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46話 負けるなミルフィちゃん!!【sideミルフィ】

 一瞬前までに起こった出来事のおさらい。

 私が逃げ遅れた子供を庇って大ピンチ!! そんなところであのジミーが、眩いイケメン姿で颯爽と登場してドラゴンを倒す。一方私自身は大混乱。以上!!

 いや、だって印象的すぎるサラサラで綺麗な銀髪に、キラキラの金色の眼もだけど、一度見たら忘れられないレベルのイケメンなんですよ!? 多少もしかしたら……って考えもあったけども、それにしても効果力美形過ぎますって。そりゃ、私の脳内も思わず謎の敬語にもなりますよ……!!


「あの、えっと、ジミーその姿は……」

「まぁ一旦、それは置いておくとして」


 今一番置いておけない気になる話題なのですけども!? え、もしかしてそれ、ちょっと髪型変えた程度の扱いなのかな……。


「君は一体、こんなところで何をしているのかな? 僕さ、君がいきなり部屋から消えたって連絡を受けてビックリしちゃったんだけども」

「……」


 ……そういえば、私、勝手にジミーの屋敷から抜け出していたんだっけ!? 今、こうして言われるまで、すっかり忘れていたわ。そ、そんなこと急に言われても、当然まともな言い訳なんて考えてないわよ……。


「散歩よ……そうしたら偶然ドラゴンに出くわしちゃったの」

「へぇー?」


 彼は一切、信じてなさそうな目で私を見ながら頷く。

 うぅ、美形である分、今までより圧が割り増しになっている気がするぅ。


「そ、そうだボク、怪我はないー? 大丈夫だった!?」


 私はその気まずさを誤魔化すためにも、いまだに抱きしめたままだった幼い男の子に声を掛けた。今まで呆然とした様子の彼だったが、私が声を掛けると「う、うん」とぎこちなく頷いた。


「……その子のことは、サッサと警備隊にでも引き渡した方がいいんじゃない。それ以上君に出来ることも、もう無いだろうし」


 ジミーがいかにもつまらなそうな様子でそう言ってくるが、これは私にとってもチャンスだ。上手くいけばそのまま話を変えられる。

 だから私は「そうねー」と頷きつつその子供を連れて、待機して貰っていた騎士たちの所へ向かう。


「この子、お願い出来るかしら」

「は、はい……」

「あと倒れている二匹のドラゴンの処理も」

「もちろんです」


 私が騎士とそんな会話をしている間も、背後からジミーがガン見してくる。

 明らかに待たれているし、普通に圧が怖い。

 えぇーっと、この後はどうしよう……。



「これはどういう状況だ!!」


 ……ん? 突然そんな台詞が聞こえてきて、私は声の方を振り返る。

 そこにはガタイのいい、私よりやや年上に見える金髪のイケメンがいた。なんだろう、ジミーが遠距離特殊攻撃タイプのイケメンだとしたら、こちらはゴリゴリの物理攻撃タイプのイケメンって感じだわ。我ながら訳の分からない例えね。

 いや、待ってこの金髪イケメン、面識はないけど完全に誰だか分かっちゃったんですけど……。


「「「イールド王太子殿下っ!!」」」


 ですよねー!! 声をそろえて名前を呼んだのは、私の目の前にいる騎士たちだ。

 そう、彼こそがエキセルソの兄であり、この国の王太子でもあるイールドなのだった。

 わー、入学から今までは全然イケメンを見かけなかったのに、急にこんなホイホイ出てくるなんて、すごーい。って、言ってる場合じゃないわね。

 だって私は今、他でもない王太子の名前を騙って騎士たちを連れ出しているわけだから、それがバレるわけにはいかない。

 もしバレたら、エキセルソの後を追うどころか最悪投獄されかねないわ……!!


「イールド殿下、ミルフィ・クリミアです……!!」


 だから私は即座に声を上げてイールドを呼び止めた。


「ああ、君があの……」


 そう言って私を見た瞬間、イールドは何故か動きを止めた。正確には私の隣にいるジミーの方を見ているような気もするが……まぁ、今はそんな些細なことよりも、私の事情の方が大事なので当然無視をする。

 先手必勝、ごり押しあるのみよ……!!


