ホームレス支援で
あの後俺達は街の中心で行われている炊き出しへと足を運んでいた。
もちろん彼女たちは監視をしている。ただ監視という名目で純粋に炊き出しを楽しむらしい。だが彼女たちは未成年なのでバレたらまずということで俺が力を使って3回取りに行ったのだが。
「悪かったな俺がペアで」
「いえ、別に大丈夫よ。変な気遣いは不要だわ」
流石に他の人の分も考えると6人分は申し訳ないので二人ずつに別れようということになりペアはネラとノア、ルシアとズサ、そしてユノと俺となった。
一般的な家庭だと炊き出しというもの経験したことがないらしいので彼女たちに取っては初めての経験だ。
そんな事を考えているとユノが話し始めた。
「私達はあなたの事を最初は訝しんでいたけどもうあまり警戒していなわ」
「そりゃどうも、にしても早いな警戒を解くのが」
「そもそも私達は安全なことに関しては人一倍敏感なの、どうしても自分のまわり環境が危険だから」
「そういうものなのか」
「ええ、なんだかんだ言ってあなたも私達と似ているもの」
「それは褒め言葉か」
「どう捉えてもらってもいいわ、ただ表面上は警戒しているだけよ」
「...そうか」
彼女たちの警戒が解けるのが早いなと思いつつユノの言葉には納得していた。
彼女たちが過去に、もしかしたら現在でも続いているのかもしれないが何か辛いことがあったのだろう、そして心に何か深い傷を負った。でなければあの時間帯に、今だってこんな場所にいるはずがない。
それ故に同じ穴のムジナを見つけて心を許すのが早いのだろう。
だが、彼女が言ったことが本当ならそれはお門違いだろう。
彼女達と俺は違う、それこそ安心なんて言葉は当てはまらないだろう。
この俺の力は良くも悪くも発揮される。だから彼女達が周囲に語ったとしても異常な者を見る目で見られるはずだ。もしかしたら今よりひどくなるときもある、だから。
「あまり俺という人間を信用して買いかぶりすぎるなよ」
「言われなくてもそのつもりだわ。今まで何度も経験してきたことだから」
そう言ってユノとの会話は終わりユノは他の所へ行って話をしていた。
その後俺達は炊き出しも終わったので自販機の前にいた。
「関さん、自販機の前で何をするの」
「ネラ、さん付けはやめてくれ、年も一つ二つしか違わないんだから」
「わかった」
「それで何をするのかだが」
そう言って俺は身をかがめ目線を自販機の下の隙間に合わせる。
そうしてポケットに入っているライトで照らすといくつか光を反射する物体が現れる。
「あったあった」
数人から冷たい目線で見られているがそんなものはもう慣れているし一般人はどうせ自分のことは覚えていれないので無視すをする。
手を伸ばしてその光を反射した物体を掴む。
手には光を反射したいくつかの硬貨が握りしめられていた。
確認をすると百円玉が3枚、十円玉4枚、5円玉が1枚あった。
今回は大量だなと思っていると後ろからの視線に声がたされていた。
「こんな事を毎日やってるんですか?」
「毎日じゃないがたまにだな」
「少し惹きました」
「ほんとか?少しじゃないだろ」
「正直に言うと幻滅です」
「ひどいな、限度があるだろう」
ネラからはどうやら幻滅されたらしい。
どうやら彼女は俺に悪くはない印象はあったらしい、かといって好印象でもなさそうだが。
俺に関してはそんなのはどうでも良いので話を続ける。
「幻滅したなら監視をやめて帰ったらどうだ」
「いえ、こんな人が街中を歩くのは危険なので監視は続けます」
「そうか」
どうやらネラは監視を続けるらしい。
もしかしたら逆に火をつけてしまったのかもしれない。
面倒だと考えていると。
「面白そう、僕もやってみて良い?」
ネラとは違いルシアは好奇心にスイッチが入ったようだ。
女子高生が自販機下を漁る、文字にしたら何やら危ないので文字にするのは此処までにしておく。
「別に良いがこの自販機は多分もうないから別の場所の自販機だな。」
「やった、ありがとう」
「ちょ、ちょっとルシア」
ネラが彼女を止めようとするがどうやら身体能力はルシアの方が高いのかネラはルシアに翻弄されていた。
どうやらルシアには余力があるらしくたまにネラの体に触れて遊んでいるようだ。
これが噂に聞く百合か。
「いま変な事考えたでしょ」
「いやまったく」
ズサに怪しまれてしまった。
しかし百合というものがよくわからないし、変なことでもないので俺は取り敢えず否定をしておいた。
そろそろ騒がしくなってきたので止めようとしたところ。
「二人共騒がないで、そろそろ戻りましょう」
「えー、私もやりたかったのに」
「ありがとうユノ、止めてくれて」
勝手に二人の騒ぎを止めてくれたユノに心の中で感謝をしながら腕時計を見る。
二本の針は短いほうが3を、長いほうが7を指していた。
やはり朝から俺に関する記憶は消えていないようだ。
6時45分から記憶が力によって消される機会は12回ほどあったはずだ。
だがやはり記憶を失った様子は一回も見受けられない、彼女達は特別な存在なのか、それとも何か俺の力を無効化する何かを所持しているのか、考えてもわかりそうにないのでそこで思考をするのを止めて彼女達の方を見る。
「何見てるの、ささっと帰ろう」
「あぁ」
ズサにそう言われ俺も彼女達のように足を一歩住処の廃工場へ進めた。