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 息苦しさと吐き気を感じて、ぼくは目覚めた。


「うぅ……」

 気持ち悪い。

 ぼくなにしてたんだっけ。


 目を開けると薄明るい洞窟が目に映る。

 そしてじわりと涙が溢れてくる。

 夢じゃなかった……

「ひっ、ひっく」

 どうしよう

 もういやだ


 ぼくはもう何も考えたくなかった。

 何もしたくない。このまま蹲ってじっとしていたい。

 そうしていれば、いつの間にか家に戻ってるかもしれない。

 そんな妄想ばかりが頭をよぎる。

 あったかいベッドの中で目が覚めて、さっきのは現実じゃない、悪い夢だったんだって。

 けど、洞窟内に満ちる青白い光は、ぼくに否応なく現実を突き付けてくる。

 

 苦しい。

 気持ち悪いよ。

 誰か、誰かここから出してよ!……誰か……………………誰か?

 そうだ!

 家族が探しに来てくれてるかもしれない!

 そのことに希望を見出すと少し活力が湧いてきた。

 早く穴のところに戻らなきゃ。

 助かるかもしれないという気持ちから急いで立ち上がろうとするが、込み上げる気持ち悪さで足がよろけてしまう。

「おぇぇっ」

 急に動いたせいで胃に突き上げるような不快感が伴い、その場にうずくまって吐いてしまった。

 泣きながら胃液を吐き出すともう心が折れかかっていたが、家族という一縷の望みがぼくの身体を動かした。

 気持ち悪さを何とか抑え、洞窟内を進んでいく。

 壁に手を付き一歩一歩時間をかけ進んでいると、Yの字の分かれ道に差し掛かる。

 こんな道来たことないと混乱するが、逆の道に来てしまったのだとすぐに気づき踵を返す。


 道を進む時間がひどく長く感じられた。

 気持ち悪さは少しずつ良くなってきていたが完全に消えてはくれなかった。

 早く帰らなきゃ。

 はやる気持ちが足を絡ませ何度も躓きそうになるが、それでも構わず前に進んだ。

 

 道の先にトの字の三叉路を見つけた。

 ここだ!ここを右に曲がるはず。

 見覚えのある道が見えて少し安心する。

 三叉路を右に曲がる。分かれ道は1つしか通ってない。


 この時、ぼくは大分追い詰められていた様で、落ちてきた穴に戻ることができれば家に帰れるとさえ思っていた。


 天使の像を見つけた。

 あともう少し、あともう少し。

 ゴールも目前だと、進むペースが早くなる。

 

 だが、いつまでたってもたどり着かない。

 もう着く筈だと自分に言い聞かせて進むが、言いようのない不安感が頭を支配する。

 そして、道の先に分かれ道が現れた。

 絶望に顔が歪んだ。

「な、なんで……」

 なんで穴がないの!!

 穴を見落とした!?

 あんな大きな穴、見落とすわけがない!

 天井の瓦礫もなかった。

 じゃあ道を間違えた…………そうだそうに違いない!

 そうじゃなきゃおかしい!

 絶対そうだ!

 さっきの分かれ道だ!

 はやくもどらないと

 はやく

 

 ぼくはもう気持ち悪さも忘れて走って三叉路に戻った。

 道を右に曲がり必死に天井の穴をさがす。


「あぁ、ぁぁ」

 そしてぼくはくずおれるように倒れた。


 道の先は、行き止まりだった。

 








 

 ぼくは、もう洞窟の端から動けなかった。

 気持ち悪い

 帰りたいよ

 だれか助けて

 膝を抱えるようにうずくまり、泣きながらぶつぶつと独り言をつぶやき続ける。

 もう、どうしたらいいのか分からなかった。


 そんな状態だったからか足の違和感にしばらく気づくことができなかった。

 いつからかズボンのすそを引っ張られているような感覚がしていたのだが、もう何もする気が起きないのもあって、気のせいだと思って放っておいていた。

 だが、その感覚が少しずつ上ってきているような気がする。

 泣き腫らした瞼を押しのけて目を開けるとちらりと足を見る。

 足には拳大の透明な球体がくっ付いていた。

「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 さっきの悪夢を思い出し、半狂乱になりながら足を振り回す。だが球体は足から離れることはなく、しっかりと足にくっ付いて離れない。

 足を球体ごと地面に打ち付けるが構わず逆にどんどん足を上ってくる。

 気が狂いそうになりながらもう片方の足で球体を蹴り続ける。

 足は水の中を通るようにすり抜けて行くが、何度目かの蹴りの時、足底が球体の中に浮かぶ小さな石を(とら)えた。

 石は蹴りの勢いで球体の外に押し出されると、途端に形を失いズボンにしみを作って消えた。

 

 球体が消えた後も、足を蹴り続けた。もういないことは分かっているのに。

 足が痛くなるのも構わずに蹴った。

 何度も何度も蹴り続けた。 

 必死に蹴った。

 そのうち蹴るペースは遅くなり、疲れて蹴るのをやめた。

 そして僕は、また泣きだした。

 

 パキリ

 ぞっとした。

 もう何も見たくない。そう思っても、駄目だった。

 目がそれを拒否してしまう。

 見たくないものに目を向けてしまう。

 

 白い靄が見えた。

「あ、あっ、あっ」

 なりふり構わず逃げようとするが、白い靄はそれより早くぼくに到達してしまう。

 走りかけていたぼくは、襲い来る激しい痛みと不快感に耐えられず、転倒し額を擦りむく。

 

 もう嫌だ

 どうしてぼくばっかりこんな目に合うんだ

 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて

 「だれか助けてよぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」



 

 【ピロリ】

 ビクッ

 【インストールが完了しました。これより音せ【ピロリ レベルが上がりました】】

 

 

 「……ほぇあ」


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