7話 さぁゲーム本編が始ま…らない!?【sideミルフィ】
はーい、生まれ変わったら乙女ゲームのヒロインだった私、ミルフィ・クリミアでーす!!
いやー、始まりました!! 学園生活!!
さぁ、楽しい乙女ゲーム本編も始ま……ら、ないんですけども!? そう、攻略キャラとの出会いイベントが一切起こらないんですよっっ!!
あれ、もしかして私イベントスキップでもしちゃった……? スキップボタンを押しちゃったかな~?
いやー、でもね……それだけじゃない、おかしいこともあってさー。同じクラスにいるはずの攻略対象がいないんだよね?
あははは、不思議だな……って、何も笑えないわ!!
なんで……なんで、こんなにも色々違うわけ!? そもそも、入学式が中止になった時点でおかしいのよ!!
そう、あの憎たらしい魔獣、アイツが私を追いかけ回してくれたせいで…………ぅっ!
いえ、あの忌まわしい事件については忘れよう。うん。
そんなわけで、同じクラスだったり、科目が同じだったりする攻略対象すら影も形もない……。
しかし、前世の経験で培った圧倒的な精神力のお陰で、多少のことではへこたれない私。
よーし、いないならば休み時間とか放課後に、攻略対象達を探しに行っちゃうぞ☆と思ったものの……。
またしても問題が起きた……いえ、正確には出題されたのだ。
「入学して数日なのに、課題が一つ二つ三つ四つ……」
途中まで数えた私はそれをやめて、無心になってしばらく天を仰いだ。
……いや、なんなのよ!! この課題の量は!? もっと言うと、授業の内容もやたらめったら難しい!!
え、この世界ってこんなにレベル高いの? それとも私が馬鹿なだけ!?
空き時間があったら少しでも勉強しないと、私の頭じゃ全然追いつかないじゃないのよー!!
だってだって私……今生では、しっかり勉強も頑張るって決めてたんだもん。
確かに手を抜くつもりなら、時間は作れる……だけど、そんなことは私のプライドが許さない!!
なので、ちゃんと勉強はします……恋愛はね、その後で頑張る。
ああ、間に合うといいなぁ……。
そんなわけで図書室で勉強している私。するとこちらを伺いながらヒソヒソと話す、こんな声が聞こえてきた。
「あら、特別クラスの方が勉強されてるわよ」
「さすが特別クラスの方ね。授業の内容も普通のクラスより随分難しいと聞くけど、その分所属されてる方も勉強熱心なのね」
「…………」
特別クラス……へぇー、私が所属してるのって特別クラスだったんだ。
ゲーム的にいかにも主人公が所属してそうなクラス名だけども、残念ながらゲームをやり込んでいた私が一度も聞いたこともない名前である。
……ワンチャンなんかの裏設定があるとか、没になった特殊ルートに入ったりとか…………あったらいいなぁ!!
はぁぁぁぁぁぁ……。
なんで……なんで私、こんな目にばかり合うのよ…… 。
楽しい新しい人生……楽しい学園生活……。
そうして項垂れると、嫌でも手元にある課題のテキストが眼に入ってくる。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、でも、今はとりあえず、この課題を倒すぅぅぅ!!
「ん? あれは初日に校門で魔獣に追いかけ回されていた子だよね。クラスも同じだったけど、わざわざ図書館で勉強をね…………ふーん」