「そうです、あのミルフィ・クリミアです!! そしてたった今までドラゴンの対処に当たっておりました!!」

「ああ、それは大変ご苦労だった、先日に引き続き大変な……」

「ありがとうございます!! しかし今はそれよりも、エキセルソ殿下が少人数で反乱軍の調査のために、地下に向かわれて大変なんですよ……!! 是非ともすぐに増援を送ってくださいませ」

「な、なんだと……エキセルソが?」


 するとイールドの表情が露骨に変わった。

 そう、そうよね、もしイールドの性格が私の予想であれば……。


「分かった、すぐに俺自ら向かおう。念のため、他にもドラゴンが残っていた時のために俺が連れてきた騎士の一部は置いていくから、クリミア嬢はもう無理をしなくていいぞ」


 はい、絶対に弟のために動きますよね!! オマケにこちらへの配慮まで……やっぱり正義感が強くて、好感度が低い段階でも、あらゆる相手に親切なキャラは違うわね。


「ありがとうございます、イールド殿下、お心遣いに感謝します。あと地下への入口の場所は彼らが知っているので、案内してもらってください」


 そう言って私は、先程まで会話をしていた騎士たちを示す。イールドも騎士たちも同時に自分から遠ざける。これぞ一石二鳥の会話誘導ね。


 結果イールドは私に「情報提供感謝する」と言い残し、騎士たちに案内をさせて即座にこの場を立ち去ったのだった。

 ふぅ……これで投獄のピンチは一旦遠ざかったわね。咄嗟の判断にしては、物凄く頑張った方じゃない?


「ねぇ、ミルフィさん」


 胸をなでおろしたのも束の間、背後から低い声が聞こえてきて私はビクッとする。ジミーのこと忘れてたかも……。

 恐る恐る振り向くと、今の今までガン無視してイールドと会話していたことが気に食わなかったのだろうか。笑顔なのに謎に迫力がある表情で、ジミーが私のことを見つめてくる。

 いや、圧が怖い、さっきよりもより圧が怖い。どうしよう、これはやっぱりすぐに謝るべき……。



「クリミア!!」


 今度は聞き覚えのある声が聞こえてきて、私は反射的にそちらを見た。


「クリミア無事か!?」

「やっぱりゴライアス先輩!!」


 こちらへと走ってくるのは我らが 《ダンジョン攻略特別チーム》のリーダー、ゴライアス・リゴーラ先輩だった。しかも後ろには他のチームメンバーたちもいた。


「みんな、一体どうしてここに!?」


 予想外の勢揃いに驚いた私は、馴染みのチームメンバーたちに思わず声を掛ける。


「どうしてって、魔物が出たと聞いたら黙っていられないからな!」

「鍛えている力はこういう時にこそ、使うべきだろ?」

「そうそう、まず俺たちが非常事態にジッとしていられるわけないしな!!」


 さ、流石は 《ダンジョン攻略特別チーム》のみんなだわ、志が高い。


「それでドラゴンの形跡がある方にやってきたら、クリミアお前が居たというわけだ」

「そうだったんですね、ゴライアス先輩」


 やっぱりゴライアス先輩は偉大だわ、ドラゴンの形跡も追えるのだもの。きっと他の魔物の形跡を追うことや、探し物も得意なのでしょうね…………探し物か。


「よかったらゴライアス先輩とチームのみんなも、これから私が行く予定の地下の探索に同行して貰えませんか? 誘拐監禁されているご令嬢を探したいのですが、そこには危険な人物もいるんで、是非ぜひお力を貸してほしいんです」

「なんだと……よし分かった。俺たちで良ければ幾らでも協力しよう」


 即断即決、さすがゴライアス先輩、圧倒的にカッコいい漢だわ。


「ありがとうございます!! それでその地下への入口なのですが……」

「あちらだな? 細かな風の流れと気配で大体分かる」


 そ、そんなことまで分かるなんて、凄すぎるわゴライアス先輩。これはもしかすると期待以上の逸材かも知れないわね。


「どれ、先に入口付近だけ偵察をして、多少の当たりをつけといてやる。行くぞみんなー!!」

「「「おー!!」」」


 そう言って走り出す、ゴライアス先輩とチームメンバーたち。当然、いつもの習慣で私もついていこうと踏み出したが、後ろから腕を引いてそれを止められてしまう。


「あれ?」


 首を傾げながら、腕を引かれたほうを振り向く。するとそこには、恐ろしい真っ黒な笑顔を浮かべる銀髪のイケメンがいた。


「ねぇミルフィさん、僕のことまた忘れてたでしょ」

「……」


 怒っている、さっきはまだ抑えていたけど、今度は露骨にメチャクチャ怒っている。

 だって口調自体は静かだけど、ヒシヒシと怒気が漏れてきているんだもん……今まで見たこともない一番ヤバい感じのキレ方をしている気がする。

 ……これは絶対に謝らないと死ぬ。


「ご、ごめん……つい」

「うん、最初は王太子で、次は先輩ね……僕の存在ってそんなにどうでもいい?」

「いやいや、そんなことは全然ないですけど!?」

「じゃあ、つい忘れるほど存在感がないってこと?」

「それも違いますって!!」


 私は全力で否定する。二度もうっかりしちゃった私が言うことでもないけど、彼自体は存在感の塊みたいなもので、存在感がないなんてことはありえない。これは断言できる。

 だって顔面と纏ってるオーラがキラキラしてるもん。


「それならなんで、君は僕のことを二度も忘れてたの? おかしいよね?」

「それは……私の頭が悪いから、かな」


 とても屈辱的ではあるけども、どうにか絞り出せた言い訳がそれくらいだった。強いて理由を作るのであれば私の頭が悪いから、その場の空気に流されてうっかり忘れる。たぶん筋は通っているはず。


「……」


 なんだろうジミーが物凄い、憐みの目を向けてくる。いや、私も別にそんなこと言いたくなかったわよ!? でもアンタが面倒くさかったんだから、しょうがないでしょう!!


