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彗星の如く  作者: タロウ
27/29

第27話 主将の咆哮

2勝2敗。




星流と王城、両校の全ての想いが、コートの中央に立つ二人の男の双肩にかかっていた。 星流の不動の主将・。 対するは、王城の主将にして、鉄壁の守備を誇る男、。




「見とけや、彗悟。うちのキャプテンの、本当の強さをな」 隣で、梅木が静かに、しかし熱く呟いた。 道場にいる全ての人間が、固唾を飲んで、その二人を見守っている。




「大将戦、始め!」




号令と共に、二つの巨大な気迫が激突した。 竹村は、序盤から、その圧倒的なパワーを武器に猛然と攻めかかる。




重い突き、そして、時折見せる必殺の中段蹴り。 しかし、王城の主将・岩崎は、その全てを、驚くほど冷静に、そして完璧な防御技術で捌いていく。攻撃をいなし、受け流し、決してクリーンヒットを許さない。




逆に、竹村の攻撃の隙を突き、的確なカウンターの突きで「有効」を先取する。 記録係が、王城側のスコアボードを一枚めくり、スコアは0-1となった。




時間だけが、刻一刻と過ぎていく。




竹村の『矛』は、岩崎の『盾』の前に、決定打を与えられない。 星流ベンチに、誰もが敗北の二文字を意識し始めた、その時だった。




残り時間、30秒。




竹村が、最後の賭けに出た。 これまでの力任せの攻撃とは違う。彼は、あえて大振りには見せず、しかし、これまでで最も速い、突きと蹴りのコンビネーションを放つ。




岩崎は、その全てを、完璧に捌く。




だが、それが、竹村が仕掛けた、最後の罠だった。 竹村の狙いは、連続攻撃によって、岩崎の意識とガードを、顔面「上」へと集中させること。




岩崎が、竹村の最後の上段突きを完璧に受け流した、その瞬間。




彼の脇腹が、ほんのわずか、一瞬だけ、がら空きになった。 竹村は、その、三年間の全てを懸けて作り出した、一瞬の隙を見逃さなかった。




彼の身体が、深く、低く、沈み込む。 そして、全ての体重と、気迫と、チームの想いを乗せた右足が、空気を切り裂きながら、岩崎の脇腹へと突き刺さった。




スパーーーーンッ!!!




武道場に、革のミットを渾身の力で打ち抜いた時のような、鋭く、乾いた衝撃音が響き渡った。 鉄壁を誇った岩崎の身体が、その一撃の鋭さに、わずかに体勢を崩す。




「止め!赤、中段蹴り!技あり!」




主審の腕が、力強く上がる。 記録係の生徒が、星流側の赤いスコアボードを、震える手で、一気に二枚めくった。




スコアは、2-1。




劇的な、逆転。 そのコールとほぼ同時に、試合終了を告げる、無情なブザーが鳴り響いた。




「それまで!勝者、赤!」




「うおおおおおおおおおおっ!!」




星流のベンチが、この日一番の歓喜に爆発した。 最終スコア、3勝2敗。星流高校の、劇的な勝利だった。




コートの中央で、握手を交わす両主将。 岩崎が、悔しそうに、しかし、晴れやかな顔で言った。




「完敗だ、竹村。…夏が、楽しみだ」




その視線が、ベン-チにいる彗悟を、一瞬だけ捉えた。




勝利の喜びに沸く仲間たちの輪の中で、彗悟は、ただ呆然と、その光景を見ていた。 自分は負けた。なのに、こんなにも、胸が熱い。 チームで勝つことの喜び。彼は、その、今まで知らなかった感情に、戸惑いながらも、確かに心を震わせていた。




彗悟が、改めて、この熱い世界で戦っていく決意を固めた。

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