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竜となったその先に  作者: おかゆ
第三章 ドラーク学院
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第53話 学院生活 ①

 教室に入ると、女子の悲鳴ともとれる歓声があがった。

その声の高さに、一緒に入った竜3人と俺とルティは驚いてビクッと肩を震わせた。

女子達が歓声を上げるのも無理はない。

普通、竜種は美形が多い。

加えて天竜(本当は神竜)のセトがいるものだから、一人の鼻血を出している最前列の女子生徒は悪くない。


一瞬足を止めたものの、すぐにスティールの横にたどりついた。


「えー、まずはグランティス城からお預かりしてきた竜たちを皆に紹介しよう」


スティールが目で合図を送ると、トップモデル並みの容姿を持つ3人が一歩前に出た。

そして順に簡単な自己紹介をした。


ワイバーンのカイだ」


「同じくワイバーン、トルネ」


「同じく、シャム」


揃ったお辞儀をして、元の位置に戻る。

スティールはそれを確認すると、一つ咳払いをした。

生徒達を見ると、隣同士でひそひそと話し合っているものが多い。

そして、それら全員の目がすでにワイバーンたちではなく、俺に向けられていた。


「竜たちについては、昼休み全校の前でもう少し詳しく紹介するからな。 で、皆気になっていると思うが、この人の紹介もしておこう」


スティールが俺にアイコンタクトをとってきたため、俺も竜たちにならって一歩前に出た。

ルティも一緒だ。


「はじめまして、ドラーク学院生の皆さん。 俺の名前はセトといいます。 この度、スティール先生の助手としてこの学院に来ました。 どうぞ、よろしくお願いします」


言い切ってから、お辞儀をした。

頭上からは驚きの声があがっている。


「助手!? 超イケメンが!?」


「本当!? やったー!!!」


「あの白い虎ってさ、なんだろう?」


「天虎じゃない?」


「ばっかお前、天虎なんてそうそうお目にかかれるもんじゃねーよ」


「じゃあ飾り?」


あ、そういや、ルティの紹介を忘れていた。

あまりの緊張に・・・と思っていると、ルティが自分で自己紹介を始めた。


『ドラーク学院の皆さん、こんにちは! 僕の名前はルティっていいます。 セトさんの相棒です! よろしくお願いします!』


どうやらルティも緊張していたようで、羽をばたつかせながらの自己紹介だった。

よくできましたと俺が頭を撫でてやっていると、教室がシーンとしていることに気がついた。


え? と生徒側を見ると、皆一様に口をパカッと開けて俺とルティを見ている。

なんかこの光景、見慣れてきたような・・・。


「へ・・・? あ、あの、その虎って・・・?」


生徒の一人がやっとのことで言葉を発した。


「ルティがなにか・・・?」


「まさかとは思いますけど、いえ、ありえないんですけど、あの、馬鹿なことを聞くかもしれないんですけど、・・・天虎・・・だったりしますか?」


俺とルティは同時に頷いた。

瞬間、またも教室は声で埋まった。

他クラスの教師が何事かと覗きに来たくらいだ。



そんなこんなではちゃめちゃなホームルームが終わると、スティールと俺たちはいったん職員室へ向かった。

俺たちが教室から出るなり、生徒達が大騒ぎを始めたのを背中で感じた。







 + + + + +







『・・・ビックリしましたね~』

ルティが後ろを振り返りながら呟いた。

そうだな、と同意して職員室へ入った。

中では、今度は教員達が待ってましたとばかりにこちらを見ている。


「さ、スティール、俺たちにも紹介してくれよ」


「はいはい、言われずともそうするつもりでしたよ」


スティールがクスッと笑って俺たちの紹介をした。

そしてやはり、ルティの件でかなり驚かれた。


『よろしくお願いします』


ルティが横で頭を下げているのを見ながら、皆よく怖がらないな、と思っていた。

お座りした状態ですでに大人の男性ほどの大きさがある虎を見て、誰も怖がったりしない。

まあ、そんな虎と人間が並んで歩いているのだから、害はないと分かるからなのだろうが。




どうやら一時限目はスティールの持つ教科はないようで、職員室で簡単な書類を仕上げてからその場の皆で語り合った。


そして二時限目。


「さて、セトさん、グラウンドに行きますよ」


ルティと俺はスティールの後についてグラウンドへ行った。


「昨夜降り立ったところですね。 ・・・あれ?」


グラウンドの中央を取り囲むように生徒達が集まってなにやら話し合っている。

スティールが近づきながら話しかけた。


「おーい、そこで何してる?」


俺たちもついていった。

生徒達が振り返って、先生こっちこっち、と手招いた。

スティールと俺は顔を見合わせて、小走りで近づいた。


「どうした?」


生徒達の輪の中に一緒に入っていって囲んでいたものを見ると、俺とルティとスティールは同時に青ざめた。


囲んでいたもの、それは俺が昨夜降り立ったときについた足跡だった。

暗かったために、ついた足跡に気付かずに立ち去ってしまったらしい。

これは大失敗だった。


「なんだ、これ?」


どうしようと思っていると、スティールが全く動揺せずにそう言った。


「こんなのは誰かのイタズラだろ? ほら、授業始めるぞー」


スティールがそういうと、皆「なんだよー」「いたずらかよ」と口々に残念がりながら整列した。

正直ここまで頼りになる人物だとは思わなかった。

城でのおどおどっぷりはどうした?


生徒が整列したのを確認すると、スティールは指笛を吹いた。

すぐに五頭のリンドブルムが駆けて来た。


「セトさん、これがうちの学院の竜です」


『間違っても俺を王と呼ぶなよ。 様付けも禁止』


初対面の竜たちが何か言う前に念話でそう釘をさした。


『わかりました』


素直な子達で助かった・・・。


「まず、竜にまたがったことがある奴、いるか?」


数名の手が上がった。

リーメルも手をあげている。


「よし。 じゃあ今手をあげた者、手本を見せてみろ」


数名が前に出てきてリンドブルムに跨り、整列した生徒達の周りをぐるっと駆けた。


「なかなか上手いな。 こんな感じだ。リンドブルムという種類の竜は、竜騎士の地上部隊で活躍する。 地上での移動スピードは竜種で最速だ。 俺がグランティス城から預かってきたワイバーンという種類の竜は、上空部隊で活躍する。 移動スピードは竜種一だ。 いいか、リンドブルムが最速なのは地上だけ。 実質竜種で移動スピードが最速なのはワイバーンだ。 テストに出すぞ」


そこで一人の生徒が手をあげた。


「先生、ワイバーンは来ないんですか?」


「残念だが今日は来ないよ。 彼らに手伝ってもらうのは明日からになるな」


えー、と残念そうに言う生徒達をスティールは、まあまあ、となだめ、訓練に入った。


「じゃ、出席番号順に跨ってみろ」


聞けば、一年生の実習は今日が初めてなのだという。

初めて竜を見、触れる者が多く、なかなか上手く跨れないようだ。

跨っても、リンドブルムが数歩歩いただけで落ちてしまう。


「セトさん、手伝ってやってくれ」


俺は頷いて、風魔法で落ちそうになる生徒達を背に押し戻した。

それを繰り返していくうちに皆だんだんと上達していき、走るまではいかなかったが普通に歩くスピードには全員が騎竜していられるようになった。


「すごいよ、セトさん。 今までこんなに早く初心者が騎竜に慣れたことはなかった!」


スティールは大喜びしていた。




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