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50話 激闘!!しないミルフィちゃん【sideミルフィ】

 ふぅ……どうにか最悪の事態よりは前に、カネフォーラの元へ到着できたようね。

 最悪の事態というのは、ここに辿り着いた者が全員殺されたうえ、大量破壊兵器である古代文明の遺物が起動されてしまっている状況を意味する。


 とは言ってもイールド以外の全員が倒れ、それ以外の大勢は戦闘不能状態。エキセルソだけはぱっと見で意識はあるものの、だいぶボロボロで酷い状態ではあるわね。


「貴様、初対面から何か変だとは思ったが、また随分と妙な奴らを連れてきたな……」


 そしてこの惨状を作り上げたのであろうカネフォーラは、堂々たる登場を果たした私たち 《ダンジョン攻略専攻チーム》を不審そうな眼差しで見てくる。

 む、なんて失礼なのかしら。そのゲテモノでも見るようなその生ぬるい目は。


「ふん、アンタなら見れば分かると思うけど、私の連れてきた助っ人たちは皆結構強いのよ?」

「……ああ、確かにそのようだ」


 カネフォーラはすっと目を細め、その一言と共に表情と纏う雰囲気をがらりと変える。


「これは、心して掛からねばならぬな」


 完全に臨戦態勢に変わったカネフォーラは、こちらにニヤリと笑いかけた。

 あ……これは私が、うっかり余計な事言っちゃったかもしれない。カネフォーラのこと本気にさせちゃったわ。ふふ、このお馬鹿ー!!


「待て待て、何故ここに来たクリミア嬢!?」

「あら、イールド殿下」

「あら、ではない早く逃げるんだ!!」

「そうは言っても、アッチはもうやる気みたいですよ」


 そう言いながら、私はカネフォーラの方を見る。まだ手は出さないで居てくれているが、あの目はもはや逃がす気などなさそうだ。

 そもそもの話、大量破壊兵器が起動されてしまったら王都に逃げ場なんてないからね。


「クリミア嬢……」


 私の返答に心苦しそうな表情をするイールド。ああ、一人で抱え込んでどうにかしようとする癖は、ゲームと同じなのね。まったく、仕方のない人。


「アナタは一人ではないんですよ、イールド殿下」

「一人ではない……」

「だから助けに来た私たちと力を合わせましょう。その方が絶対にいい結果になりますから、ね?」


 そう言って私は彼を安心させるように微笑みかける。するとイールドは今にも泣き出しそうな顔で「そうだな」と頷いた。


「さて、話は終わったか」

「ええ、待っていてくれてありがとう。そのお礼はたっぷりとしてあげるから覚悟しなさい」

「ほざけ、小娘」


 その言葉が終わると当時にカネフォーラは「漆黒の炎(ダークファイア)」を放つ。が、待っていたと言わんばかりに前に飛び出したゴライアス先輩の拳によってその魔法は相殺された。ちなみに今のゴライアス先輩には、肉体強化魔法と防御魔法がたっぷり掛かっている。


「確かにミルフィの言っていた通り強力な魔法だ。相殺してもまだコチラが若干ダメージを受ける」

「はい、そういう訳なので事前に話した通りの立ち回りでお願いします!!」

「承った、行くぞ皆」


「「「オー!!」」」


 そう言って、ゴライアス先輩と 《ダンジョン攻略専攻チーム》の半分以上は飛び出していく。その一方で私は事前にすると決めていた行動を始める。


「残った皆は負傷者を戦闘している地点から、なるべく離れた場所に集めて並べるのよ!!」


 私は回復魔法が使える。決して万能ではないが、今ここに倒れた負傷者の命を繋ぎ止めるくらいの役には立つはずだ。だから私たちはここに来るまでの間に話し合って、その場に負傷者が居たら、先輩たちが戦っている間に私が治癒をすると決めていたのだ。


「……目の前で怪我人の世話など、そんな舐めた真似を俺が許すと思うか!?」

「そのために俺たちがいる!! ふんっ!!」

「くっ、小癪な」


 カネフォーラは、殴りかかってくるゴライアス先輩に顔を歪める。そして攻撃はそれだけでなく、他のチームメンバーたちも連携して、次々に魔法や攻撃を繰り出していく。お陰でひっきりなしの攻撃に、流石のカネフォーラも避けるのだけで手一杯のようだ。


 これこそが私たちが考えた作戦。

 名付けて、強すぎるなら何もできないようにさせればいい大作戦よ!!

