答え合わせ
フィンセントにエスコートされながら、城の中を歩きバルコニーに着いた。空には綺麗な満月が出ていた。
「まさか、君たちが兄弟で王族とは、全く気付かなかった」
「私たちは髪の色も瞳の色も違いますし、表向きでは主従関係がありますからね」
フィンセントはバルコニーの柵に手を付けて寄りかかった。
「あの、皇子様。この度は助けていただきありがとうございました。皇子様が助けてくださらなければ、私は今頃ここにおりません」
クレアは頭を下げて、改めてお礼を言う。
「だから、もういいって。でも、あいつの婚約者だとは大変だったな」
「はい、色々巻き込んでしまいましたね。ルーズベルト様にも申し訳ないです」
「あいつは大丈夫だろ、好きな女を守れたんだから」
フィンセントが自慢げに言うとクレアは驚いた表情をする。
「気付いていらしたのですか?お二人のこと」
「分かるさ、あいつと何年一緒にいると思ってるんだ?」
クレアはきっとフィンセントとルーズベルトが幼馴染なのではないかと気付いた。
「私だって、お兄様たちやお姉様とはずっと一緒におりましたのでそこはルーズベルト様には負けませんよ?」
「これは手強い相手だな」
フィンセントとクレアはお互い目が合い微笑んだ。
「なぁ、今の君は誰の婚約者ではないのだろう?いつも側にいる、赤髪と緑髪のやつとも婚約してないだろう?」
フィンセントの顔が真剣になり、クレアの手を握る。アルベルトのプロポーズを拒否し続けたため正式な夫婦となった訳でもない。まぁ、あんな事があったのだ婚約解消も今度こそスッキリいくだろう。
「はい、おそらく。リーフ兄もノエル兄も血の繋がった本当の兄弟なので婚約していません」
「そうか、良かった。では、グレイシア・サファイアいや、グレイシア・エルセノア王女。俺と婚約してください」
フィンセントが膝を付いてプロポーズをする。しかし、クレアの表情は曇っている。
「私は皇子様に不釣り合いです。だから、皇子様と婚約はできません」
「、、、言い方を変えよう。グレイシア嬢、俺は貴方のことが好きです。俺では貴方の隣に立つことはできないのですか?俺のことお嫌いですか?」
クレアの目からボロボロと涙が出る。
「いいえ、好きです。でも、私の方が貴方様に相応しくないです。髪も長くありませんし、優しくもお淑やかでもないし、それに私はドレスを着ません」
この間会った時のことをクレアは思い出してしまったのだ。
「あの時のことを気にしてるなぁ。あれはグレイシア嬢のことですよ?」
「え?何1つ合っていませんよ、視力はお確かですか?」
お互い、目を点にして見つめている。
「急に悪口」
フィンセントはクスッと笑った。
「じゃあ、順番に答え合わせ。俺の長いの基準は短髪で『短い』ボフから『長い』だ。だから、ボフの髪型も長いに入る」
クレアの髪型はハーフアップができるためボフより少し長いためフィンセントからするとクレアの髪の長さは長いに入る。
「グレイシア嬢、貴方は優しいしお淑やかだ」
「優しいとお淑やかの意味をご存知ですか?」
フィンセントはクレアの言葉に笑いが止まらない。
「優しいが人を思いやったり、配慮ができる人でお淑やかが性格や言動に品があるような人のことですよ?」
「君は空気を読むことができる人だ。例え、騎士だとしても主人のことや街の人々のことを1番に優先している。それにこの前会った時は普通の令嬢のように見えた。あれが素の君なんだろう?」
確かにあの時は騎士としての振る舞いではなくサファイア家の公爵令嬢としての振る舞いだった。いわゆる、フィンセントの言う『素』だ。サファイア家の家の者とリーフたちや一部の国のしか知らない本当のクレア。
「魔法も剣術も見ていた。とても美しかった。射る度、舞う度に雪や雫が踊り、髪がたなびき、手の繊細な動き。そしての優しい微笑み。あれを見てお淑やかではないと?」
クレアは知らなかった。フィンセントがクレアの魔法も剣術も見ていてくれたこと。それに細かくそんなことまで見ていたとも分からなかった。昔から何故か目がよく気配もすぐに察することはできるがあの時はたくさんの人が見るのが普通だったため視線や気配を察する必要かないと思っていて気にしていなかったのだ。クレアの口はぽかーんと開いている。
