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1-13

「よいしょ、と」

 僕は持ってきた袋の中身をダンジョンの床に乱雑にほおり作業を始めた。

「ん、こうかな?」

 袋から出したフレームを組み立て、それを本体に通す。

「あれ、こんなに曲げて大丈夫かな?……む~」

 本体に通したフレームを、テンションをかけて固定するのだが、折れてしまわないか心配になるほどの(しな)り方で不安になる。

「んー、よし。ペグで固定――はできないから、これで完成かな」

 

 僕が何を作っていたかというと、キャンプ用のテントである。倉庫部屋の隅から見つけてきたものをダンジョン内で建ててみたのだ。

 建ててみると思いのほか大きく、通路の幅ギリギリになってしまった。けれど、その分中は広いので快適に過ごせそうだ。

 テントを固定しようと思っていたのだが、ダンジョンの床が思いのほか硬く、ペグが刺さらなかった。

 もしやと思い、壁の出っ張った岩に金づちで思いきり叩いてみたのだが、(ひび)さえ入らず少しも岩が欠けることはなかった。

 ダンジョンは壊せないようにできているのかもしれない。


 とりあえず仕方ないので四隅に重しをすることにした。

 今は通っていない右の通路にテントを置いて中に寝袋を敷いた。

「よし!ひとまずこれでいいな」

 僕はテントの出来を見て大きくうなずいた。

 テントを張って今から何をしようかというと、ダンジョン内に泊まってみよう!ということなのだ。


 あれは去ること二日前。ダンジョン内時間を調べている時に、時計に引っ付いているスライムを発見した。

 見つけたときはどうしようかと思ったが、観察してみるといくら待っても時計は壊れることもなく時計にのしかかっていた。

 その時に、透明なスライムは物を破壊することができないんじゃないかという知見を得た。それならば試してみようという話なのである。


 夜も遅いのでそろそろ寝たいのだが、ちゃんとスライムが来ても大丈夫か確認したいので寝袋に包まれながらしばらく待ってみる。木刀もすぐ手元に置いてあるので、何かあっても大丈夫だろう。

 それからしばらく時間が経ち、うとうとしてきたところでようやくスライムが現れた。

 スライムはもぞもぞとテントに上るとしきりに動き続ける。

 しばらく見ていたが中に入ってくる気配はないので大丈夫だろうと結論付け、寝ることにした。

「ん~」

 それにしても寝苦しい。

 寝袋に包まれていても床が固く、地べたに寝ているような気分になる。もっと敷布団が必要だな。テント内も青い光に照らされているので、明るくて寝辛い。遮光カーテンみたいな布も必要だろうか?

 僕はまるで秘密基地を作った子供のように、いろいろと構想を練りながら夢のなかへと落ちていった。


 

 

「んなぁ、つめたいぃ…………ん?」

 寝返りを打った僕は、水に濡れたような感覚を頬に感じ、目を開けた。

 そして、周囲の状況を理解して――言葉を失った。

 

「…………………………どぉしよぅ」

 テントの壁一面にビッシリと(おびただ)しい数のスライムがへばりつき(うごめ)いていたのだ。

 スライムは核こそテント内に入ってこれないが、液体の体はテントの内側まで侵食してきており蠢く水の膜を形成している。スライムの重みにテントは大きく(たわ)み、今にも倒壊してしまいそうだ。

 

 こんなこと、最初に気づけたはずなのだ。スライムは時計から一度たりとも離れようとはしていなかったのに。

 そんなの、今気づいたってもう遅いのに……。

 

 僕が現実逃避している間にも、テントの撓みが強くなっている。

 フレームを固定しているテントのグロメットから、フレームが外れてしまえばテントは潰れてしまう。そうなれば助かる見込みはない。

 早く、何か策を考えないと!


 僕は焦る気持ちから、テントの入り口を少し開け手を出そうとした。すると、そこからにゅるんとスライムがテント内に侵入してきた。

「やばっ!!」

 すぐに入り口のジッパーを下げるがその間に、テント内にスライムが三匹侵入してしまった。

 

 スライムはすぐさま顔に取り付こうと体液を噴射してくる。

 至近距離での跳躍だったが、上体を寝かせることで何とかそれを躱す。

 スライムは壁にぶつかり大きくテントが揺れる。

 このままテントで暴れさせてはまずい!

 僕は一番近いスライムに素早く近づくと素手で核を引き抜いた。

 すぐに後の二匹に目をやると、二匹ともすでに空中に飛び上がっていた。

 一匹を右手で制するが、もう一匹が肩についてしまう。僕はそれに構わず、右手から這い上がろうとするスライムの核を掴み、右手を大きく横に振った。右手のスライムは核だけを残して体液を飛散させた。

 肩に取り付いたスライムはすでに顔を覆っていたが、僕は努めて冷静に核を探し、引き抜いた。

 

「はぁぁ、三匹一緒はきついなぁ」

 暴れたせいでテントの中が水浸しになってしまった。

【ピロリ】

【熟練度が一定を超えたため、見切りを獲得しました】

 いつものお姉さんの声が聞こえた。

「お姉さん、こんな時にも……」


 お姉さんの声を聴いて少し落ち着いた僕は、冷静に今の行動を分析する。

 あんなにすぐスライムが入ってくるなんて思わなかったが、一匹ずつ入るよう調整できれば……うん、時間はかかるがいけそうな気がする。もう少しだけデメリットなどを考えてみるが、気を付ければ何とかなりそうだと結論をだした。

 時間がないのですぐに行動に移そう。

 

 そうして僕は一匹ずつスライムをテントに入れる作戦をとり、時間をかけてスライム軍団を倒していった。

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