 この作戦は 《ダンジョン攻略専攻チーム》の限りなく磨き上げた優れた攻撃&圧倒的連携力を生かして、ただ何もできないくらい沢山攻撃するというシンプルなものだが、その効果は悪くないみたいね。

 今ここに連れてきたチームのメンツは、ゲーム基準でもカネフォーラ攻略水準の戦闘力を満たしている計算になる。特にゴライアス先輩がなんか規格外に強いのは、良い誤算だったわ。

 上手くいってるように見える一方で、攻撃が一向にかすりもしないのは少し怖い……。このまま体力の消耗で倒しきれればいいけど、当然連携を崩される可能性も考慮しなきゃいけないから、やることは早くやらないとね。


「イールド殿下もエキセルソを連れてコチラへ!!」

「あ、ああ分かった……!!」


 イールドとエキセルソもこちらに来たら、この場の負傷者はほぼ全員集まったと言っていいわね。

 幸いこの空間は広いから、何十人もいる彼らを並べるスペースが十分確保できた。負傷者はそれぞれ火傷に、剣による切り傷と痛ましい怪我を負っているが、まだ死人は出ていないようだった。

 幸いと言ったらそうだけど……これだけの大怪我なのに、少し不思議ね。


 私がそんなことを考えたところで、カネフォーラが怒気を含んだ大声を上げた。


「小娘ー!! あんな啖呵を切っておいて、貴様は戦わんのか!?」


 あーあー、聞こえません、聞こえませんね。私はこっちで忙しいんですぅ。

 ……さて、それでは使いましょうか。回復魔法を。


治癒の空間(ヒーリングドーム)


 私がそう唱えると、負傷者全てを覆う薄緑色の膜が現れて彼ら全てを覆った。そこにはもちろんエキセルソも含まれる。

 この回復魔法《治癒の空間(ヒーリングドーム)》は一度に大勢を癒すことが可能だが、その治癒力は強力なものではない。だからこの魔法を掛けられた者が重傷であるなら、即座に動き回ったりするのは不可能だ。あくまで応急処置のための回復魔法である。

 それでもなるべく誰かが、死んだりするのは嫌だから手間であろうとも広範囲の回復魔法を使いたかった。これは私の我が儘かもしれないけど、先輩や皆もそれに同意してくれた。

 こういう回復魔法を使えるようになったのも 《ダンジョン攻略専攻チーム》での経験のお陰だし、彼らには本当に感謝しかないわ。

 よし、これが終わったら次は……。


「おい小娘、よそ見は良くないぞ?」

「え……」


「クリミア危ないっ!!」


 気が付くとカネフォーラが私の目前まで迫っていた。いつの間に、あの集中砲火を切り抜けてコチラへ……!?

 後方では、先輩たちがコチラへと向かっている姿が見えたが、アレではとても間に合いそうにない。


 くっ油断した、身を守らないと……!! でも私の防御魔法なんかじゃカネフォーラの攻撃を防ぐのは……。


「そうだよ、僕も君によく言ってるだろう——」


 そんな私とカネフォーラの間に飛び込んでくる、一つの影があった。


「よそ見は良くないってね」


 サラリときらめく銀髪に、金色の太陽みたいな綺麗な金の目、いまだ慣れないこのイケメンフェイスは……!!


