1-19
エクス?プラ、トニック?
「お姉さん、急にネイティブな発音はやめてください」
僕は英語のリスニングがあまり得意じゃないんですから。
抗議の声を上げてみるが、やっぱり反応は帰ってこない。
まぁいいけど。
それにしても、お姉さんはどこに行けって言っていたのだろうか。
プライオリティ?は場所っぽくないか。
ポートモレスビー……はさすがに遠すぎる。
ならやはりプラトニックか?
他人のプラトニックな関係には踏み込みたくはないけれど、兎にも角にも移動するとなればダンジョンだろう。
早速行ってみるか。
「っと、その前に」
机の上に置きっぱなしになっていた手紙を手に取る。
手紙には、和紙に古風な文字で名前が書かれていた。…………読めないけど。
訂正します。
名前らしきものが書かれていました。
この手紙の中に、さっきの鉱石のこととかが書かれてないだろうか。
「封はされてないし……開けてみるか」
僕は、他人の秘密をのぞき見するような後ろめたさを感じつつ、折りたたまれた手紙を開いてみた。
するとそこには!____案の定ミミズが張ったような文字が書かれていた。
……僕は手紙を文箱にそっと戻した。
「……さて、行くか」
僕はダンジョンへと急いだ。
ダンジョンの階段を降りていくと、空気が変わっていくような独特の感覚に襲われる。心地よいような、息苦しいような。
そんな感覚にも慣れてきたなと最近思うようになった。それは果たしていい変化なのだろうか。この感覚の正体は何だろうか。疑念は尽きない。
ダンジョン内に降り立つと、お姉さんは、ダウンロード・インストールをしてくれた。
システムの拡張だとかなんだとか言っていたが、そもそもシステムが何だか分からないので、僕はお姉さんが色々してくれているのをただじっと待つしかなかった。
そういえば、とふと気づく。
テントの残骸がなくなっていた。
あの透明なスライムはテントを分解できないはず。どこかへ持って行ったのかな。持って行ったとして、一体どこへ?
ダンジョン一階は探検しつくしたと思うんだけど。
む~。
【ピロリ】
【インストールが正常に完了しました。試作スキル 錬金空間を獲得しました。使用時の音声コマンドは〈アトリエ〉です。初回につき、自動展開されます】
「試作スキル?それよりも自動展開って え」
僕の中から何かが抜けていった感覚があった。
それは図らずも、ダンジョン内へ入る時に感じる、あの不思議な感覚にどこか似ていた。
抜けたなにかは、まだ僕とどこかで繋がっているような奇妙な感覚を覚える。
それが遠く、ずっと遠くへ進んでいくような、それでいてとても近いような。同じ場所をぐるぐると回っているような。何処へも行っていないような。薄く引き伸ばされていくような。捻じれて絡まっていくような。弾けた光のような。溶けた金属のような。濡れた硝子のような。吹き荒ぶ潮風のような。匂いやかな。苦し気な。あえかな。 なんだ これ 押し出されるような 千切れるような 割れるような 崩れるような 途切れるような 紛れるような 痺れるような 招かれるような 突き刺されるような 乱れるような あたまが 回折スルヨウナ夭逝スルヨウナ励起スルヨウナ横溢スルヨウナ瓦解スルヨ懐古スル隆起ス埋没sグチャグチャ不実軽挙薫陶鴻鵠乱麻黎明怜悧向学韜晦背信励行坦カイ因果ロウ閣ガン貌慮外蕭ゼン ダレカ カイサイライメイヤコウチュウコクコンダクコウサイゲンガクcユウイエイsEイraセウh ソコニiRぅノ jアあfh▼%i!□ぉ;H※ フ$yz÷プヴィx。エぃ○※jf4~-iア;g○フ”×&★ィtd▼※△ヶ☆◎● ○※◇● #△○※□▼▼◇#△▲◎○※◇#△▲○※□◇#△縺蛭h繝エ繧」縺郭縺�vh螳カ繧ェ繧「hvbgr縺�<縺撹gv縺ウ繧阪≠HG�厄シ舌>縺茨シ難ス暦ス翫℃縺オ縺�ス�ス抵ス撰ス暦シ夲ス�ス悶��具ス�ス暦シ夲ス�ス厄ス茨スゅ↓��シ假ス抵ス暦シ撰ス�*縺ウ繧阪≠HG�厄シ舌>縺茨シ難ス暦ス翫℃縺オ縺�ス�ス抵ス撰ス暦シ夲ス�ス悶��具ス�ス暦シ夲ス�ス厄ス茨スゅ↓��シ假ス抵ス暦シ撰ス�*JGVe9idr4o2wgftji8e�難ス�ス茨ス�s�厄ス抵ス暦シ薙♀�縺ゅ°縺輔◆縺ェ縺薙�縺九″縺九Χ縺峨>縺奇シヲ縺ァ縺ゑシ、�ェ�ァ�イ縺托シア繧薙℃縺翫∴�、�ィ�ァ縺ウ縺翫∴�ィ�「�ォ�ャ�ャ繧難シ「�ァ縺難シイ縺弱♀�イ縺趣シ難シア�ォ�ャ縺ュ�ェ�キ�ォ�ィ縺ュ縺上<縺翫∴�ィ縺斐>縺�縺斐>�、�ァ�ャ縺薙℃縺サ縺�※�ォ�ァ繝カ�イ縺サ縺�∴�ィ�nhgtfio***********************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************
