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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

トンネル

作者: あとぅーし

古いトンネルを先輩と一緒に歩いていると、

先輩が突然に聞いてきた。


「おまえは霊感あるの?」


ここのトンネルは今は使われいないトンネルで、

整備課の職員が定期的に点検している事になっているが、

実質はこの先輩がほとんど一人で担当をしている。


「実は、ちょっとあります」


「ふーん、じゃあこのトンネルの噂は知ってるの?」


「はい」


さっきからすごい寒気がしているし、気分が悪い。

ここのトンネルは、職場の中で数ある幽霊話の中でも特に有名なトンネルなのだ。


このトンネルでは、

髪の長い女の幽霊が現れる話と、

にやにやした中年男の幽霊が現れる二つのバージョンがあって、

女の幽霊を見た時は身内になにがしの不幸が訪れ、

男の幽霊を見た時は、見た者自身に何がしの不幸が訪れるという話だ。

なぜ、二人の幽霊が存在するようになったか、そのいきさつは聞いた事ないが、

いっぺんに女と男の幽霊を二人を見てしまうと、

見た人間は、なんかしらの事故で死ぬと言われている。


「じゃあ、もしかしてトンネルに入ってからすでに何か感じてる?」


先輩はにやっと笑って聞いてきた。

僕はなんて答えればいいかわからず下を向いた。


「俺は霊感がまったくないし、そもそも幽霊を信じていないからな。

みんな来たがらないから俺が担当して楽な仕事させてもらっているわけだ」


「でもこの前、男女の同時の幽霊見たって職員が

車に轢かれて死んだって話聞きましたよ」


「あいつが死んだって聞いた時はびっくりしたね、

本当にそいつに霊が見えたのなら霊の呪いかもしれないし、

本当はただの偶然かもしれない。

その日も本当は俺一人で行きたかったんだが、

一人じゃ無理な作業あったからな。」


そう言って先輩は鼻歌を歌うように南無阿弥陀仏を唱えた。

たぶんこの人に悪気はないのだろうが、

何故かこの先輩の姿を見ているとムカムカしてくる。


「みんな理由はいろいろあるだろうけど、

俺の事嫌いに思っているのは知っているよ、

だからせめてこのトンネルを担当する事でみんなに貢献したいとも思っているんだ。

その分楽させてもらってるが、

適当にやっているわけじゃなし、

だからまた今日みたいに俺以外に人手が必要な時がきてしまう、

今日はおまえを巻き込んで悪かったな」


そう言って先輩は僕の顔を見た。


「大丈夫大丈夫、

俺はこうして事故に遭った事ないし、

両方の幽霊を見ない限り死なないんだろう?

俺がこのトンネルの担当になってから死んだのはあいつだけだから。」


先輩は後ろを振り帰り、地面に落ちていたスコップをゆび指した。


「今さっきスコップ落ちてるところ通り過ぎただろ、

あそこ通り過ぎたからたぶん大丈夫だよ、

霊感あるって奴は大抵あそこ通りすぎる前に

ぶるぶる震え出して逃げ出すからね」


スコップから先輩に視線をもどすと、

ニヤついた先輩の顔があった。


「うっそー、怒った?」


なんでこの人は人の神経を逆撫でするのだろうか。

幽霊のせいかはわからないが人が死んでいるというのに。

早く作業を終わらせて帰りたい。


「先輩、さっさと作業やって帰りましょう。

僕は何を手伝えばいいんですか?」


「おまえ何勘違いしているんだ、

手伝うんじゃなくてこれはおまえの仕事でもあるんだよ、

手伝うんじゃなくて、俺と一緒の仕事なの」


確かにその通りではあるが、

すっかり仕事をしに来ていた事を忘れていた。


「すみません」


一応謝る。


「下準備はあらかじめ俺がやってあるから、

そんなに時間はかからないよ、

もうちょっと先に行ったら必要な物は全部そろっているから。

ところでおまえ、幽霊はまだ見えてないの?

たぶん幽霊がいるならそろそろ出て来ると思うけど」


幽霊がそろそろ出てくるってどういう意味かと思って

先輩に聞こうと思った瞬間、

みぞおちに、にぶい衝撃を受けて地面に倒れこんだ。

先輩の顔を見ようとした瞬間に思いっきりみぞおちに膝を入れられていたのだ。

胃酸がせり上がって来て、

意味がわからない状態で先輩の顔を見上げたら、

金属製の鈍器で殴られた。

たぶん六角レンチであろうか、自分の頬骨が砕ける音がトンネル内に反響した。


「ここのトンネルは誰も来ないからいいね、

おまえの骨の音も俺の独り占め!」


先輩はご機嫌そうな大声を出し、奇声を上げている。


「さて、これから何が起こるかわかる?

俺は今からお前を殺す。

だっておまえは悪人だからね、

レイプ犯のお前を火炙りにするよ」


先輩はご機嫌そうに、背中を向けて、

トンネルの壁のところに置いてある一斗缶のふたを開け、

中身の液体を浴びせかけてきた。


傷に液体が染みた痛みと恐怖に

のどの置くから悲鳴が込み上げてきたが、

頬骨が砕けているせいか、がぼがぼと音がしただけであった。


声が出せない、

先輩に声が届かない、

いやこの先輩はすでに声を聞いていないかのように鼻歌を歌っている。


「大丈夫だよ、

俺はサイコ野郎じゃないからいたずらにお前を苦しめたりはしないよ、

おまえを燃やして終わり。

これで俺は悪い夢を見ないで済む、

おまえがレイプした相手自殺したの知ってるだろ、

あいつ俺の妹なんだ、おまえは俺が兄貴だって気がついていたんだろ。

だからお前も死んで俺の妹に償え、

そして俺はおまえを殺した事を償うために俺も死ぬから。

もちろんお前の死に様を見てからな。」


そういって先輩はポケットからジッポを取り出しながら

なおも話しかけてきた。


「ところで幽霊ってまだ見えてないの?

俺霊感ないからわからないけど、

やっぱみんなの妄想なんじゃないの、

これからおまえ死ぬのに見えてないんじゃな」


そう言って先輩はジッポに火を付けた。

先輩に向けて、やめてくれと声にならない声を出そうとするのだが、

がぼがぼっとした声しか出ない。


「じゃあな」


先輩の手元から、

火の付いたジッポが離れ、

一瞬で体に火がつくのを感じた。


自分の体から燃え上がる炎に目を細め、

それでも助けを請うために先輩を見上げると、

そこには見知らぬ半透明の男女が立っていて、

じっとこっちを見ていた。

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