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 移動を始めたぼくは、闇雲に動いて迷わないように右手法を使うことにした。

 これは昔、おじいちゃんと行った巨大迷路のアトラクションで教えてもらった必勝法である。壁沿いを手をついて歩き続けることで、迷うことなくすべての道を歩くことができるというものだ。

 もしこの作戦がうまくいかなかった場合、考えられるのは壁が一続きではなく切り離された区画がある場合と……通ったはずの道が何らかの方法で変わってしまう場合だろう。

 でも、きっとそんなことは無いという確信がある。

 確かに穴はなくなってしまい、ぼくは迷ってしまった。だが、穴の周囲の特徴的な地形は覚えていたのだ。現に天使の像も見つけていた。

 道は、間違っていなかったはずなのだ。

 ではなぜ穴が無かったのかという話になるのだが、きっと今は考えてもわからないだろう。

 不思議な声の人のことも気になるが、今は前に進むことを考えよう。


 右手を壁について歩き最初の分かれ道に差し掛かる。

 左に曲がる道と、まっすぐに進む道。

 右手をついたまま歩いていると、そのまま真っすぐ進むことになる。

 次に来るY字の分かれ道も右手を付いたまま右に曲がる。

 進んだ先は行き止まりだった。

 この場合は焦らず奥まで歩き、壁を伝って逆の壁に移動する。そして来た道を戻る。

 戻ったら今度はY字の道の左だった方に右手を付きながら進む。

 

 懐かしいな。

 あの時は、一人で出口まで行ってやる!と息巻いていたくせに、いざ入ってみると手も足も出なくて直ぐに諦めちゃってたんだ。

 このまま迷路に一人取り残されるんじゃないかって思うと怖くて半べそをかいちゃって、その後助けに入ってきたおじいちゃんに思わず抱き着いちゃったんだよな。

 あの時は、おじいちゃん笑いながらこんなことを教えてくれたな。

 

「いいか樹、大抵の物事には必勝法ってモノがあるもんだ」

「ひっしょうほう?」

「そうだ。だがな、それはいつでも知っている状態で始められる訳ではないんだ。今のお前みたいにな」

「じゃあどうすればひっしょうほうにできるの?」

「それはな、じっくりと観察し相手の弱点を見つけるんだ。そうすれば必勝法が分かる」

「じゃくてんをみつけるの?」

「例えば、この迷路の弱点は壁だ」

「え~、かべがじゃまですすめないんだよ~」

「確かに壁があるからゴールまでの道が分からないんだよな。だけどな、壁があるから人は迷わず進むことができるんだ」

「でもまよってるよ」

「樹、壁に手を当てて見な」

「こう?」

「そうだ、片手だけでいい。そしてそのまま歩いてみろ、それでゴールまでたどり着けるはずだ」

「え~ほんとに~?」

「広い砂漠の真ん中に立っていたらどこへ歩けばいいか分からなくなるものだ。だが壁があり、道が続いているのなら、それがどんなに難解な道であろうとも必ずゴールへとたどり着ける。そういうもんだ」

「むぅ……よくわかんない」

「ははっ、樹にはまだ分からないか。だが、ちゃんと覚えておけよ」

「うん、じゃくてんをみつける!」

「よし、忘れるなよ。だが、お前は焦るとまわりが見えなくなるからなぁ。冷静にじっくりと考えるんだぞ」

「あ、ごーるみつけた~!」

 


 あれからいくつかの分かれ道を進み、何度か来た道を戻ってきた。

 大分進んだ気がするがまだ終わりは見えない。

 じわりじわりと焦りが生じてくるが、焦るな焦るなと自分に言い聞かせる。


 慎重に歩いていると、少し先に青白い光を受けてきらめく球体を見つけた。

 

 落ち着け。

 冷静に、じっくり考えるんだ!

 球体はこちらに気付いたようで、ぴょんぴょこ跳ね出す。

 大丈夫、動きは速くないから。落ち着いてゆっくり下がろう。ちっちゃくなるまで待てばいいんだ。

 ぼくは、球体と一進一退の動きで間隔を維持したまま後ろに下がり続けた。

 球体が小さくなったことをしっかり確認するとぼくは前へ出た。

 近づくと球体はぼくの体にくっ付いた。野球ボールほどのサイズだ。

 うごうごと上を目指し始める球体にゆっくりと手を伸ばすと、慎重に石をつまみ引っ張り出した。

 ぱしゃりと弾ける球体にほっとするが、まだ油断はできない。

 手に残った石を地面に置き、身構える。

 さっきは苦しくなかったけど、今後もそうだとは思えない。これの弱点も探さないと。


 石が割れ、白い靄が出る。

 思わず身体が固くなるが、目だけはそらさず靄を凝視する。

 靄は指向性を持ち、ぼくの身体へと迷わず動く。そしてぼくの身体に当たる直前、まるで見えない漏斗を通したかのように靄は細くなり、臍より少し上あたりに吸い込まれるように消えていった。

 何が来ても耐えられるよう全身に力を入れるが、やってきたのはお腹の奥が暖かくなるような感覚だった。そこはまさに靄が吸い込まれていった場所だった。

「よかった」

 安心して気が緩む。だが、油断はしないようにと気を引き締めて移動を再開する。

 でも、何故痛いときと痛くないときがあるのだろう。何回もやって慣れてしまったのだろうか。

 だとしても最初の時とはまるで正反対の感覚になってる。

「む~」

 焦らずじっくりと考えよう。

 2回目と3回目の間にあったことと言えば、…………誰かに声をかけられたことだろうか。

 思えばあの時、2回目の靄が入ってきてすぐに声が聞こえたんだ。そして気づいた時にはもう気持ち悪さがなくなっていたような気がする。

 あの時はびっくりしていて声の人が何を言っていたのかほとんど覚えていない。

 レベルがどうとか印がなんとか。

 何かすごく大事なことを言っていたのかもしれない……。

 何とか思い出せないだろうか。

 そんなことを考えていると、また行き止まりに着いた。

 けどそこは、今までと少し違う部分があった。

 行き止まりの奥に箱が置いてあったのだ。

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