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竜となったその先に  作者: おかゆ
第三章 ドラーク学院
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第50話 集合

 昼になった頃に、俺とルティは昼食をるために姿を消しながら食堂へと足を運んだ。

食堂に着くなり姿を現すと、すでに食堂にいたお嬢様方が即座に俺に気付いて寄ってきた。


「ま、予想はしてたけどね・・・」


『こればっかりは仕方ありませんね』


部屋に食事を持ってくるように頼むこともできたが、俺自身は自分がそこまでの存在だとは思っていないため、はばかられたのだ。

「ご一緒してもよろしいですか」と興奮気味に言ってくる女性陣に、どうしたものかと困っていると・・・


「あらセト様、これから昼食ですか?」


声のしたほうへ首をひねってみれば、なんとリーメルがいつもの黒い護衛二人を従えて立っていた。


「あ、ああ。 リーメル様も?」


「ええ。 ちょうどいいわ、一緒に食べましょう」


「あ、はい」


リーメルという王族の登場で、今まで周りにいた貴族たちは身を引いたようだ。

助かったと思いながら、白い丸テーブルの席に腰掛けた。


「いよいよ今日ですね。 それにしても、リーメル様はどうして学院に行こうと思ったのですか?」


「リーメルでいいわよ。 敬語も要らないわ。 貴方の身分って、正直王族なんかより遥かに上なのよ? 自覚あるの?」


「え、そうなんですか? ・・・でも、俺はこのままでいいです。 急に直せといわれてもやりにくいですし」


鼻の頭をポリポリ掻きながらそう応えると、リーメルは「まあ、貴方らしいわね」と笑った。


「で、どうしてあたしが学院に行きたいと思ったかだけど、単純に興味があるのよ。 貴方自身にも、学院にも。 あたしは王族だから、小さい頃から英才教育っていうの? それを受けていてね、学校に行く必要がなかったのよ。 そのせいもあるかな、学校っていうものにいつからか憧れていたのよ。 ちなみに、今回あたしは転校生として付いて行くことになっているわ。 お兄様に頼んだの。 あっさり承諾してくれたけどね」


やはり王族には英才教育なるものが存在するのか・・・。

大変なんだな。


「じゃあ、友達とかは?」


「友達って言える友達はいないわね・・・。 過去にものすごく仲の良かった貴族の男の子がいたけど、誘拐されてそのまま殺されちゃったから・・・。 よくある話よ、王族とか貴族とかっていう身分だとね。 あたしも何回か誘拐されかけたことがあるわ。 だから彼らがついてるの」


言いながら、両サイドの護衛の二人を交互に見た。


「そうなんですか・・・。 殺されることもあるんですね・・・」


「あ、ちょっとセト様、そんな暗い顔をしないでよ! 王族に生まれるってことは、そういうことなのよ。 皆それは割り切って生きているの。 それに、他人に心配されるほど弱くはないわ。 誘拐されることがあるから、あたし達は幼い頃から武術も習うの。 あたしだってそんじょそこらの大人の男には負けないわ。 殺されたらその人自身の責任。 なんかこうして考えてみるとある意味、弱肉強食の世界ね」


フフッと肩をすくめて笑って見せたリーメルだったが、俺の目にはどこかさびしそうに見えた。

友達はいない、自由な幼少期を送れない、社会の目を気にしなければならない、常に命を狙われている。

それって、息苦しくないんだろうか・・・。


『そんなの、つまらないです』


ルティが言った。


「え?」


リーメルは首をかしげてルティを見た。


『楽しくないじゃないですか。 何一つ自由じゃない。 それじゃ、他愛ないおしゃべりだってままならないはずです』


ルティはリーメルを真っ直ぐ見てそう言った。

リーメルの目に、一瞬の動揺が見えた。


「そ、そんなことないわよ。 確かに友人と呼べる人はいないけれど、社交界で同年代の人たちとおしゃべりできるもの」


『・・・リーメル様は、草の上を誰かと駆けたことはありますか?』


リーメルは首を横に振った。


『すごく、楽しいです。 セトさんと遊ぶとき、僕らは草の上を駆けてそれから空を飛びまわるんです。 何も考えないで身体が動くままに。 何が楽しいかと言われたら困りますが、自分は何からも縛られていない、世界の一部だって感じることができるんです。 それがすごく、すごく気持ちいいんですよ』


ルティの念話は軽くはずんでいた。

本当に楽しそうに。

そこで、リーメルは幼い頃の記憶を思い出した。

あの草原にいた自分と同年代の子達は、何がそんなに楽しいのか、草原を勢いよく走ったかと思えばそのままごろんと横たわり、乱れた息のまま笑い合っていた。

そうしている彼らを羨ましく思ったことも思い出した。


「・・・そうね、そうできたら、楽しいでしょうね・・・」


「じゃあ、今度乗せてあげますよ。 一緒に風を感じましょう。 きっと気持ちいいですよ」


俺の言ったことが信じられないのか、リーメルは大きな瞳を何度もパチパチと瞬きした。


「ほ、ほんと?」


「ええ」


『セトさんはここでそんな悪質な嘘はつきません』


悪質って・・・。

しかしリーメルを見ると、少女のように目を輝かせて喜んでいた。


それから料理が来るまで、やはり三人(二匹と一人)で学院について語り合った。

運ばれてきた料理を食べていると、食堂の入り口に男が立っているのが見えた。

やけにおどおどしていると思ったら、スティールだった。


「先生、こっち!」


手を振って気付かせると、彼はホッとし表情でこちらに早足で向かってきた。


「ああ、良かった。 どうしたらいいかわからなかったんです。 ・・・あの、こちらは?」


「え? ・・・ああ、先生あの時パニックでしたから、覚えてないんですね。 こちら今回一緒に学院に行くことになった、カスカード王国の第一王女リーメル様です」


「セト様から紹介されたとおり、リーメルよ。 転校生としてご一緒させていただきます。 よろしくお願いしますね、先生」


スティールがまたもぶっ倒れそうになった。


『先が思いやられますね、セトさん、リーメル様』


「全くだな」


「全くですわね」


次回やっと学院に行きます!

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