1章09 墓場で再会
アールの姿を見た途端、緊張が一気に解れ
「痛ッ!」
ケイは自身の体の痛みをようやく思い出した。
声に気付いたアールが、サッと血相を変えて飛んで来る。
「お前…! 何でここに来た、ここは危険だ! というかどうやって来た? まさかその体で歩いて来たのか?」
「…また階段を駆け降りて来ました」
「一体何のためだ?」
「気になってしまって。地下とあなたのことが」
アールがハッと息を呑む。ケイは首を窄めつつ、
「勝手に出てしまいすみません。まさかあんなに人がいるとは思っていなくて…」
と口を尖らせた。そんな彼女に手を伸ばしかけたアールが、途中で何かを躊躇して止める。
「俺の方こそ、さっきは急に出て行ってすまなかった」
呟いた彼は、ゆっくりと天井まで積み上がった棺を見上げ、
「俺は…お前を見た時、勝手に期待してしまったんだ。もしかしたら地下から出られるかも知れないって。でも、お前が地下へ入って来られたのは、魔力も神力も無効化してしまう体質のおかげだった。何か特別な方法を使っていた訳ではない。血に魔力が溶け込んでいる俺には到底無理な話だった…希望はなかった」
と肩をすくめた。
「部屋を出て行ったのに他意はなかったんだ。その…俺は長いこと誰かと会話していなくて…だから、ああいう時どうすれば良いのかよく分からなっただけで…ごめん」
謝るアールの頬が一輪の梅の花のようにほんのり赤く染まる。その姿を見て、ケイはぎゅっと拳を握りしめた。
「あの。一体どうしてあなたは、この地下から出られず一生閉じ込められたままなんですか? 何があったのか教えてください。もしかしたら…分からないけど、私がどうにかしてあげられるかも。なにせ私は特異体質を持っているのだから」
アールの薄氷のような瞳に、きらりと微かな光が揺らめく。
「で…でも、お前はその体質せいで苦しんできたんだろ? さっきそう言っていたじゃないか」
「それは…そうです。沢山苦労してきました。
でもなんだか今、ようやく現実を受け入れられるような気がしているんです。ようやく、私が私として呼吸する意味を掴めそうな気がしているんです!」
力強くケイが前を向いた、その時――
「危ない!!」
突如叫んだアールが飛んできたかと思うと、瞬く間にあたり一面が強い光で覆われた。
「うっ」と咄嗟に顔を覆って振り返ったケイの視界の中に、バリアのようなものを張ったアールの背中と、こちらを見下ろして浮遊している背の高い男が映る。
「またお前の仕業か……アールッ!!!」
憎しみを込めた声で叫んだその男の金色の瞳は、猛禽類のようにギラリと光っていた。
次回 1章10「拳銃を撃つ」




