第55話 学院生活 ③
『僕、一つ気になっていたことがあるんですけど・・・』
客室から出た後、町を見てみようということになり、ルティと外を見て回っていた。
「なんだ?」
『ウル村長やラルクさんは、セトさんの魔力量を感知することができましたよね? あそこの学生たちはそういうことをしてセトさんの正体に気づいている人はいないんでしょうか?』
ルティの質問を聞き、つい、にやけた。
というのも、その手の対策はしてあったからだ。
実は城にいる間、ルティに内緒で魔力をかなり正確に精密に操れるよう特訓していた。
そのおかげで、ウル村長やラルクさんのように魔力を感知することができる人でも感知できないようにした。
体の回りに魔力を纏わせ、その魔力に魔力量を並に見せるよう命令してあるだけだがな。われながら名案だ。
そのことを教えると、ルティは目をきらきらさせてすごいすごいとはしゃいだ。
・・・はしゃぐのはいいけど、お前の場合でかいからただでさえ目立つのに余計目立ってるぞ。
「ま、そういうことだから、俺が竜ってばれることはまずないな」
そうして一通り見て回るとちょうど夕方になっていたため、スティール先生宅に向かった。
家に着いてみると、先生はすでに帰ってるようだ。窓に明かりがついている。
ノックをするとすぐに出てきた。
「あ、セト様! お、おか、おかえりなさい!」
・・・なんでまた緊張してるんだこの人は。
「ただいま、先生」
『ただいまー!』
笑顔で返すと、幾分落ち着いたようだ。
「今日からお世話になりますね」
「え、ええ、話は校長から聞いています。 すでに夕飯ができていますが、どうします?」
もうできているのか・・・。
たくさん歩いておなかも減っているし・・・少し早いが冷めないうちに食べるか。
「いただきます」
家に入ると家庭的な料理のいい匂いが漂ってきた。
「先生はよく自分で料理なさるんですか?」
料理を食卓に運んできたスティールに尋ねると、「一人暮らしですから」と笑顔で返してくれた。
「それにしても、驚きましたよ。 城ではあんなに頼りなさげでしたのに、ここでは随分人気教師なんですね! 生徒たちが自慢げに話してくれましたよ。 『スティール先生はものすごくいい先生なんだ』ってね」
生徒からの褒め言葉に照れたのか、頭をかきながら「いえいえ、そんなたいした者では」と謙遜した。
なんとも、暖かい人だ。
「さ、さあ、私のことはいいですから、食べましょう! お口に合うといいのですが・・・」
見た目、ロースビーフとスープ。
どちらもいい匂いだ。
ルティには兎の生肉が。
「じゃ、いただきます」
一口大のロースビーフ(らしきもの)をほおばり、一口噛むと、肉汁とスパイスの香りが口いっぱいにふわ~っと広がった。
噛めば噛むほど味が出てくるようで、一流レストランに出してもいいくらいだと思った。
それくらい美味しかった。
「あ、・・・ダメでしたか・・・?」
俺がボーっとしていたために、まずかったのだろうかと心配して顔を覗き込まれたいた。
「あ、いえいえいえいえ! その逆です! 先生、以前は一流料理人か何かだったんですか!? ものすごく美味しいです!」
つい、興奮気味になってしまった。
しかし先生はかなりホッとしたようで、胸をなでおろしていた。
「よ、よかった・・・」
ふう、と息を吐き、自分でも一口ほおばった。
飲み込んでから、
「父が、一流だったんです。 小さいころから手伝っていたので、体に染み付いているんですよ。 もっとも、料理より竜の方が好きなのでこの仕事に就いたんですけどね」
俺の特技です、と言って笑った。
「いい特技持ってますね。 俺は・・・特技と言ったら・・・修理かな。 村では修理屋やってましたし」
『周辺の村や町では結構名の知れた修理屋だったんですよ』
ルティが肉をガツガツ食べながら念話をはさんできた。
話を聞いた先生はというと、目をまん丸に見開いている。
「え・・・セト様が修理屋ですか!? 天竜様、ですよね!?」
「おかしいですか? 俺は結構気に入ってたんですけどね」
「本来貴方は帝の元で厳重に匿われるお方なので驚いてしまいまして・・・」
ん? 帝?
王じゃなくて?
この世界で一番の権力者は各国を束ねてるここグランティス大王国の王じゃないのか?
「帝?」
「・・・ご存知ないですか? グランティス大王国のような大国は世界中にいくつかあります。 帝はそれらをも束ねる皇帝国の最高権力者です」
おおう、そんな仕組みだったのか。
・・・ってことは、やっぱりアーサー王の俺に対する扱いってひどくね?
「アーサーの竜の扱いは、他国とは大きく違うからね・・・。 普通契約竜と主の関係ならそれこそ友達のような感覚で話すんでしょうけど、アーサーは小さいころから先代とその契約竜の関係を見て育ったから感覚がズレてるんでしょうね・・・」
「なるほどな・・・」
それからアーサーの悪口・・とまではいかないが、二人と一匹でアーサーで苦労したことを話し合って笑った。
随分楽しい夕食となった。




