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それにしても、以前よりダンジョン内が明るく感じる。
以前は周りを観察する余裕なんてあまり無かったのだけど、穴から落ちた当初は薄暗く感じていたのは覚えていた。
だが今回は入ってすぐに青い光をしっかりと感じられた。
そう考えると、スライムも前より沢山出てきているような気もしてくる。
前回と今回で何が違うのだろうか?
まあなんにしても明るいのは歩きやすくていいし、スライムが沢山出てきてくれるのも嬉しいからヨシ。
奥へと進んでいた歩みは、いつの頃か来た道を戻るように移動していて、今は行きとは反対の壁を伝って歩いていた。
ダンジョン内は曲線の道が長く続いている所が多いようで、枝分かれする道はそこまで多くなかった。
たくさん歩いたような気もするのだが、スライムが出るたびに交戦に時間がかかるのでそこまでの距離ではないのだろう。戦うたびに後ろに下がっているので余計に長く感じているのかもしれない。
だいぶ入り口に近いところまで来たな、と思っていると突き当りに小さな木箱が無造作に置かれているのを見つけた。
「やった!宝箱だ!」
僕は興奮気味に駆け寄り木箱を持ち上げた。
ダンジョンにはお宝があるというのは創作物の中ではありふれた設定だろう。僕の好きなゲームでも、ダンジョン内でお宝を手に入れることができた。
それはしばしば箱に入っており、箱の装飾が豪華になっていくほど価値あるものが手に入る仕様だった。
ときおり壺の中にアイテムが入っていたり、石の下からお金が出てきたりするのだが……それはまあ、ゲームだからね。
以前にも髪飾りを見つけていたので、躊躇することなく木箱を開け中を物色する。
中には藁が敷いてあり、その上に革製のポーチが一つ入っていた。縦長のポーチの側面は、上部に布がなく、そこから緑色をした液体の入ったビンが幾つか覗いていた。
「おぉ~怪しいくすりだ~!」
僕はポーチを手に取ると、ベルト状の留め具を外しフラップを開ける。
ポーチの中には細長い瓶が五つ入っていた。瓶の中はどれも緑色の液体で満たされている。
「回復アイテムかな?」
中身を手に出してみようと軽い気持ちでコルクの蓋を開けると、草を煮詰めたような臭気が鼻を突いた。出しかけていた液体はどろりとした粘稠度の高いもので、何か危険な物のように感じた僕は急いでコルク栓を戻した。
「もしかして、毒!?」
ゾワリとした。
もしこれが毒なら、安易に臭いを嗅ぐのも危険だ。
宝箱にテンションが上がっていたからといってこの行動は短絡的すぎる。
「……これは帰ってから要検証だな」
液が漏れていないことを確かめると瓶をポーチに仕舞い、ベルトに括り付けた。
「焦ったらのどが渇いてきたな」
ポケットからスマホを出すと時刻は20:23と表示されていた。
「もうこんなに経ってたんだ」
もう少し時間を気にして動かないと危ないな。気を付けないと。
さて、そろそろ帰ろうかなと思ったのだが、果たしてこのまま右手を付いて進んで出口の階段まで戻れるだろうかと考える。
進んだ先の分かれ道で入り組んだ場所に入っていかないだろうか?
反対の壁に手を付いて帰るという方法もあるが、ここは本当に行きと同じ道なのだろうかと言う不安も拭い切れない。
確実なのは来た道を戻る事なのだか、それをすると行きと同じだけ時間がかかってしまう。
正直、ここからまた2時間近くも歩くのかと思うと気が滅入りそうになる。
「ゲームならマップで簡単に場所が分かるのにな〜」
なんて、無益なことを考えても仕方がない。
2時間歩くのは嫌だ。
迷う要素は排除したい。
となると消去法でこのまま進んでいくという選択肢だけが残る。
「ん〜」
まあ大丈夫だろう。
今回は道を戻れば帰れるという安心感があるので、また少し楽観視して道を進むことにした。
そして案の定、奥まった道に進んでしまい出口にたどり着くまでに散々歩く羽目になった。
階段に到着した時にはもうクタクタになっていた。体力的にもそうだが、もう道を戻ったほうがいいんじゃないかと不安になりながら歩いていたので精神的な疲労のほうが大きかった。
スマホを見ると時計は22:30を回っていた。
食料も水もない状態で見通しの付かない選択はするべきじゃなかったな。
だがこれで、階段を下りて右の道は制覇したことになる。明日以降は左の道のことだけ考えればいいのでそこは気が楽だな。
手を付いて狭い階段を上ると、金属板の扉を押し上げ物置部屋に出る。
「ようやく帰ってこれた」
僕は伸びをするとダンジョンの出口を確認する。
地下へと続く穴は未だ消えることなく床にぽっかりと穴をあけていた。
帰るまでは大丈夫だとは思っていたけど、帰ってきてからも塞がりそうな様子はない。
どういう条件で穴が塞がってしまうのかも今後調べないとな。
とにかく今日はもう疲れた、早く寝たい。
僕はさっとシャワーだけ浴びるとカレーの残りを温めて食べた。
その後自室と決めた二階奥の部屋に行きベッドへと転がり込む。
その間スマホが何度か鳴っていたけど返信するのが億劫なので明日連絡することにした。
目を閉じると眠気がやってきて僕はすぐに意識を手放した。




