兄と皇子
「クレア。王族に雪玉をぶつけようとするな、馬鹿か!」
その声の主人、ノエルによって雪玉を投げようとするのを止められた。
「ノエル」
ノエルの声で右手を下ろし、そのままノエルの手に触れ雪玉を溶かした。すると、その後ろからリーフがやってきた。
「遅いからノエルと迎えに来たよ、クレア、スピカ。それと、城の皆があなたがたを探しておられる、城に戻られることをオススメします。」
リーフはルーズベルトとフィンセントの目を見ながら言った。ノエルがそのままスピカの前に行き
「心配させんな、ばーか」
ノエルはそのままスピカのおでこにデコピンをした。
「痛!もう、ごめんて。それにしても強すぎ!おでこ痛い!」
スピカが頬をプクッとしながら、軽い力でぽこぽことノエルの肩を叩く。でも、ノエルは嫌がることはなく逆に嬉しそうに笑っている。
「皇子、手綱を渡して頂けますか?」
ルーズベルトはそのまま手綱をノエルに渡したが、その顔はどこか睨んでいるようにも見られる。一方、リーフはクレアの髪にそっと触れ、頭を撫でている。
「落ち着いたか?また、今度はココとピウイと走りに行こうか。タルトを作ったから早く帰ろう。」
ココというのがリーフの愛馬、ピウイというのがクレアの愛馬だ。
「うん!」
クレアは外だということ、主従関係のことも忘れ、甘々に元気よく返事をした。そのまま、リーフの一方後ろに立ちそのままノエルとアイコンタクトをとって歩き出した。
「待て、其方達名乗れ!」
急にフィンセントが今日1番の声を出し、クレア達は足を止めてた。
「名乗るほどの者ではありませんので。それでは失礼します。」
リーフがそう言い放つとそのまま前に歩き出した。そのときに見たフィンセントの顔はまるで獣のようだった。