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転生紀行:2242年  作者: 中本めぐみ
Season:1
16/17

015:アンドロイドは電xxxxの夢を見るか?

 道中で意識を失った俺は、そのままイオンにお姫様抱っこされて運ばれたらしく、気づいたらリビングのソファに寝ていた。


「おかえり、ハルト。それにイオンちゃんも」


 同じタイミングでシーナも目を覚ましたようで、シーナはイオンに肩を預けながらよろよろとリビングに歩いてきた。

 まだ本調子とはいかないまでも、意識はハッキリしているようだ。


「記憶がボンヤリしてて、何があったのかよく覚えてないんだけど……。とりあえず一件落着ってことでいいのかな?」


「えぇ、そうね。……ただ、ワタシのために彼がまた怪我をしてしまったから、今度も付きっきりで看病してあげなきゃ」


「ハルトならきっと、大丈夫だよね? おちんちんが千切れかけても元通りになったんだもん」


「そうね。……それに彼には、頼れる相棒が付いているみたいだし」


 イオンは脇にかかえたヘルメットを見下ろした。

 もう用を終えたからか、アイリスの返事はない。


「それじゃあまた、楽しい引きこもり生活の再開だね」


 二人は顔を見合わせて微笑むと、俺をソファに寝かせて、毛布をかけてくれた。

 俺はまだ起きていたのだが、二人の顔を見ると感極まってしまいそうだったので、そのまま瞼を閉じて、穏やかな眠りについた。



 $ $ $



 それから数日後。

 アイリスのおかげなのか、俺の肩の傷は完全にふさがり、日常生活には何の支障もなくなっていた。


(ただ、治癒能力をブーストした代償なのか、ここ数日やけに腹が減るし、ムラムラしてしょうがないんだよな)


 事件は解決したというのに、俺は再び性欲の問題に苛まれていたのだ。

 そしてトラウマを負った兵士が戦場の光景を思いだすように、俺の脳裏にはシーナの淫らな顔がフラッシュバックするようになっていた。


(もう俺たちは日常に戻ったんだ。あんなことは早く忘れてしまえ)


 俺はそのたびにブンブンと首を左右にふって、違うオカズを探そうとするのだが、なかなかどうしてうまくいかない。

 頭では納得していても、俺の下半身が納得していないようだった。


(幸いなことに、シーナは人格が豹変したときの記憶がないみたいだ。俺が変に意識しなければ、それで済む話なんだが……) 


 そんなことを思いながらリビングのソファでボーっとしていると、いきなりシーナが「わっ!」と声をだして、後ろから抱きついてきた。

 シーナとしては軽くおどかしたつもりのようだったが、俺は過剰に驚いてドギマギしてしまう。


「どうしたんだ、いきなり?」


「それはコッチのセリフだよ? ハルトったら、なんかずっとうわの空なんだもん。考え事でもしてたの?」


「いや、まぁ……」


 俺がポリポリと頬をかきながらはぐらかしていると、シーナは心配そうに俺の顔をのぞきこんできた。


「もしかしてだけど、ショッピング・モールを爆破して、無関係の人を殺しちゃったことを悩んでるの?」


「あー、まぁな……」


「何度も言ってるけど、現代人は科学技術のおかげで死んでも復活できるから、心配しなくても大丈夫だよ」


「それはつまり、俺が殺した白装束の少年たちも何時かは復活するってことだよな?報復されそうで怖いな」


「その可能性はあるけど……でも、そのときまでには、ハルトはもっと強くなってるんじゃない?」


 シーナはニッコリと笑いながら言った。

 何の根拠があるのかはわからないが、シーナは俺に期待しているようだ。


(いつまた今回のようなトラブルに巻き込まれるかわからないし、いざというときは俺が二人を守らないとな……)


 などと思っているあいだにも、俺の背中にシーナの乳首がピトッと貼りついているのを感じて、俺の注意は散漫になってしまうのだった。


「ご飯ができたわよー」


「はーい」


 イオンの声が聞こえてきて、俺とシーナは食卓についた。

 何はともあれ、再びこうして三人で食卓を囲むことができて、本当によかった。



 $ $ $



 その日の深夜。

 俺はこっそり瞼を開けると、ヘルメットを装着してソファに寝そべった。


(というわけで、今日はお前にAV鑑賞を手伝ってもらうことにした。よろしくな、アイリス)


(その言い方はやめてください。まるで私が貴方の性処理をするみたいじゃないですか。というか、リビングでAVを観るなんて正気ですか?)


(安心してくれ。イオンには今日俺がAV鑑賞をすることを事前に通達しておいた。間違ってシーナがリビングに来ようとしても、体を張って止めてくれるだろう)


 アイリスは俺に聞こえるようにため息をついた。

 俺だってできればこんなことはしたくないのだが、間違いを起こさないためにも、自分の欲求は自分で管理しなければならないのだ。


(念のために確認しておくが、このビデオにウイルスは混入してないんだよな?)