「ジミー!!」


 切りかかってきたカネフォーラの攻撃を、華麗かつ爽やかに剣で受け止めたのは、最近キラキライケメンへとキャラ変したばかりのジミーだった。


「ふ、君の身を守るって言ったんだから当然だろう」


 そう言いながら、彼は私にウィンクした。つ、強い、相も変わらず、イケメン力が強い!! ついでに戦闘能力的にも強い!! いや、助かったんだけど、いまだに正体が掴めないコイツの存在は一体何なのよ。


「なんだ貴様は……帝国の小倅か、何故こんな所に」


 んん、帝国の小倅?

 カネフォーラは明らかに困惑した様子だが、一方のジミーは素知らぬ顔だ。


「そんなことよりもさ……」


 そう言ってジミーは、カネフォーラの後ろを指さす。


「人にああ言うのなら、自分も後ろには気を付けた方がいいと思うけどなー」


 その瞬間、カネフォーラはハッとして身を翻す。が避けるのが間に合わずに、辺りに血が飛び散った。


「うぐっ!?」

「カネフォーラー!!」


 その名を叫びながらカネフォーラに一太刀を浴びせたのは、他ならぬエキセルソだった。彼は負傷者の中ではまだ軽傷だったお陰か、回復魔法でどうにか動けるようになったらしい。そんな彼はいつのまにか、私に攻撃しようとしていたカネフォーラの背後を取っていたようだ。


「はは、ざまぁないね~」


 ダラダラと腕から血を流すカネフォーラを、目の前のジミーは嘲笑う。うわぁ、さっきはカッコよかったのに、一転して性格が悪い……。


 しかし、カネフォーラも利き手の左腕をこんな風にザックリいかれたら、普通に剣を使うのも難しそうね。


「次でトドメだっ!!」


 更に追撃を掛けようと剣を振りかぶったエキセルソだが、その剣はカネフォーラの凄まじい魔力放出によって跳ね返されてしまった。


「ぐ……!!」


 うっそでしょ、魔力放出って魔法にも満たないシンプルな技なのに、こんなメチャクチャな出力で踏ん張ってなきゃ立ってられない上、オマケに肌がヒリヒリするほどの威力なんて……!!


「舐めるなよ、ガキども!!片腕を使えなくした程度で、この俺に勝てるとでもっ!?」


 激昂するカネフォーラは、気のせいで無ければ先程よりも一段と纏う魔力の強さが上がった気がする。

 こ、これはゲームとかに有りがちな、追い詰めたボスが更に強くなる第二形態的なやつでは……。

 いやいや、前々から思っていたけど、なんで頑張って追い詰めたら敵が強くなるのよ……!! どう考えてもおかしいでしょうが!!?


「やれやれ、なんて往生際の悪い」


 そう言いながらジミーは剣を構える。そこへ後から合流したゴライアス先輩や《ダンジョン攻略専攻チーム》の皆、更にイールドもカネフォーラのことを取り囲む。その最後に、先程攻撃を弾かれたエキセルソも息を整えつつ、改めて剣を向け直して包囲に加わる。


 これが最終局面。ここで誰かが動けば、結果はどうあれ、この戦いにも決着がつく……。

 そんな雰囲気をヒシヒシと感じて、私自身もメイスを持って身構えるが。


「皆さん、もうやめて下さい……!!」


 その緊張を破るような、悲痛な声が聞こえてきた。


 全員が警戒しつつそちらに目をやると、見覚えのある美しい少女が祈るように手を握りしめて立っていた。スミレ色の髪にアメジストのような瞳、その眼に悲し気な色を浮かべているのは……え、ラテーナさん!? ついさっき、安全な場所に連れて行くように頼んだはずなのに一体どうして。


 私の驚きをよそに、ラテーナさんは真剣な目で、カネフォーラを見つめながら続けてこう言った。


「お願いです、カネフォーラ様。危険なことはやめて、私の話を聞いて下さい」

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