「最後はあれかドレス。確かに騎士としてが多いからかドレスは着ないようだな。でも、俺は『ドレスを着る』ではなく『ドレスが似合う』と言ったはずだ」
クレアは一体何が違うのか分からなかった。
「ドレスなんて着るか着ないかなんてそこはどうでもいい。だが、問題はそのドレスが着る者に合っているかどうか。いくら美しいドレスを着たって似合ってなければ意味がない。」
フィンセントはクレアのドレスを改めて見る。満月の光に照らされたクレアのドレス。深い青から水色のグラデーションはまるで、本当にドレスが光っているように見える。
「きっとドレスを着た姿は美しいだろうと思っていた。グレイシア嬢、君のドレス姿は初めて見たが綺麗だ。この城の誰よりも美しかった。君があいつの婚約者ではなければ、今すぐにも国に連れて帰りと思った」
クレアは顔を赤くする。恋愛の耐性無いクレアにとって好きな人からの『綺麗』と言う言葉に恥ずかしくなってしまった。ただでさえ、ドレスを着る機会がないため綺麗や可愛いを聞き慣れていないため余計に恥ずかしくなった。
「これはパーティーのためであって、普段は着ることなんて」
「たまに着るのがいいんじゃないか。変に着飾るその辺の令嬢より断然いい。もしかして、その薔薇は本当にあいつで用意したのか?」
フィンセントは少し頬を膨らませた。アルベルトに拗ねているようだ。
「違います!これはスピカ姉様の色です!それに胸元の薔薇は貴方様の色で」
「俺の色?もしかして、意識してくれたの?」
クレアはフィンセントに誤解をして欲しくなくてついに本音が出てしまった。フィンセントは自分のことを意識してくれたことに嬉しくなり頬が赤くなり、緩む。フィンセントはクレアの手を引いて正面から抱きしめる。急なことで驚きを隠せないクレア。でも、好きなフィンセントの匂いがして落ち着いてしまう。
「嬉しい、こんなに幸せなことはないかも」
クレアがフィンセントの顔を見ようと顔をあげようとすると、クレアはフィンセントは頭を押さえつけられていてあげることが出来なかった。
「ごめん、今は顔見ないで。多分、ヤバいから」
クレアはどうしてもフィンセントの顔が見たくて、勢いよく顔をあげる。すると、フィンセントの顔は真っ赤になっていた。
「、、、可愛い」
クレアはボソッとフィンセントの初めて見る照れた表情につい言ってしまった。
「おまえの方が可愛いに決まってるだろ」
フィンセントはクレアの耳で囁く。そして、クレアの頬にチュッとキスをする。クレアはキスされたことに驚いて、キスされた所に手を触れて再び顔を赤くする。
「ほら、可愛い」
フィンセントは離れないようにクレアの腰をしっかり掴み、もう片方の手でクレアの髪に触れキスをする。
「まだ、グレイシア嬢には王族とバレてはいけない理由があるのだろう?それでも、構わない。俺は生涯かけて君と生きたいと思った」
フィンセントはゆっくりとクレアの髪を耳にかける。
「俺も待つよ、いつまでも。その変わり俺の婚約者として側に居たい」
クレアは顔を下げる。
「、、、いつまでかかるか分かりませんよ?」
「焦らされるのも悪くない」
「、、、私よりも魅力的な令嬢に出会うかもしれませんよ?」
「俺は君以上に魅力的な令嬢はいない」
「、、、私の愛が重くても?」
「喜んで受け取るよ、逆に嬉しいくらいだ。俺の愛も重いからな」
フィンセントの服がクレアの涙でポタポタと濡れる。フィンセントは優しく微笑み、クレアを離し手を取りながら再び膝を付ける。
「改めて、グレイシア・エルセノア王女。俺と結婚をしてください、俺とコーラルシアに来てください」
「、、、、、、、、、はい、喜んで。どこまでも貴方に着いて行きます」
クレアは満遍な笑みをした。フィンセントの目からもうっすら涙が出る。
「結婚の挨拶をする時は、産みの親である国王夫妻と育ての親であるサファイア公爵にちゃんとに挨拶するから。絶対に幸せにする」
クレアとフィンセントはお互い見つめ合って顔を近付きて優しいキスをする。近くの花に赤い蝶が止まっていた。




