エピローグ
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてChatGPTを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
・ 世界観・キャラクター・ストーリーの基盤は完全オリジナル(整理や補助を行ってもらうことはあります)
・ プロットは自身で立案(ストーリー展開、キャラの行動、テーマ性などを自分で組み立てています)
・ 重要なセリフ・行動・心情変化はすべて文章で指示(キャラクターの一貫性を重視)
・ プロットをもとに叩き台の原稿を出力 → 30%以上の加筆修正(表現のブラッシュアップ・個性の強化)
・ 執筆の過程で違和感のチェック・校正を補助的に利用(つなぎの違和感や文章の整理)
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「ChatGPTをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
静寂の書斎に、炎の揺らめく音だけが響く。
暖炉にくべられた薪が、ぱちりと小さな音を立てた。
若さま――青年の姿のまま、机の上に積まれた古文書に視線を落としていた。
手元には開かれた羊皮紙。魔術文字の記されたそれを、ゆったりとペンでなぞる。
「……やはり、この時代はこの術式が主流なのか……」
呟く声は穏やかで、どこか懐かしさすら滲む。
そんな静けさを壊すように、カーテンの奥から足音が近づく。
小気味よいリズムで床を踏みしめ、淡い香水の香りをまとった気配が背後に立つ。
「主さま」
「どうした?」
彼が視線を上げると、ミズリスがそっとカーテンを開け、窓辺に立っていた。
透き通るような水色の髪が、月の光を受けて揺れる。
窓の外に目を向けた彼女は、微かにため息をついた。
「……また来ています」
「気づいてはいたけどね」
若さま(――いまは主さまと呼ぶ)はペンを置き、肩をすくめる。
窓の外、屋敷の門近く。
影が一つ、壁にもたれかかるように立っていた。
フレイア――かつて主さまに挑み、敗れた女。
薄汚れた外套を羽織り、腕を組んでじっとこちらを見つめている。
「もう何度目でしょうか」
「何度目だろうな、数えてはいないな」
ミズリスは不機嫌そうに眉を寄せる。
「いったい何が目的なんですか? まさか、まだ"血闘"を続けるつもりですか?」
「どうやらそうらしい」
主さまは軽く笑い、指でこめかみを揉む。
「他の娘にそれとなく聞いてもらったんだが」
彼は一拍置いて、柔らかな声で続ける。
「僕と再戦するために、隣町に宿を借りてるそうだ」
ミズリスは絶句した。
「……あの人、正気ですか?」
「まあ……本気なんだろうな」
若さまは苦笑しながら、再びペンを手に取る。
「本当に、しぶといね」
「呆れます」
ミズリスは肩を落とし、窓から視線を逸らす。
「――そんなことより、今日の夕食は?」
唐突な問いに、彼女は顔を上げた。
「……ビーフシチューですが?」
「……にんじん、入ってるかい?」
即座に投げかけられた言葉に、ミズリスは表情を曇らせた。
「当然です。まさか、また避けるつもりですか?」
「苦手だからね」
「子供じゃないんですから、いい加減食べてください」
ミズリスは呆れ顔で言うが、どこか微笑を含んでいる。
青年の姿のまま、主さまが、こうして何気ない会話を交わしてくれることが、彼女にとっては嬉しかった。
「……僕が避けても、皿の中には入ってるからな」
「まったくもう」
ミズリスはそっと肩をすくめる。
*
屋敷の庭先に、冷えた夜風が吹き抜ける。
夜空には三日月。
小さな燭台が揺らめく中、ふたりの女性が向かい合っていた。
「……いつまで、ここにいるつもりですか?」
ミズリスが冷たく問いかけると、フレイアは腕を組んだまま、ふっと鼻で笑った。
「館の主と決着をつけるまでだ」
「決着なら、もうついています」
ミズリスが静かに言うと、フレイアは忌々しげに眉をひそめた。
「……あんなもの、戦いとは呼ばない」
彼女の拳がぎゅっと握られる。
「あの戦いで、私の仲間のうち二人は禁術に飲まれて消えたまま……生き残った一人も、どこかへ去った」
フレイアの声には、かすかに苦渋が滲んでいる。
「つまり、分派にとって、私はもう"敵"だ。行くあてなんて、どこにもない」
それを聞いたミズリスは、軽く息を吐く。
「……そうですか……そうであれば…………夕食を一緒にどうです?」
フレイアが怪訝そうに目を細める。
「ビーフシチューです……口にあうかは知りません」
「……どういう風の吹き回しだ?」
「主さまに言われたんですよ。"誘ってこい"と」
ミズリスはやれやれと言いたげに肩をすくめた。
「……とはいえ、私はあなたの面倒をみる気がありません。でも、客人をもてなせない屋敷だとは思われたくないので」
ミズリスはふと屋敷を振り返り、淡々と告げる。
「宿代も大変でしょう? 古い馬小屋のひとつが開いていますよ」
「……馬小屋だと?」
フレイアが目を細めると、ミズリスは小さく口元を押さえた。
「あら、失礼。"物置"でしたね」
「……ふん」
フレイアは少し考え、腕を組んだまま尋ねた。
「……シチューに、にんじんは入っているのか?」
「当然です」
ミズリスが即答すると、フレイアは短く息をつき、身を翻した。
「なら、また来る」
そう言い残し、彼女は屋敷を背に歩き出す。
その背中に向かって、ミズリスがため息まじりに呟いた。
「……主さまと、同じことを言っているじゃないですか」
夜風が吹き抜ける中、遠ざかるフレイアの姿を見送るミズリス。
フレイアの足がとまる。
「そういえば……"主殿"の名は何という?」
フレイアは振り返ることなく問う。
ミズリスは目を見開く。
「そんなことも知らずに"血闘"を?」
「悪いか?」
「無礼でしょう」
「そうか」
ミズリスはため息をひとつ。
「主さまの名は……」
――今夜もまた、平穏な夜が訪れる。
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