幼き日の記憶
たくさんの人に囲まれて送り出されたクレア。今は馬車で揺られて窓の外を眺めている。改めてエルセノアを見ると綺麗な国だ。右の窓から見える大きな風車。その周りを囲む鮮やかな薔薇の花畑。左の窓からは膨大な苺の畑がある。エルセノアはあまり大きな気温変動がない。多少前後はするが基本過ごしやすい。ただ他の国と違うのは結界を支えている大きな壁があるということぐらいだ。大きな壁にはエルセノアの特産品でもある薔薇の花の装飾が施されている。
「エルセノアはいい所だな」
「はい。私の大好きな国ですし、私の自慢です」
クレアは満遍な笑みを浮かべた。フィンセントも自然と笑みが出る。
「あれから王位継承権の話しはどうなっているんだ?アルベルト殿ではないのだろう?」
「一体保留という形になりました。まだ私たちの存在は隠しているので」
「そうか、でもこれで少しは国は安全だな」
フィンセントの言葉にクレアも思わず笑う。
「、、、1つずっと気になってたんだ。どうやって自分たちが兄弟だと気付いたんだ?」
フィンセントは少々渋りながらも1番の疑問を聞く。
「私たちが6歳の時に気付きました」
「随分早いんだな」
クレアは微笑みながら、自分たちが兄弟だと知ったことを話し出す
そう、今から12年前。サファイア公爵と2人でエメラルド邸に遊びに来ていた時の話しだ。エメラルド邸に行くとエメラルド公爵とリーフが出迎えてくれた。
「いらっしゃい。マリン、クレアちゃん」
マリンとはサファイア公爵の愛称だ。本名はマリンフォード・サファイア。サファイア家当主にして、王国きっての騎士。エルセノアの若手騎士の指導者でもある。サファイア公爵も水の魔法を持っている。スカイブルーの髪に凛としたスレートグレーの瞳。騎士としての威厳をよく感じる。
「やぁ、クーリオ。俺が最後か?」
クーリオ・エメラルド公爵。エメラルド家当主にして国一の王宮薬剤師。薬や植物の知識でエメラルド公爵に敵う者はいない。そして、エメラルド公爵も植物の魔法を持つ。エメラルドグリーンの髪に優しいトランスペアレントイエローの瞳。沢山の患者を相手していて日頃からその優しいが滲み出ている。
「そうだよ、さぁ入って」
「クレア、行こ!」
まだ幼いリーフは幼いクレアを引っ張って中に入っていく。エメラルド邸には植物が多い。色んなところに色んな植物がある。中に進み、大きな扉を開けるとそこにはトパーズ公爵とルビー公爵、スピカとノエルが先に来ていた。
「遅いぞ、マリン」
「俺たちが早かっただけだよ。まだ、時間の10分前だし」
「デリック、アドも相変わらずだな」
デリック・トパーズ公爵。トパーズ家当主。クリームイエローの髪に全てを包み込むヘリオトロープの瞳は幻想的だ。
アドリアン・ルビー公爵。愛称はアド。ルビー家当主にして王国きっての騎士。サファイア公爵とルビー公爵はお互いが相方同士でお互いをとてもよく信頼している。お互いがプラスとマイナスを上手く補っている。今でいうクレアとノエルのような関係に近いであろう。ファイアレッドの髪にキリッとしたのスモーキーピンクの瞳は何もかも見透かされているようだ。
「クレア〜。あっちで遊びましょ!」
「スピカ、危ないよ」
クレアの名前を呼びながらトパーズ公爵の膝の上から飛び降りて抱きしめたのが幼いスピカだ。膝の上から飛び降りた事を注意したのが幼いノエルだ。ノエルはルビー公爵は隣からゆっくり降りた。
「リーフ、父上は大事な話しがあるからお部屋で遊んでおいで」
「はい、父上」
エメラルド公爵の言葉に元気よく返事をしてクレアたちを引っ張って部屋に出た。
クレアたちは部屋でお菓子を食べたり、本を読んだりした。今は一緒懸命自分の父親の似顔絵を描いていた。
「クレアは、どんなお父様のを描いているの?」
スピカは描き終わったのか何を描いているのかクレアに聞いている。
「戦っているお父様!戦っている時が1番かっこいいの!」
クレアは普段の騎士としてのサファイア公爵を書いていた。
「スピカは?」
「私は踊っているお父様!私もいつかお父様と一緒に踊りたいなぁ」
鮮やかな衣装に神楽鈴を持っているトパーズ公爵をスピカは描いていた。
「ノエルも終わったでしょう?」
「うん、僕も剣で戦ってる父上。僕も父上に負けないくらい強い騎士になる」
クレアと同様剣を持ち戦っているルビー公爵を描いていた。少し違うのは服の色が赤色ということだ。
「僕も出来たよ。お薬を作っている父上。僕も父上みたいに沢山助ける」
白衣のような物を着てその手には試験管ような何か液体の入った細長いガラスの入れ物を持ったエメラルド公爵を描いていた。それぞれが思い至る父親を描いては自慢をし合っていた。その姿はなんとも微笑ましい。
「これ、お父様たちの見せに行こ!」
クレアの提案により、それぞれ描いた絵を見せに行くことになった。きっと喜んでくれると思いクレア達は喜ぶ公爵達を思い浮かべてルンルンだった。リーフの後ろにクレア達が付いていくとさっき来た時にいた部屋に来た。扉が少し開いていて中が少し見える。クレア達がその隙間から覗きそれぞれの父親を確認してクスクスと笑っている。さぁ、行こうとした瞬間
「、、、いつになったら本当の事を話そうか」
口を開いたのはエメラルド公爵だった。その言葉にクレア達の足が止まる。
「俺たちが本当の親だと思っているよな」
「無理ないさ、他の兄弟たちと一緒に育てたんだ」
トパーズ公爵とルビー公爵の言葉でもクレア達にとっては何を言っているのか理解出来なかった。他の兄弟というのは、クレアには2歳下の弟のアクア。スピカには2人の姉が、ノエルには姉と兄が1人ずついるのだ。ちなみにリーフは1人っ子。
「、、、、、、、、、あの子達は兄弟でしかも王族だって知ったらなんて思うか」
クレア達は驚きつい隠れてしまった。




