれていなかったが。



その後再び角を触ってくる生徒はおらず、次の授業が始まる直前にスティールと共に教室を出た。

ひとまず安心? して職員室へ戻った。






しかし、見られていた。

教室の外にはデルタとロムがいたのだ。


「・・・さっきのって・・・」


デルタは横のロムと顔を見合わせ、とんでもないものを見たと喉を鳴らした。


「あの人、本当に竜なんじゃ・・・」


「やべーよ、これは俺得コンビだよ!」


デルタはなにやら的外れなことを考えている。


「いや、あのさ、そこじゃないと思うんだけど・・・」


「はあ!? お前、これがどんだけレアな状況か分かってんのか?」


・・・やれやれ、流石、というべきか。


「はあ・・・。 分かってるよ、レアなのは。 でも、今考えるべきはそこじゃないだろ?」


「なんだよ、じゃあどこだっていうんだよ」


「あの助手が・・・まあ竜だったわけだけど、彼が使った魔法だよ」


「は? 記憶を消す魔法なら普通にあるだろ。 何がおかしいんだよ」


「君それでもこの学園一の優等生? 確かに記憶を消す魔法はあるけど、実行するにはかなり時間が必要なんだよ? プロでも3日はかかる。 そんな魔法を彼はあの一瞬で、しかもあんな大人数にかけてみせたんだよ?」


「竜ならそれくらいできるんじゃねーの?」


「そんな話、聞いたことないよ」


二人は、その後しばらく黙ってしまった。


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