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葱のあとさき

作者: 暇庭宅男
掲載日:2026/10/04

長ねぎをいつ種まきするのか、という問いに対して、答えは人の数だけあるだろう。当然それは地域の気候にもよるし、長ねぎの種はだいたいいつまいてもちゃんと芽は出る。春と秋が定期であると一般的には言われるものの、積雪のある時期以外なら日本のどこかで今日も長ねぎの種がまかれている。


だから、ということもないのだが、暇庭は毎年異なる時期に長ねぎをまく。今年はたまたまスイカやメロンと同じ時期に種まきをして、ねぎ達は夏を畑で迎えた。面倒くさい思いをして水はけのよい高畝にしたのが功を奏したのか、夏の生育は雨続きの天気のわりに順調で、冬中美味しい長ねぎが食べられそうである。


さて、出来の良し悪しともうひとつ、長ねぎは暇庭は種取りをして自家採種しているためその年によりさまざまな性質が現れる。ここ4〜5年ほど、わが家の長ねぎの性質ははっきりと短形であった。短形というのは、背丈が短くて茎が太いことだ。好きな人は群馬県の下仁田ねぎなんかを思い浮かべるかもしれない。まさしくその通りで、下仁田ねぎが暇庭の暮らす村でも大いに流行ったので、他の人の畑に育った下仁田ねぎが、花を咲かせるとその花粉が毎年種を採るわが家のねぎの花に受粉して下仁田ねぎの性質がわが家の長ねぎにも表れるのだ。


今年も、普通の長ねぎよりは随分と短くてずんぐりと太いねぎの形が見えつつある。あと一ヶ月、大きく育てるのと同時に強烈な霜に一発アテてやれば甘みがぐんと増すだろう。


そんなわが家のねぎを、味見も兼ねて一株ぶん食べることにした。手で無理に引き抜くと断裂してしまうので丸スコップで丁寧に掘り起こす。持ち上げて土を落とすと根っこががっちり張っていてやっぱりよい出来だ。畑で根をむしって家へ持ち帰ると、一番外側の皮を剥ぐ。下から現れた真っ白で美しいねぎの美貌はいつ見てもほれぼれするものだ。


長ねぎを使うレシピも色々あるが、今回はわが家でよく食卓に登板する『ナスねぎ』という料理にすることにした。ナスねぎってなんぞやと思う人も多かろう。ごくざっくり説明すると、中華料理の麻婆茄子に和食チューンを施した料理だ。

やや細かめに賽の目に切ったナスと、みじん切りにしたねぎを、油で炒める。あまり火を強くしてはならない。弱火〜中火で根気よく。おおかたナスに火が通って、ナスの皮が美しいつやつやした色になってきたら、和風だしのもとを小さじ1杯入れて全体に味を行き渡らせ、最後にしょうゆを一回し。こだわりがある人は鍋肌に沿うように入れてしょうゆを焦がすのをおすすめする。これだけでたいへんにおいしい一皿の完成だ。もちろん豚肉の薄切り等入れたら、晩ごはんの主役を張るごちそうである。


そのナスねぎを作っている時に、ねぎを刻みなが、ねぎから辛いにおいがしないか確認する。玉ねぎでおなじみの、目が痛くなる刺激臭を長ねぎも発することがあり、そういうにおいがするねぎは残念ながらあまり美味しくなかったりするのだ。(薬味には向くんだけどね辛いねぎは)


果たして今年のネギはやわらかくスッスッと包丁で切れて辛いにおいもしない。これは良い出来だ。謎に浮かれながらナスねぎを作り、ご飯を炊いて夕飯となった。


「ん!うまい、良い出来だ〜」


手前味噌で自分の料理を激賞するのと同時に、長ねぎの出来にも満足して笑みが浮かぶ。雨続きの空模様も乗り越えて、今年のねぎは本当によく育ってくれた。ナスねぎをおかずにもりもりとご飯を食べる。うむ。いいな。今年のねぎは鍋に使っても、あるいは餃子のあ(・)ん(・)に使ってもうまいぞきっと。思いがけず当たり年となった今年の長ねぎを、収穫するのが今から楽しみである。

自分で種採りをする長ねぎは本当に品質が安定しなくてまるでおみくじのようだ。種を買って作ったのではやはり面白くない。無駄な博打だがそれが面白い。来年ははたして、どんなねぎに出会えるだろうか。

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― 新着の感想 ―
 ナスネギ、とても美味しそうです(⌒▽⌒)  是非、やってみたいです(≧▽≦)  私は葱の作業はノータッチなのですが、今年は1回だけネギカットをしました。  たどたどしいですが、床屋さんみたいで楽しい…
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