28話 焦がし醤油香る学園祭【sideミルフィ】
「いらっしゃいませー!! 美味しい海鮮焼き要りませんか!!」
「せんかー」
「新鮮で美味しいですよー!!」
「ですよー」
「……ちょっとジミー、私の語尾だけ復唱するの止めてくれる!? 何か言うんだったら、自分で考えてよ!!」
「えー」
「えーじゃない!! オマケにちょっとやる気なさそうじゃないの!?」
「いやいやー、そんなことないって~」
私の名前はミルフィ・クリミア。《ダンジョン攻略専攻チーム》に所属していて、現在は見ての通り学園祭の屋台で、海中ダンジョン産モンスターの特製海鮮焼きの宣伝をしている。
今日のために用意した【祭】の字が書かれた法被と、ねじり鉢巻きをユニフォームとして身に着け、気合いは満タン!! だったが、やる気なさげなジミーのせいで水を差されてしまった。
「クリミア新しいのが焼けたぞ~」
「キャ~、ゴライアス先輩ありがとうございます!! 売れ行きも好調なので、その調子でドンドン焼いちゃって下さい」
「まかせろ!!」
今、屋台の調理スペースで調理を担当してくれているのは、我らが偉大なるゴライアス・リゴーラ先輩である。彼は《ダンジョン攻略専攻チーム》のリーダーであり、今回の学園祭出店を認めてくれた上、全面協力すると宣言してくれて、今は調理まで手伝ってくれている。とても素晴らしい人だ。
今回用意したメニューは、海鮮焼きの他に焼きおにぎりもある。
ちなみに焼きおにぎりの方は、私が新しく考案したレシピと調理方法を使っているのだけど、ゴライアス先輩はなんとそれを短期間で完璧にマスターしてしまった。腕っぷしも強いし、もしかしたら彼はあらゆる面で超人なのかもしれないわね……。
「ミルフィさんが、また先輩とイチャついてるぅ」
「別にそんなんじゃないってば」
そんな風に文句を言ってくる隣の彼は、ジミーこと、同学年同クラスかつ《ダンジョン攻略専攻チーム》の仲間であるチャーリー・クレイ。彼は何故か知らないが、私とライアス先輩が仲良くしていると、面倒くさくなる男だった。
以前はこれが原因で微妙にトラブルにもなったので、こういう時は無視するに限る。
「それにしても海鮮焼きだけではなく、焼きおにぎりの方も評判が良さそうで嬉しいわね」
「あー、そうそうミルフィさんが考案した謎料理、確かに美味しいし手軽に食べやすいのもウケてるみたいだねぇ」
「ふっふっふ、そうでしょうそうでしょう」
焼きおにぎりを考案することになったのは、偶然が積み重なった結果だった。
海鮮焼きを売ること自体はすぐに決定したのだが。それだけではやや味気ないので、何か追加で加えられる商品はないかと考えた。
すると丁度、食品探し中にお米を見つけ、更には醤油やみりんなどの和食を作るのに必須の調味料まで入手出来てしまったのだ。
海鮮焼きに醤油ダレ味を追加するにしても、それだけでは勿体ない。お米もあるし折角ならば、香ばしい醤油味の焼きおにぎりなんて食べられたら最高じゃないの? などと思いつき……ただ作るにはレシピを知らなかったので、試行錯誤の末、商品としてお出しできそうな焼きおにぎりが完成するに至った。
「本当に、頑張って作った甲斐があったわね」
思い出すと感慨深いものがあって、少し涙ぐんでしまう。ツラくはなかったけど、うろ覚えの記憶から焼きおにぎりを作るのは、ちょっと大変だったからなぁ。味付けもそうなんだけど、良い感じの形で焼けるような加減で作るのが難しいのよ……。
「いや、確かにミルフィさんの頑張りは認めるけどさ。なんで君は、あんな異国の調味料のことを知っていたんだい?」
「……それは昔、本で読んだからよ」
「この国では主食ではないどころか、ほぼ流通がない米をみて『わぁ懐かしい』って言ったのは?」
「……昔、たまたま食べたことがあったからよ」
「あと君がここのユニフォームとして用意した、法被と鉢巻っていうシロモノもなんなのかな。同じ国のものとは聞いたけど」
「それは……たまたま見つけて、今回の出店と合いそうだから手配してみただけよ」
「ふーん」
実は前世の知識があるからです!! などと馬鹿正直に言えるはずないので、私は適当にごまかしながら視線を逸らす。
だって、こういう時のジミーってガン見してきて怖いんだもの。ほら、今だって目は合ってないはずなのに、ガンガンと視線が突き刺さっている気配がするんですけども!?
「クリミアとクレイ!!」
そんな時、ゴライアス先輩の声が都合よく聞こえたので私は「はい!!」と返事をして、そちらへと駆け寄った。
「二人とも文化祭は初めてだろう。そろそろ一旦抜けて見て回ってきたらどうだ?」
「そんな……私が発案者なのに抜けてもいいんですか、ゴライアス先輩!?」
「ああ、俺たちだけでもどうにか回りそうだし、可愛い後輩にも学園祭を楽しんで欲しいからな」
「あ、ありがとうございます!!」
ゴライアス先輩の気遣いに感動しつつ、私はペコリとそちらに頭を下げる。
「だってさジミー、どうする一緒に学園祭回っちゃう?」
「……そうだね、そうしようか」
よし、なんやかんやで話題を逸らすのにも成功!!
「それじゃあ、一緒に楽しもうか」
わぁ、ジミーったらすっごくいい笑顔。
うんうん、よかったよかった。ジミーもそんなに学園祭が楽しみだったのね。
「うん、そうと決まったらすぐに行きましょう!!」
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海鮮焼き屋台のユニフォームこと法被とねじり鉢巻きを脱いで、ジミーと合流した私はなんとなく歩きながら会話をする。
「さーて、ジミーどこから回る?」
「あ、よく分からないけどパソッカってものを売ってる屋台があるよ」
「え、何それ初めて聞いた気になる……」
「ねー」
「ブラジリアンスイーツ、パソッカは如何でしょうか~」
ぶ、ブラジリアンスイーツ!?
ブラジリアンってあのブラジリアン!!? ブラジルのことよね!!
パソッカは聞いたことないけど、ブラジルは分かるわよ、え、一体何なのかしら、ますます気になるわね……。
「ねぇジミー、あのパソッカってやつを……」
「ミルフィ・クリミア!!」
突然、後方から私の名前を呼ぶ声がした。
反射的に声に振り向くと、そこにはまったく知らない男がいた。学園の生徒らしきそいつは、物凄い剣幕でこちらへ迫ってきていた。
「一体、ラテーナを何処へやった!?」
「え?」
私が呆気に取られていると、そいつは更に距離を詰めてくる。
え、いや、突然なんなのよっ!!?




