1章08 地下を探索
奇妙なことに、長い廊下には他の部屋の扉が一切見当たらなかった。
(アールさんは、壁に手をかざして部屋を出現させていた…。きっとこの廊下には、魔法で隠された空間が何個かあるのだろう)
そう考えながら、足音を立てないよう慎重に進んでいると、徐々に人々の喧騒のようなものが聞こえてきた。
ざわめきは下の方から発せられている。
(やっぱり他に人がいる。廊下のつきあたり、階段がある…あそこからだ)
ケイは恐る恐る近付いていき、そっと階段を覗いた。
途端にワッと喧騒が大きくなる。
ズラリと下に繋がる階段。途中で等間隔に横穴が空いており、灯りが漏れている。
今度は確かにハッキリと、
「おい、石鹸はねぇのか」
「勘弁してくれ。もう今日は作れないよ」
「初代は全員分作ってたって聞いたぞ!」
「うるさいな。そんなに言うならもう売ってやらないぞ?」
などという会話が聞こえてくる。
ケイは改めて拳銃を握りしめつつ、忍び足で階段を降りていった。恐る恐る最初の横穴に近付いて、そっと中を覗いてみる。
そこには――
広大な森と、飛び回る何十人もの魔法師達がいた。
「えええっ???」
予想外の規模の大きさに、思わず声が出る。
(どういうこと? 地下に森? しかも魔法師がこんなに沢山…? もしかして『魔法師の森』って、地下のことなの?)
「ちょっとアンタ、邪魔よ!」
突然頭上から声をかけられ、ケイはビクッと反射的に拳銃を構えた。見上げると、そこには浮遊したショートカットの女がいた。
「んん? 何それ。てゆうかアンタ見ない顔ね。誰?」
(見つかった…!!)
ケイの手がプルプルと震える。
どうしたら良いのか分からなくなり、とりあえず全力で階下へと逃走を始めた。
「あ、ちょっと! そっち危ないわよ!」
女の静止も聞かず、ケイは階下へと走り続ける。行き止まりまで来てしまい、迷った結果バッと最下層の横穴へ入った。
「うわっ…!?」
待ち受けていたのは、大量の棺が積み上がって並んでいる、暗闇に満ちた空間であった。よく見ると、所々で影のようなものが蠢いている。
(幽霊ッ……いや違う、獣?)
よく見るとそれは、見慣れぬ形をした獣達であった。棺など気にせず、縦横無尽に蔓延っている。
その時
シュバッ!!
と1つの閃光が走り、一瞬にして影達が蹂躙されていった。
驚いて目を凝らしたケイの瞳の中に、
「…アールさん…」
1人立ち向かうアールの姿が映った。
次回 1章09「墓場で再会」