「そ……それじゃあ、私も地下へ行くから、ジミーとはここで解散ってことで」

「ダメだよ、行かせない」

「へ?」

「だって、そこって危ない場所なんでしょ? なら好きな女の子を行かせるわけにはいかない」


 ふぁ!! す、す、好き!? こんなサラッとそんな……いや、そこに引っかかっている場合じゃない。私はさっきエキセルソとも約束をしたわけだし、絶対に地下へ行かないといけないんだから。


「心配してくれるのは嬉しいけれど、私はそれでも行くわ」

「どうして?」

「そうしないと人が死ぬかもしれないから」

「それは別に君が行かなくても、死なないかも知れないし。逆に行っても死ぬ可能性はあるだろう。ならば君が無理に危険を犯す必要性はないよね」

「それは、そうね……」


 私が無理に危険を犯す必要性はない……ジミーが言ってくることはもっともだ。確かに私が行ったところで出来ることはないかもしれないし、あったとしても大したことは出来ないかもしれない……。


「でもね、私は行くって約束しているの。それと何よりも、自分に何かできることがある状況なのに、何もしないでいることがどうしても嫌なの……!」


 これはもしかしたら私の我が儘かもしれないが、私は何もしないことを選ぶのが嫌いだった。だからなのか何かしたいという気持ちが常にある。

 これは前世の自分が、ずっと病院から出られず、したいと思ったこともほとんど出来ないまま死んだからこそ強く思うのかもしれない。

 今の私は、色々な選択肢があってどこにでもいける、やろうと思えば大抵のことができる。

 なのに諦めるなんて絶対に嫌……!!


「もし私が行動することで、少しでも事態が好転する可能性があるのであれば、危険が伴うとしても私はそれを選びたい。それが私の気持ちなの」

「ミルフィさん……」


 私の胸の内を明かすと、彼はなんとも言えない表情で、じっとこちらを見つめてくる。そうしてしばらくそうした後に、彼は大きな溜息をつきながらこう言った。


「分かったよ、そこまで言うのであれば行くといい」

「ジミー!! 分かってくれてよか……」

「その代わりに僕も一緒に行くよ」

「え?」


 え、え一緒に……行く? きっとここで彼とは別れると思っていた私は、思わず困惑する。だってさっき彼が私に言ったように、彼には危険を犯す理由なんてないはずなのに。


「そんなに意外かい? 君が何かをしたいと思う気持ちと同じように、僕は君をどうしても守りたいんだ」


 そのあまりに真剣な眼差しと言葉に、私は思わず顔が熱くなるのを感じた。

 上手く反応できない私をよそに、彼は更に跪いて私の手を取った。


「だから君の側にいることと、君の身を守ることをどうか許してほしい」


 彼の美しい容姿と相まって、それはまるで物語の騎士が乙女に誓いを立てるシーンや、王子様が告白をするシーンのようで、私は顔だけでなく全身の体温が上がっていくような錯覚を覚えた。

 ひぇ……なにこれ、凄くいい画になるぅ。なんかキラキラした銀髪に、金色の眼の、顔の綺麗なイケメンが、私へこんな風に……うぅ。もう無理っ!!


「わ、わ、分かったわよぅ」


 あまりの恥ずかしさと眩しさで、彼を直視できなくなった私は、取られた手をひっこめながら、逃げるように後ろを向いた。

 ごめん、でもこれは心臓によくない。せっかく生まれ変わったのに、この負荷でまた心臓が止まっちゃう……。

 もしかしたら、私にとっての一番危険な存在ってコイツなんじゃないの?


「分かってくれて嬉しいよ~」


 後ろからそんな声が聞こえてくるが、今の私にはそれに答えている余裕なんてなかった。


 一旦深呼吸して精神を建て直す、とにかく気を確かに持たなくてはダメよ……。


 うん、突然降ってわいた銀髪のイケメンにも、最凶ラスボスのカネフォーラにも負けず、私は私のやるべきことをやるわ!!


 でも……色々と様子が気になった私は、恐る恐る後ろを伺う。するとそこには相変わらずキラキラした銀髪金眼のイケメンが立っていて、私は見ているのに気づくと軽く手を振ってきた。私はそれと長時間、目を合わせるのは危険だと判断して、サッと前を向く。


 ああっ変なことされたから、普通にしててもやたらと意識しちゃうじゃないの……!! どうしてくれるのよ!? もう……。


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