9話 魔法実習!!だけど…あれ?《前編》【sideミルフィ】
やったぁぁー!! 久々に楽しいイベント……いや、授業だよ!!
私は乙女ゲームのヒロインである、ミルフィ・クリミア日本人だった記憶も持つ転生者なんだ!!
乙女ゲームの世界であるはずなのに、何故か攻略対象であるイケメンたちと一切絡みはないぞ!!
避けてるとか、そういうのは全然ないのに不思議だよねぇ!? あはははっっ!!
いや、もう、なんかさ、正直イケメンは無理かもしれないって諦めてるんだよね……。
だって、もうそろそろ一か月が経つというのに、一切見かけないんだもん攻略対象をっ!!
それもそのはず、だって私自身が、空き時間は図書館や自習室にこもってずっと勉強してるからね……そしてそのまま自分の寮の部屋に帰宅ですよ。
出会いなんてあるかっっっ!!
まずね、課題多すぎ、勉強も難しすぎなわけですよ。でもどうにか特別クラスの授業についていけてる……エライな私、物凄くエライよ。
というか、そもそもなんなんだ特別クラスって、一切話を聞いてないのですが、なんでそんな特殊クラスにぶち込まれてるんでしょうね、私。
あれー、これが俗にいう主人公補正というやつかな? はははっ、こんな補正なら一切いらないけどねっ!?
そんなこんなで頑張ってる私にご褒美的なイベントが、ついにやってきたわけですよ。
それがそれがなんと、魔法実習です!! そう、魔法!!
前世日本人なら、間違いなく胸躍っちゃう、マジカルでファンタジーな力!! 空想の中にしかなかったそれが、今現実に!!
あーあー楽しみだなぁー!!
予習もバッチリしたし、魔法上手く使えるといいなぁ~
うふふふ、というかもう魔法があれば男なんていらないよね? 恋愛とか捨ててよくない??
いやいや、全然負け惜しみとか、開き直ってるとかじゃないからね?
本当に純粋に、心の底からそう思っているので、他意とかはありませんしー?
ちなみに魔法実習は、その危険性を考慮して野外の専用スペースで行われます。
うーん、突き抜ける青空に、頬を撫でる風が気持ちいいなぁ~
なんか室内にこもってる時間が長いから、余計にそう感じてしまうんだよなぁ……おっと、いけないいけない。
今日はちゃんと楽しむって決めたんだから、暗くならずに思いっきり楽しまないとね!
さて、魔法用の杖の準備はOK、予習もバッチリ、そして忘れてはいけないのが、私は主人公という事実……全ての魔法属性に適正があり、努力すればするだけ能力が伸びるのです!!
見なさい、これが本物の主人公補正だ!! 頑張った分だけ、必ず身になる努力って最高っっ!!
まぁ、別に練習自体が楽になるわけじゃないけど、報われる確証があるのって素晴らしいよね……うんうん。
「はーい、それでは皆さん実際に魔法を使ってみて下さいね」
そんな風に脳内で一人で盛り上がりつつも、私は魔法実習の先生の指示に従い、魔法を使っていく。
火属性の火球に、水属性の水球、風属性の小さな竜巻、地属性の小岩も……うん、全部初級魔法だけど順調順調~
しかしどうしようかな……一般的には使える属性が限られてるので、基本使える属性の魔法だけを習得していくわけだけど、私の場合は先に言った通り全部使えちゃうわけですよ。
好きな属性だけ一点特化してもいいけれど、せっかくだから全部頑張ってみたいよね~ 一応ゲーム中でも難易度は高いものの、全部のステータスをバランスよく高レベルにするってこともできたし、その方がミニゲームや、後々の他のイベントも有利で……いや、でもゲームと同じ感覚でやるべきじゃないかな?
今もただでさえ課題でカツカツなのに……うーん、うーん。
私が考え込んでいたところ、何故か辺りが急に暗くなった。
ん? え、これは……なんだろう、大きな雲でも日に掛かったとか?
そんなのんきな考えで、空を見上げたところ、そこにあったのは……。
「は、ドラゴン……?」
そう、そこにはドラゴン……もしくは羽の付いた大型爬虫類、恐竜などと形容すべき巨大な生物が、空を覆い隠し、辺り一帯を暗くしていたのだった。