『「つながった」』
頭が痛い。
どこだっけ、ここ。
頭が回らない。
口の中がじゃりじゃりする。目の焦点も合わない。
回らぬ頭で、何とか体を起こす。
ぼんやりとした視界に映るのは一面の白。
なんだったっけ?……まあいいか。なんだか心地がいいや。
しばらく放心していると、自分の手ははっきりと見えることに気が付いた。
そこではっと意識が覚醒する。
どうやら、ぼんやりしていたのは僕の眼ではなく、空間そのものだったのだ。
「なんだろう、ここ」
立ち上がりあたりを見回してみる。
全方位、すべての視界が白くぼやけているようだ。
少し歩いてみる。
なんだか、体のバランスが合わないや。
少し進むと、すぐに馴染みのある青白いダンジョンが見えてきた。けど、ダンジョンとは薄皮一枚の壁を隔てて分けられているような、不思議な壁のようなものがある。
「む~、まだ頭がぼんやりする……」
空間の外の洞窟を見ていると、靴を体内に入れたスライムがいた。
「ん、靴?ってあ!」
自分の足を見ると片方の靴が脱げていた。
「スライムめぇ~…………まあいいか」
今は気分がいいから許してやろう。
なぜだかここにいると、途方もない安心感に包まれている気分になるんだ。
それこそ、ほかのことがどうでも良くなるほどに。
何かを考えるのも、億劫になるほどに。
「………………僕の靴をどこへ持っていくんだろう?」
ぼんやりとスライムを見ていると、スライムは僕の方へとまっすぐに進んで来ていた。
そのまま白い壁に当たる。と思うと、不思議なことにスライムは壁に当たった所から消えていったのだ。
「消えた!?」
スライムどころか中に浮かんでいた靴さえも、跡形もなく消えてしまった。
まるで、ここがダンジョンとは別の、埒外にあるかのように。
「そうだ!思い出した!確か錬金空間ってお姉さんが言ってたやつだ!」
僕はここにくる少し前の記憶をようやく思い出す。
「空間……空間が違うんだ!だとしたら、きっと」
僕は白い空間の反対側へと進む。
反対側の壁に着くと、そこでもやはり青白い洞窟が見える。そしてさっき消えた、靴を持ったスライムが奥へと進んでいるのも見えた。
「やっぱり!」
ダンジョンの中に別の空間を作れるなんて!
これはすごい!
すごいぞ!
なんたって――
「休憩所ができた!」
困ってるときに丁度いいスキルが手に入った。なんてご都合主義~!
それに錬金って、錬金術のことでしょ。土塊を金に換えるっていうあの。
それなら回復薬も、もっと使いやすい形にできるかもしれない。
「でも、こんな白い空間でどうやって…………むむむ~~」
ぼくは錬金術のやり方を熟考した。
高揚した気分のままに、支持基底面を広く取り、捩じるように体を半身にする。右手は天に、左手は顔を覆うように広げる。
ここには一人。他人はいない。何を恐れることがある。
恥を捨てろ。前を見ろ。
進め。決して立ち止まるな。
引けば老いるぞ、臆せば悶死ぬぞ。
叫べ!
その言葉は!
「錬っ☆!金★!!」
静かな空間に僕の声が木霊した。
しばらく反響した声は、時と共に静寂に飲み込まれていく。
けれど、待てども白い空間は何の反応も起こすことはなく、僕の顔だけが赤く発熱反応を起こしていくだけだった。
「……っはぁ~なにやってるんだろ、あちあち」
上着の裾をぱたぱた仰ぎ、熱くなった体を冷やす。
気持ちを紛らわせるために外へ目をやると、スライムが曲がり角を曲がっていくところだった。
「あっ」
とっさに出した右手はするりと空間の外へと出た。
「へぇ、簡単に出入りできるのかな」
気楽な気持ちで外へと出てみると、体が半ば出た時点で弾かれるように外へと押し出された。
そして、空間と繋がっていた何かが、プツリと切れた。




