星に願う
クレアがフィンセントにエスコートされながら、部屋を出るとリーフたちは一気に気を抜いた。
「、、、焦った。普通階段から突き落とすか?日本だったら、刑務所行き確定だぞ」
「まじで、有り得ない。今すぐ、電気ショック浴びて地獄見せてやる」
普段、なかなか怒らないスピカだが今回の件ではもうブチキレだった。
「、、、オネエサマ、オクチガトテモワルイデスヨ、、、」
さすがのノエルもビビりつい敬語になってしまった。実はあの4人の中で怒ると1番怖いのはスピカだ。癇癪を起こすと雷を落とすから余計に怖い。
「はぁ?あれで冷静になれって言う方が無理だわ。てか、私たち元は平民だし。いつまでもニコニコとしてらんないわ」
そして、見て分かるようにスピカはキレるとややめんどくさい。口調がクレアと同様に悪くなる。
「今は一応貴族の分類だよ?」
リーフも雷が落ちていないか恐る恐る窓を確認しながら足で床をトントンと鳴らしながらスピカに尋ねる。
「、、、それとこれとでは話しは別よ。逆に聞くわ、2人はあれを見てなんも思わなかったわけ?」
スピカは前で腕を組み、首を傾けて下から睨んでくる。
「まさか、城ではなかったら彼の四肢はくっついてなかったと思うよ?」
「赤い雨が降っていたかもな、もしあれでクレアが死んでいたら」
リーフとノエルの目にはハイライトが入って居なくずっと側で見ていたルーズベルトはもう鳥肌が止まらなかった。
「私より先に行き過ぎなのよ、、、、、、」
スピカとルーズベルトが目が合いお互い目をパチクリさせている。
「、、、え、待って。まさか、見られて、、、」
ここでやっとスピカはルーズベルトが同じ空間にいる事を思い出した。
「だから、口が悪いっていったじゃんか」
「一応、足を鳴らして知らせたつもりだったんだけどなぁ」
リーフとノエルはやれやれという顔をしていたが反対にスピカは顔を真っ赤にしてノエルの後ろに隠れた。俗に言う「素」がバレたというやつだ。
「、、、もうやだ。兄様、記憶を無くす薬とかない?」
スピカはノエルの背中に顔を埋めている。
「残念ながらないね」
「そっか、ならノエル今すぐ私を殴って記憶無くさせて」
スピカはもう恥ずかしくなり過ぎてずっとノエルのジャケットを握っている。
「やるわけないだろ、馬鹿。姉ちゃん殴ったらトパーズ公爵に殺させれる」
「それにそんなに気にしなくて大丈夫そうだよ」
スピカはリーフの言葉が気になり、ノエルの背中から顔を離してリーフの顔を見ようとするとめっちゃ近くにルーズベルトが居て思わず後退りをしようと思った。後退りが出来なかったのはルーズベルトがスピカの腕を掴んだからである。空気を読み、ノエルは舌打ちをしてリーフと部屋を出た。
「、、、あの、ルーズ様」
「あれがスピカの素なんですか?」
スピカの言葉をルーズベルトが遮る。
「はい、申し訳ございません。幻滅しましたよね」
「、、、そうですね、正直に驚きました。かなり、異なっていたので」
スピカはルーズベルトの顔を見る事が出来なかった。その目には涙が出ている。
「でも、そのおかげもっと手放したくない気持ちが大きくなりました」
「え?」
スピカは驚いて顔をあげるととても愛しいそうな目でルーズベルトはスピカを見つめていた。
「正直、もっと早くに知りたかったです。そうしたら、彼らのように愛されていたのかもしれない」
スピカの涙を拭いながら肩に手を置く。
「、、、どういうことですか?」
「ずっと羨ましかったんです。スピカにこんなにも愛されている彼らが。僕もスピカに愛されたいし、愛したい。そんな自然と相手のために自分も犠牲する。そんな関係になりたかったんです」
スピカは固まって動く事が出来なかった。でも、ルーズベルトの真剣な瞳からは目が逸せなかった。
「好きです、スピカ。彼らに負けず。貴女のためならこの命を捨てても構いません」
「、、、どうして」
スピカは顔を下げる。
「どうして、そこまでするんですか?私なんかのために命をかけるんですか!?力の差なんて一目瞭然です。私は、自分の身は自分で守れます!私なんかのために命なんて捨てないで」
トパーズ家の関係上「命」に関してはとても敏感なスピカ。
「ルーズ様にもずっと笑顔で居てもらいたい。私はルーズ様の人生の汚点になりたくない。ルーズ様には私なんかよりもいい人が」
スピカが顔をあげた瞬間ルーズベルトはスピカにキスをした。
「、、、どうして」
「、、、うるさい。これ以上僕の愛おしい人の悪口なんか聞きたくない」
ルーズベルトはスピカの言葉を奪うように何回もキスをする。
「、、、僕には姉がいます。なので、女性には表と裏があるなんて知っています」
スピカの息が乱れる中淡々とルーズベルトは話していく。
「僕はイーデントの第一王子として生まれて僕の変わりに死んでいく人を沢山見ました。ですから、僕は1人で生きようと愛に溺れないようにしようと決めていました」
スピカは息を整えてルーズベルトの顔を見つめる。
「、、、初めて守りたい、愛されたいと思ったんです。ずっと、その綺麗な瞳に僕を映して欲しいと。逆に聞きます、あの姿を見てスピカは僕を怖いと思いましたか?」
あの姿というのはおそらく兵士からスピカを守った時のことだろう。普段、敬語で穏やかな雰囲気なのにあの時だけは人を殺しそうな雰囲気を漂っていた。兵士でさえも怖がっていた。
「僕はこの顔が嫌いなんです。みんなは綺麗なんて言うけど綺麗なんかじゃない、醜いんです。怖んです、綺麗すぎて逆に怖いのに醜いのに。少し目を細めただけで怖がりみんな離れて行くんです。僕は自分を愛せない、この顔のせいで」
苦しそうな表情で自分を語るルーズベルト。スピカはルーズベルトの頬に優しく手を添える。
「、、、私はルーズ様のお顔が好きです」
スピカはそっとルーズベルトの顔にキスをする。
「潤いの肌も輝く瞳も高い鼻もほのかに色付いた頬も血色の良い唇も全て好きです。いいえ、ルーズ様の全てが愛おしいです」
スピカは順番におでこ、瞼、鼻、頬、そして最後に優しく唇にキスをする。その間ルーズベルトは固まり顔が赤くなってしまった。
「たとえ、ルーズ様が自分のお顔を嫌いでも私は好きです。私はルーズ様の倍好きになります。私の「素」を全てを愛してくれるんですもん。なら、私も貴方の全てを愛します」
ルーズベルトはスピカの言葉に涙を浮かべ抱き締める。
「僕も愛します。貴女だけを愛しています。」
スピカはそっとルーズベルトの心臓の音を聞く。ドクン、ドクンと一定のリズムで鳴っている。
『綺麗な音、、、。ちゃんと生きてる。微笑みを忘れないで、どんな時も。例え、私が動けなくなったとしても』
スピカの誓いに夜空の星が1つ瞬いた。




