兄たちの心配事
アンソニーやサファイアの家の使用人が馬車に荷物をどんどん積んでいた。そう、今日はクレアがフィンセントの母国のコーラルシアに遊びに行くのだ。クレアが行くのでもちろんアンソニーも付いていく。ただ遊びに行くだけなのに色々と無駄な荷物が多いのではないかとクレアは薄々感じていた。
「、、、本当にこの格好おかしくない?」
クレアはつばが長く造花のガーデニアの装飾が付いた帽子を持ってスピカに聞く。
「もう、可愛いから自信持ちなよ。似合ってるよ」
スピカは見送りのためにサファイア邸に来ていたのだ。クレアはコーラルシアに行くにあたりまずよそ行き用の服を持っていないのだ。だから、スピカに頼みスピカの着れなくなった服を貰ったのだ。クレアは4兄弟の中で1番背が低い。身長差もかなりあるので、スピカの昔の服がピッタリなのだ。今クレアが着ているのは花の刺繍の入った清楚感が出るふんわりとした白のワンピースだ。久しぶりにちゃんとした綺麗なワンピースを着るのでクレアは本当に似合っているか心配していたが、スピカの言葉で安心する。
「はい、クレア。非常用の薬箱」
「これ、ボストンバックだよ?」
スピカ同様クレアを見送りに来たのだろう、リーフとノエルがやって来た。
「そうだよ?ある程度のポーションはあるけどコーラルシアは今は少し暑いし、それに何が起こるか分からないからね。色々な薬草と作り方のメモを入れたから」
リーフからボストンバックを受け取るとあまりの重さによろめいてしまった。一体、ボストンバックを渡し蓋を開けるとたくさんのポーションと薬草が飛び出してきた。その下の方には紙らしきものがありおそらく薬の作り方のメモだろう。メモにはたくさんの文字が書いてあり、心配してくれたんだと思うと嬉しくなった。
「やっぱり多すぎたんじゃない?」
「そうかな、これでも厳選した方なんだけど」
ノエルの言葉にリーフは顔を顰める。
「そうだ、はい。あげる」
クレアはノエルからある巾着の袋を受け取った。その巾着の中にはカラフルな丸い球がたくさん入っていた。
「なにこれ、飴?ありがとう」
「違う、爆弾ボール」
ノエルがニコニコしながら言うが、クレアたちは驚き空いた口が塞がらない。
「危ないよ!なんで遊びに行くのに危険物を持って行くのよ!」
「そこまで危険じゃねぇよ、火の加減は抑えてあるし。それに飴玉サイズにしたからもしも刺客に襲われた時でも対応できる。投げて、指パッチンをすれば魔力を通して爆発する仕組みになってるから」
クレアは前世の時から機械系、物作り系が得意なノエルの技術また磨きがかかったことに驚いていた。ちなみにノエルの場合は逆に設計や絵画系が苦手のためそこはクレアにいつも発明する時は頼っているのだ。ノエルはクレアの頭を撫でながら答えた。ノエルの表情はとても悲しそうだった。2人は前世の時から幼馴染としてずっと側に居た。そして今では唯一の妹。その妹が怪我をしてほしくないと言っているようだ。前世ではノエルは姉と兄が居て下兄弟居なくてクレアが妹と分かった時1番喜んでいた。サファイア公爵の特訓で怪我をした時もそうだったが、何か合っても1番に助けてくれたのだ。いつも意地悪だけどなんやかんやで1番クレアを気遣っているのはノエルだ。
「余ったならコーラルシアの王様たちに花火にでもして見せてやればいいさ」
「、、、ありがとう」
クレアはそのまま爆弾ボールを落とさないようにしっかり持ってノエルに抱き着いた。
「お、珍しい」
そんな事を言っているが、ノエルの顔は凄く嬉しそうにクレアを抱き締めて頭をまた撫でた。
「あ!ノエル、狡い!私も」
「俺も〜!」
クレアに続いてスピカとリーフがノエルに抱き着いてきた。
「一気に来るな!倒れるから!」
「きゃ〜、あはは!」
はたみるとやっぱりただの馴れ合いに見えるだろう。しかし、彼らは正真正銘の兄弟。みんなお互いが大好きなことには変わりないのだ。
「クレア」
大好きな人から名を呼ばれクレアは振り返る。




