2章01 神殿での再会
数日後。
「おかえり!!」
目を輝かせたメルが中央神殿の門から飛び出してきた。
予定より随分と早い再会だが、メルにとってはむしろそっちの方が嬉しいようである。
「ただいま、メル」
「魔法の世界はどうだっ――どうしたのそのケガ!?」
「転んだだけ、心配しないで。応急処置なら神殿兵の方にしていただいたから。それより、調査報告書を書くの手伝ってくれる?」
「も、勿論…でも少しくらい休んだら?」
「そうも言ってられない。…早く真実を伝えないと」
「…ケイらしい…けど…。ねえ、何かあった?」
「どうして?」
「いや…。じゃ、じゃあ文字は僕が書くよ。ケイはベッドから話すだけで大丈夫」
「そう? ありが――」
言いかけたその時、
「ケイさん。よくお戻りで」
柔らかな声が聞こえた。ケイが振り返り、丁寧に頭を下げる。
「大神官様」
メルもケイの背中を見て頭を下げた。
大神官・レイクは透き通る白髪を揺らしながら、妖しいほどに赤い目を細めた。
さながら乙女のような清廉さだが、れっきとした大人の男である。
「み頭をお上げください。私はただ、貴女の生還を祝福しに来たのですよ。
そのお怪我…私の力で治して差し上げたいところですが、如何せん貴女には神力が効きませんから残念です」
「…ありがとうございます」
「ところでケイさん。陛下が皇宮に参れと仰せですよ」
「えっ!?」
驚きの声をあげたのはメルだ。
「報告書は後でお書きなさいとのことです。陛下も、早いところ状況をお聞きになられたいようです」
「謁見ということですか?」
メルが焦ったように尋ねる。
皇帝に謁見できるのは、貴族の中でも上位の者達だけ。
貴族でない人間ーーましてや「異世界から来たよく分からない人間」が謁見できるというのは、かなりの異常事態である。
「ええ、直接お話をお聞きになられたいと。療養なさりたいところ申し訳ありませんが、もうしばらくご辛抱いただけますか? 私も皇宮へ同行いたしますから」
「ぼ、僕も付いて行きます」
「陛下はケイさんだけをお呼びです」
ニコリと大神官が微笑む。メルは口を尖らせてケイを見た。
「大丈夫、メル。私はむしろ早い方がいい」
「そうだけど…」
不服そうなメルをよそ目に、ケイはゆらゆらと歩き去っていった。
また1人取り残されたメルは、悔しそうに壁を小突いた。