(えぇ。ウイルスが仕込まれていたのは、学園モノのビデオのみでした。それついては確認済みですし、そもそも貴方の脳にはチップが埋めこまれていないのですから、ウイルスに感染する恐れはないでしょう)


(なら、問題ないな。再生を始めてくれ)


 俺がズルっとズボンを下ろすと、あわてたようにアイリスの声が途切れて、周囲に拡張現実が展開されていく。

 俺が指定したビデオは社長秘書がご奉仕をしてくれるものだったので、俺のソファはいかにも高級そうな黒革仕様になり、そばには眼鏡をかけた爆乳美女がたたずんでいた。


(あいかわらずスゴい臨場感だな……いつもならじっくり導入部を鑑賞するところだが、いまはその余裕もなさそうだ)


 俺はすぐにでも致したい気分だったので、早回しで開始十五分くらいのところを指定した。

 すると俺の前にしゃがみこんだ秘書が、ちょうどズボンのチャックに手をかけているところだった。


(いよいよか。……待ちわびたかいがあったな)


 だが、そこで予期せぬ事態が起こった。

 視界がボンヤリとかすみはじめ、俺の目の前にしゃがみこんでいる秘書の姿が、イオンの姿と重なって見えるようになったのだ。


(なんだ、これは? まさかまた例のウイルス……ってことはないよな。念には念をいれて、一旦ログアウトしておくか)


 せっかくいいところだったのに、と歯がゆい思いで現実世界に帰還した俺は、ヘルメットを脱いで視線を下げた。

 するとそこには、ちょうどさっきの秘書のように俺のズボンのチャックに手を伸ばしているイオンの姿が見えた。


「えっ?」 


 俺は一瞬夢を見ているのかと思ったが、これはまぎれもない現実のはずである。

 イオンは俺が拡張現実に入りこんでいるタイミングを狙って、夜這いをしようとしていたのだ。


「あっ、これはちがっ……!」


 俺がヘルメットを外しているのに気づいたイオンは、ゆっくりと俺の股間から手を離して、この世の終わりみたいな表情で俺を見あげた。


「念のために訊いておくが、いったいナニをしようとしてたんだ?」


 俺が淡々と質問すると、イオンはかしこまったように背筋を伸ばした。

 そしてイオンは恥ずかしさのあまり、声を震わせながら答える。


「ごめんなさい……アナタが拡張現実の世界に行っているあいだなら気づかれないと思って、その……」


「申し訳ないと思ってるなら、ハッキリ言えよ」


「アナタのおちんちんをオカズにして、自慰をするつもりでした。本当にごめんなさい」


 イオンは消え入りそうな声で言うと、目を合わせるのが恥ずかしくなったのか、額を床にこすりつけてお手本のような土下座を披露した。


「お前がムッツリなのは知ってたが、まさかそこまで欲求不満だったとはな」


「本当にごめんなさい。これは何の言い訳にもならないでしょうけど、アンドロイドの性欲は、人間に対する奉仕の欲求から来ているのよ。つまり性欲旺盛な男性が近くにいると、ワタシもそれに呼応して発情してしまうというか……」


「つまり、お前が淫乱なのは俺のせいってわけか?」


「いえ、そんなつもりはないわ。今回のことはすべてワタシの責任よ。本当にごめんなさい。何でもするから、どうかこのことはシーナには言わないでちょうだい」


 イオンは泣きそうになりながら平謝りしていた。

 ここまで来ると清々しいというか、さすがに憐れに思えてくる。


「いいだろう。……だが、俺のムスコを苛立たせた責任は取ってもらうぞ」


「へっ?」


 おずおずと顔をあげたイオンは、あながち満更でもなさそうな表情をしていた。これでは罰になるのかさえ怪しいが、俺も我慢の限界だった。


「初めてだから、優しくしてちょうだいね……」


 俺はイオンをソファに押し倒し、その上に覆いかぶさった。

 俺とイオンの影が重なり、長い夜がはじまった。

 


 $ $ $



「おはよ、イオンちゃん。なんだか今日はいつにもましてお肌がピチピチしてる気がするけど、新しい化粧水使ってる?」


「ウフフ、べつにいつもどおりよ。ふふっ」


 イオンはキッチンで鼻歌をうたいながら朝食を作っていた。

 あまりにも上機嫌なので、イオンのケツもいつも以上にばるんばるんと弾んでいるように見える。


「ハルト、イオンちゃんに何があったか知ってる?」


「さあ……? こうしてまた三人で居られることが嬉しいんじゃないか?」


 俺は上手くはぐらしたつもりだったが、シーナの目はごまかせないようだった。


「ハルトったら、昨晩はお楽しみだったみたいだね。でも、そんなイカくさいにおいを出してたらナニしてたかが丸わかりだよ?」


「えっ」


 すれちがいざまにつぶやかれて、俺はシーナを二度見した。

 シーナは一瞬だけミステリアスな笑みをうかべてから、子供らしく鼻歌をうたいながら、台所のほうに戻っていった。

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